お客さんとつくってきたフジの魅力

そんな風に、フェスを楽しんできたお客さんの意見や、ぼくらの気持ちが蓄積して、すごいスピードで進化していったのがフジロックです。人の導線だったり、トイレの数だったり、毎年いろいろなことを変えていっています。昔、オレンジコートだった場所は、バーベキュースペースやフードコートに変わっていて。飲食の内容も変わりました。

例えば、ミシュランで一つ星をもらった、京都の割烹料理屋がハモ茶漬けを出していたり。シャッシャッシャッと骨切りされたハモは、気温に応じて、冷たいお茶漬けでも食べることができて、骨からとった出汁もおいしい。野外フェスだからって、カレーライスやハンバーグばかり並んでいるわけじゃないんです(笑)

ここ数年は、みんなでつくってきたフジロックの良いところを残すことにも取り組んでいます。お作法というキャンペーンを行なっていて、これまでのお客さんが自主的に取り組んでいた、チェアの置きっ放しによる場所取りをしないことや傘を使わないこと、ゴミの分別といった、最低限のルールを海外から来たお客さんや新しくフジロックに来てくれた人たちに伝えているんです。

開催地とともに成長した20年

フジロックで3、4日、一緒に雨風をしのいだお客さんの中には、ここで出会って結婚した人もいます。だからきっとフジロックの期間以外も集まっているんじゃないかな。お客さんの中には、フジロックの期間外にボランティアとして集まってくれる人たちもいて。苗場の雪解けに合わせて、4〜6月くらいに、車椅子でも自然散策できるように木道「ボードウォーク」の修復をしてくれています。

ボードウォークは、フジロック以外のときも原生林を歩くという観光資源になっているんですよ。ハーレーのイベントが開催されたり。まちのためにも、良い感じで変わっていっているのなら嬉しいです。地元の協力を得るために、苗場の人たちとどうやって接していくのか。そこはフジロックを続ける中で気に留めてきました。

20年前は子どもだった苗場の人たちが、大人になって、青年会のえらい人やペンションのオーナーになっていたりもします。昔は開催を反対していた人が、一番の応援者に変わってくれていたりもして。スマッシュは、静岡県富士宮市で朝霧JAMという野外ライブも開催しているんですが、苗場の人たちと朝霧の人たちの交流も盛んです。地元の人たち同士の交流のひとつに、朝霧の人たちが苗場に出店していたりもするんですよ。

スタッフもアーティストもともに楽しむ

ぼく自身は、出演者の移動行程を担当しているので、フジロック開催中は楽屋にいることが多いんです。場内に繰り出すのは、最終日のヘッドライナーが終わってから。最終日の夜は、そこら中でスタッフが飲んでいます。スタッフが楽しむ状況を見ているのは、好きです。働いているスタッフが楽しいフェスなんだから、お客さんにも楽しそうだって感じてもらえたらいいな。

出演者も楽屋を出て、場内へ楽しみに行きますし。後輩バンドに先輩バンドを紹介してあげて、一緒に出ていくと、楽屋に戻って来る頃には、すっかり仲良くなっています。中には、フジロックで仲良くなったあとに、そのバンド同士がコラボレーションするようなこともあるんですよ。

そんな風に、お客さん同士や開催地の人たち同士、出演者同士がつながっているフジロックは、これからもなくならないようにしていきたい。ずっと残っていたほうが、多分、面白いんじゃないかな。なくさないためにも、ぼくらはしっかり運営し続けて、「いつでも、おいでよ」って言える状況を大事にしていきます。

野外フェスの楽しみ方

野外フェスの楽しみ方

講師:倉橋慶治(コンサートプロモーター)

6月講座の講師は、フジロックの運営を担当しているスマッシュの倉橋慶治さんです。フードやファッションなど、音楽だけではない野外フェスの楽しみ方をお話いただきます。

日時
2019年6月19日(水)19:30~21:30
会場
カフェパーク(恵比寿)
参加費
無料
定員
60名
※応募者多数の場合は抽選となります。
受付期間
2019年5月16日(木)〜6月9日(日)

倉橋慶治(コンサートプロモーター)

FUJI ROCK FESTIVALの主催をはじめ海外バンドの招聘を行うSMASH CORPORATIONにて制作業務を担当。RED HOT CHILI PEPPERS, OASIS, BRAHMAN, SiMなどの国内外を問わずさまざまなアーティストのブッキングから帯同まで全てのコンサートにまつわる業務を行う。年間ライブ本数は150本を超える。