やっぱり雑誌が好き
講師:高山かおり(「Magazine isn't dead.」主宰・ライター)
12月講座の講師は、国内外の雑誌を販売するオンラインマガジンストア「Magazine isn't dead.」を主宰している高山かおりさんです。高山さんが厳選する、つくり手のこだわりが伝わる雑誌の紹介をはじめ、なぜその雑誌を選び、どこに注目しているのか、高山さんの溢れる雑誌への愛情をたっぷりとお話していただきます。
少ない冊数でも、仕入れを見送ってきたような海外雑誌を扱いたくて。国内雑誌の場合も、広く流通していないものかどうかを基準にして選んでいるんです。多くの人に知られていなくても「面白いよ」と推薦できる雑誌を扱いたい気持ちを大事にして。
代表例は、『Posterzine』。ポスターにもなってしまうというコンセプトが際立った雑誌です。コンセプトが際立っているかどうかは取り扱う際の基準のひとつ。『Posterzine』だけでなく、『double dot』という雑誌なら姉妹都市というテーマを掲げて、雑誌を半分できっかり分けて徹底的に都市の文化を比較するつくりになっています。パッと見ただけでは気づきにくいけど、際立ったコンセプトを伝えることができたら、感心してもらえると思うんです。
伝えた後に、その雑誌を見る目が変わる体験をしてくれたら嬉しいな。つくり手の想いがあふれている雑誌って、本当に魅力的です。海外雑誌でも、基本的にはつくり手と直接やりとりをするようにして、直接仕入れると、雑誌のことをわかる具合も断然違ってきます。
ずっと印象深く残っていることは、Magazine isn’t dead.ではじめて仕入れた雑誌のうち『BACKSTAGE TALKS』が届いたとき。荷物を開くと手紙が入っていて。5冊単位の小さい仕入れでも、こんな風にしてくれて、国を超えた感情が伝わってくる。メールの文面でも、対面でも、感情が伝わってくる体験は同じようにあります。
だから、ひとつの雑誌を仕入れるにしても、つくっている人たちのことを調べて、気になったものをピックアップして、連絡して伝わってくる感情を待って、それで仕入れることを決めるんです。そんな雑誌だから、紹介文にもこだわっています。実際に会話をしたことがない人へ、どうやったら魅力的な雑誌を届けることができるのか。
私は雑誌の内容だけじゃなく、雑誌への私の想いも書いちゃいます。例えば、『UNION』という雑誌の紹介文では、雑誌の創刊日と私の誕生日が同じだったことを書いてしまったり。一見、どうでも良いことかもしれないけど、読んだ人が、「そういう雑誌の見方もあるんだ」って思ってもらえたら嬉しくて。
雑誌が年々売れなくなってきているのは、そもそも雑誌を求めていない人が大半だからだと思うんですね。だからこそ、魅力を伝えていきたい気持ちは高まるんです。それに、私にとって雑誌はなくてはならないものだから。雑誌に育てられてきたんですよ。
雑誌は文字通り“雑”だから、いろんな情報が混ざっています。単純に興味がわかない雑誌を開いたとしても、いろんな情報が詰まっているから気にかけていなかったことに興味を持つ可能性がある。私自身がこれから興味を持つかもしれない何かにたどり着けるのは魅力のひとつだと思うんです。そんな雑誌だから、誰かに届ける時は手紙を一筆書くようにして。
その手紙に買ってくれた方が喜んでくれると嬉しい。「差し支えなければ、感想を教えてください」って書いておくと、感想をいただけることもあって。魅力的な雑誌に出会ったら、その雑誌のことを誰かと話したい人はいるんだなって感じます。いつか、雑誌を通じて人がつながる場所を構えることができたらな。
12月講座の講師は、国内外の雑誌を販売するオンラインマガジンストア「Magazine isn't dead.」を主宰している高山かおりさんです。高山さんが厳選する、つくり手のこだわりが伝わる雑誌の紹介をはじめ、なぜその雑誌を選び、どこに注目しているのか、高山さんの溢れる雑誌への愛情をたっぷりとお話していただきます。
独断と偏見で選ぶ国内外のマニアックな雑誌に特化したオンラインストア、Magazine isn’t dead.主宰。販売だけでなく卸やセールスも手がける。本業はライター、編集者。生まれも育ちも北海道。セレクトショップ「aquagirl」にて5年間販売員として勤務後、都内書店へ転職し6年間雑誌担当を務め独立。4歳からの雑誌好きで、あらゆる紙ものをディグるのがライフワーク。主な連載に、ginzamag.com「Magazine isn’t dead.」、WWD JAPAN .com「雑誌と本を行ったり来たり」、リトルプレス『北海道と京都と その界隈』内のエッセイ「偏愛北海道」などがある。
【ウェブサイト】http://magazineisntdead.com/