2020年の処方箋
講師:山崎まどか、山口博之、垣畑真由
2020年新年特別講座のテーマは「2020年の処方箋」と題し、2020年、様々なことが目まぐるしく変化する日常を、楽しみながらも心の平穏も保てるようなCLASS ROOM的ウェルビーイングについて考える講座内容を予定しています。映画/本/音楽それぞれの専門家から、自分らしく日々の暮らしを整える作品との向きあい方などを語っていただきます。
2020年1月の新年特別講座では「2020年の処方箋」と題し、様々なことが目まぐるしく変化する日常を、映画・本・音楽を切り口として心の平穏を保ちながら楽しむCLASS ROOM的ウェルビーイングに気持ちを向けてみます。そこで、ゲスト講師のひとりとしてご参加いただく文筆家 山崎まどかさんに、ご自身が仕事でたずさわる映画と日常の関わりについて教えてもらいました。
私にとって2020年は年齢も1つ上の世代になる節目の年なんです。だから、年齢を気にせずになるべく好きなことをしたいと思っています。毎年、何かに追われるようなところがあるから、いろいろ味わう時間が持てたらいいのかな。いろんなことを噛み締めたり、勉強する時間を増やしたいです。
今はものすごくコンテンツが溢れている時代で、配信を含め、四方八方から新作が届くけれど、全部観ていこうとしたら飲み込まれてしまう。すると、自分自身が見えなくなるというか。残りの人生は何に時間を使おうと、よく考えるんです。それは私が作品を広める側にいるからというわけじゃなくて、ファンの人ほど大変そう。
たとえば映画だとしても、映画館以外に映画祭があったり、配信コンテンツもあったりします。みんな消化できているのかな? いっぱい観ていることが快感に変わって、次から次へと観ていくようになっちゃうと、とてもしんどいというか。情報の多さが影響して、自分をぼんやりさせちゃうところってあると思うんです。
たとえば音楽でも、サブスクやアプリでたくさん聴くことはできるけど、新しい作品を探しにくいと感じている人はたくさんいるんじゃないかな。何度、同じ曲を聴いていても、その先に行けないというか。アルバムで聴く体験をしてきた私は、好きな曲が流れるまでに3、4曲よく知らない曲を我慢して聴いた経験があるんですね。
そのおかげで、聴いているうちに好きになった曲も多いんですよ。だからか、作品との出会い方について、よく考えるんです。なるべく、不自由な出会い方をしたいというか。経験値として、私の中に残るような出会い方をしたいと思っています。
経験や体験は誰ともシェアできない、1番大事なもの。作品を広める仕事をしていても、体験を促したり、体験して何か感じてもらえるように書いたりすることを意識しています。私自身も体験を増やしたいと思って、いろんな国へ行くようにもしているんです。
旅行をすると、それだけで気持ちが高まります。知らないまちで、バスや地下鉄を使うことや、歩くことが好きなんです。スマホで移動距離を確認すると、10〜15kmも平気で歩いていることがあるくらい。歩くと、まちが自分のものになっていくような感覚があります。テリトリーが広がっていくような気持ちというか、情報が多くてぼんやりしていた自分を味わうことができる時間になるというか。
普段は試写で映画を観ることが多いんですけど、自分のペースを整えることができる、映画館や名画座に行って観ることも大事にしています。一期一会みたいに、映画館で観ることはすごく気持ちいい。たとえば、自分のことでいっぱいいっぱいになっていたり、ペースダウンしたい時にオススメです。
映画って完全に他人と付き合うものなので、全く違う人の体験を2時間観ることが、自分を締め出すことにつながる気がします。日常と切り離せるというか、旅行と同じ感覚があると思うんです。スマホを見ないと不安になるかもしれないんですけど、2時間でもスマホから離れて過ごす時間を持つことは重要なんじゃないかなぁ。まずは1時間くらいの短編作品から観て、練習するのもいいかもしれません。
2020年新年特別講座のテーマは「2020年の処方箋」と題し、2020年、様々なことが目まぐるしく変化する日常を、楽しみながらも心の平穏も保てるようなCLASS ROOM的ウェルビーイングについて考える講座内容を予定しています。映画/本/音楽それぞれの専門家から、自分らしく日々の暮らしを整える作品との向きあい方などを語っていただきます。
15歳の時に帰国子女としての経験を綴った『ビバ! 私はメキシコの転校生』で文筆家としてデビュー。女子文化全般/アメリカのユース・カルチャーをテーマに様々な分野についてのコラムを執筆。著書に2019年10月に刊行された『映画の感傷 山崎まどか映画エッセイ集』(DU BOOKS)『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)『女子とニューヨーク』(メディア総合研究所)『イノセント・ガールズ』(アスペクト)共著に『ヤングアダルトU.S.A.』(DUブックス)翻訳書にレナ・ダナム『ありがちな女じゃない』(河出書房新社)等。
good and son代表。1981年仙台市生まれ。立教大学文学部英米文学科卒業後、2004年から旅の本屋「BOOK246」に勤務。06年から16年まで、幅允孝が代表を務める選書集団BACHに所属。17年にgood and sonを設立し、ショップやカフェ、ギャラリーなど様々な場のブックディレクションをはじめ、広告やブランドのクリエイティブディレクションなどを手がけ、その他にもさまざまな編集、執筆、企画などを行なっている。
https://www.goodandson.com/
1995年生まれ。中学生の頃にアナログレコードと出会い、高校2年生から大学卒業までをレコード・ショップ、ディスクユニオンに勤務。音楽に出会ったきっかけでもある60s-70sROCKを始め、SOUL / FUNK / RARE GROOVE中心に収集している。現在はDJ・ミュージックセレクター、雑誌Silverの編集メンバーとして活動している。また趣味で製作しているZINE、「RAPTURE magazine」は不定期で発行され、今年5月にリリースした最新号ではBEAMS T・Sho Miyataらとのコラボレーションが実現した。