朝起きたら、考えを紙に書き出してみる
最近おすすめなのが、朝起きて、パソコンやスマホを開く前に、そのとき思っていることを5分くらいで紙に書き出すことです。リモートワークの日なんかは特に、それをやるだけで心が落ち着くし、自分の考えをいったん落ち着いてまとめられる。私もいま、子どもたちが起きる前の朝4時くらいにやっています。
いまは多くの人が、1日の大半が他人と接続していて、他人のために頭を使っている状況にあると思うんです。SNSでなにかを発信するときも読む人のことを考えるし、子育てもそう。それが、みんなのモヤモヤの根底にあるんではないでしょうか。
自分のためになにかを書くことは、そんな“他人モード”の頭を“自分モード”に切り替えるいちばん簡単な方法です。たとえばグランピングに行ったり、ひとり旅をするのもいいけれど、日常的に行くのは難しいですよね。ちょっと感覚的な話になってしまうんですが、書くことで日常的に自分モードの時間をつくれば、世の中に流されてなんとなく1日が終わってしまうのではなく、自分が主体的に動いているっていう実感が取り戻せる。モヤモヤした気持ちも晴れていくはずです。
手紙の楽しさを伝えていきたい
手書きの機会が少なくなってきた時代で残っていく“書くことの価値”のひとつは、誰かの気持ちに響くこと。それを生かせるのが、広い意味での「手紙」だと考えています。
手紙は郵送しなきゃいけないし面倒だっていうイメージがあるんですが、かならずしもそうではないと思うんですよね。ノートの紙切れに書いて渡すのも、夜遅く帰ってきた旦那さんが付箋にメッセージを書いて冷蔵庫に貼り、翌朝それを奥さんが読むのも手紙。商品を配送するときに一筆書いて付けるのでも、なにもないよりずっと気持ちが届きますよね。
カキモリのオフィスには小さいポストを置いていて、誰かの誕生日が近くなるとカードにメッセージを書いてそこに入れるんです。それで、当日にまとめてプレゼントする。そうするとね、みんなすごく喜ぶんですよ。対面では表現しきれなかったことを手紙にしたためることで、あの人はこんなこと考えてたんだっていうのがわかって、コミュニケーションが一歩深くなる。そんなふうに手紙はカジュアルで楽しいものなんだよっていうことを、商品やワークショップを通して伝えていきたいです。
書く機会が減ると、手書きの価値は上がる
紙に手書きするのって、いいですよね。そのときの空気感や匂いも一緒に閉じ込められている気がして。もらった手紙を10年後に読み返したら、すぐに当時の気持ちに戻れるような感覚は、デジタルではたぶん生まれないと思うんです。タブレットに書いた文字を、10年後に読み返すことはきっとない。書く機会が減ると文房具や手書きの価値も下がると思われがちですが、むしろ上がってくるはずなんです。
書くことは、頭の中で考えていることを整理したり、深めたりするのに欠かせません。そして自分モードという、最高に贅沢な時間をつくるためのいちばん身近な方法です。ちょっと大げさかもしれませんが、“人間性を取り戻す行為”なのかなと、そんなふうに考えています。