2018.09.26
Report 1/3

わたしのアートの楽しみ方

講師:伊勢春日(VOILLDキュレーター)

東急東横線「中目黒」駅 正面改札前の信号を渡り、左に山手通りをまっすぐ12分。目黒川が交わる一角のB1Fに「VOILLD(ボイルド)」はあります。9月のCLASS ROOMでは、VOILLDキュレーターの伊勢春日さんに、「わたしのアートの楽しみ方」と題して、暮らしにアートを取り入れることについて教えていただきました。

展示や作品以外にもアートに触れ合う機会はある

VOILLDは2014年にオープンした中目黒のギャラリーです。若手のアーティストを中心に、VOILLDで企画展を催すことをはじめ、イベントや広告、グッズ展開など、アートにまつわるさまざまな仕事に取り組んでいます。

アーティストさんがつくる作品はひとつしかありません。どんなに有名な作品だとしても、それを持つことができる人は一人しかいません。それはすごくもったいなく感じて、私はより広く、いろんな形で人の手にアートが渡るようにしていけたらいいなと思っています。なので作品を販売することだけじゃなく、広告や商品といった展示以外のものごとにも力を入れています

アートを鑑賞する、作品を購入する。そう耳にすると、どこか敷居が高いような印象を受けてしまいますが、暮らしにアートを取り入れる場合、展示や装飾だけが楽しみ方ではありません。伊勢さんはもっと取り入れやすいアートとの触れ合い方を教えてくれます。

気軽に楽しめる方法といえば、例えば、好きなアーティストさんがつくっているフライヤーを自宅の壁に貼って鑑賞したり、そういったことでもいいんじゃないでしょうか。作品集の中から好きな1ページをコピーして飾ってみてもいいですよ。それも楽しみ方のひとつだと思います

ピントが合った作品から楽しみはじめればOK

2017年4月7日〜19日、東京都渋谷区のTOKYO CULTUART by BEAMSで展示会「VOILLD 伊勢春日コレクション」が開催されました。そこには、伊勢さんのアートコレクションがズラッと展示されていました。

すごく良かったんです。私の場合、作品の価格帯は関係なくて、他人から見ればガラクタのようなものからギャラリーできちんと購入したようなものまでコレクションの中にあって、それを並列に展示したところ、共感してくれる方々が思っていたより多かったんです。やっぱり、値段や価値に関係なく、好きなら好きで楽しんでもらうことが気軽になっていったらいいなと思いました

伊勢さんは、繰り返し、自分の好きに合わせて楽しめばいいことを伝えてくれます。

ピントが合うかどうか。音楽でも、ラジオから流れてきた曲に何だろうって思うことがありますよね。その感じでいいんですよ。Instagramを見ていて、『超格好良い』って感覚からアートを楽しんでいってもいいですし、それがたまたま誰かの作品で、気になって調べてみたらそのアーティストのことを詳しく知ることになったりとか、それで興味を深めていくのでもOKですし

歴史や教養よりもアートを楽しむために必要なもの

アートだからと言って、歴史や教養を備えてから語らないといけないわけではありません。この知識を覚えておかなきゃいけないということにも緊張しすぎなくていいようです。

正解はないと思うようになりました。VOILLDの仕事をしていると、デザインやファッション関係者の方や、美術関係の方まで、いろんな方々とアートの話をしますけど、みなさんご存知のことや好みも本当に人それぞれです

唯一、共通していることは何でしょうか?

それは、アートに興味があるかどうか、ですかね。だから、もしも好きだなと思ったアーティストさんが見つかったら、その人が影響を受けた作品やアーティストさんを少し探ってみて、そっちも好みだわってなったりして。そうやって興味や知識が広がっていったら嬉しいし、そういう発見を積み重ねていけるところは楽しいですよ

もしも海外でアートを楽しむとしたらどこがいい?

講座の後半は、当日、会場に訪れた参加者のみなさんから質問が寄せられました。

Q.伊勢さんがアートを好きになったきっかけは?

たまたま好きだと思ったものがアートだったんです。作品って、アーティストさんが命を削る勢いでつくっているものじゃないですか。そこに込められているものを考えると、すごく感動したというか。衝撃的で、刺激的で、なぜこの作品をつくろうと思ったんだろう? って興味を持つようになったんですね。どれひとつとして同じ作品はないので、各作品に接するたび、そういう楽しさを体験できるのはとても大きいです

Q.もしも海外でアートを楽しむとしたらオススメはありますか?

最近オススメなのは、気軽に行ける香港です。世界の有名なギャラリーがギュッと集まっていて、いろんなものを見ることができます。時期によっては、日本でもなかなか鑑賞できないようなアーティストや作品の展示もあったりして、まめにチェックしています。ごはんも安くて美味しいし、渡航時間や旅費も少なくて済むので、エステなら韓国、アートなら香港みたいな感覚で旅行するのは楽しいと思いますよ

最後に、CLASS ROOM恒例の質問にも答えてもらいました。伊勢さんにとって、「良い暮らし」とは何でしょう?

贅沢だなと思えることを、小さくてもいいので何か取り入れることかな。どういうことでもよくて、例えば、いつもは素うどんだけど今日は梅を入れちゃおうでもいい。ちょっとした豊かな瞬間を増やせるような余裕を持つ暮らしは、良い暮らしだと思います

>>交流会の様子はこちら

伊勢春日(VOILLDキュレーター)

東京都出身。2014年中目黒にVOILLDを設立。展覧会の企画・ディレクションを中心に、TOKYO ART BAZAARなどのアートイベントの開催やラフォーレ原宿の広告制作、アーティストのマネージメントや商品制作、ポップアップ企画のプロデュースなど、多岐にわたるプロジェクトを行う。

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