LMAP
LUMINE meets ART PROJECT

メインビジュアル

2023.09.22LUMINE meets ART

meets ART story #7

  • #INTERVIEW

ある世代には郷愁を、別の世代には新鮮さを呼び覚ます。
江頭誠の、可愛くて少し不気味な毛布アートの世界

昭和の香りが漂うキッチュな花柄毛布を用い、立体作品やインスタレーション作品を制作している江頭誠さん。昨年はグッチのショートフィルム「Kaguya by Gucci」で装飾を担当し、話題を呼んだ。

幼少期からモノづくりが好きで、高校卒業後は多摩美術大学へ。人とは違うことをしたいという思いのもとに試行錯誤するなか、応援してくれている父が自分の作品を見たときに発した「うまいけど、誠らしくない」という言葉が響いた。自分らしさとは何かを追求し、卒業制作では花柄毛布を用いた立体作品《大阪冬の陣》を発表。毛布をミシンで縫って綿を詰めるという行為は初めてで、その実験的なプロセスと完成形に「自分の跡が残った」と感じたそう。

「新しいものを見たいという気持ちが強いんです。制作も8割は想像できるけど、あとの2割はどうなるかわからないくらいのほうが、偶然性が生まれて、いい色やいい線が出てきたりする。毛布を縫って綿を詰めるのも、やってみると思いがけずいびつになったりして、でもそれが自分の形であり、痕跡なんです」

卒業後は一度は就職するが、やがてモノづくりへの意欲が湧くように。2015年、発泡スチロール製の霊柩車を花柄毛布で装飾した立体作品を制作し、「第18回岡本太郎現代芸術賞」特別賞を受賞。翌年には花柄毛布で洋式トイレを模した作品で「SICF17」のグランプリを獲得した。現在は個展や芸術祭への参加のほか、ファッションブランドとのコラボレーションなど幅広く活動する。
「『毛布アートの人』として認知されることに葛藤を感じた時期もあったけれど、今は自分を俯瞰する視点を大切にしながら、そのつど楽しむことを優先しています」

素材として使用する毛布は使い古しをリサイクルショップなどで調達。かつて誰かが使っていた気配を感じられるのがいいという。
「僕はわりとシャイボーイなんですが(笑)、人と関わりたい、共感したいという気持ちはあって。ずっと思い出として残っているのは、小学校のころ、教室で絵を描いているとみんなが周りに群がってくれて、それがシンプルにうれしかったということ。今も“誰かの気配”を集めて作品を制作し、コミュニケーションを取ろうとしているということは、やっぱり人が好きなんでしょうね」

作品イメージ

江頭さんは1986年三重県生まれ。都内のアトリエには毛布がたくさん。

作品イメージ

傘や自転車といった身近なものや、盆栽や招き猫といった日本的なものなどをモチーフにしている。

作品イメージ

今年の1月から2月にかけてニュウマン横浜1階のウインドウに展示した作品《床の間》。洗濯に使用するアイテムで床の間風に構成。

Text: Kaori Shimura Photo: Ittetsu Matsuoka(上、中) Design: Satoko Miyakoshi Edit: Sayuri Kobayashi

※本記事は2023年5月22日に『AERA』に掲載された記事を再編集しております。
※情報は記事公開時点のもので、変更になることがございます。

  • LUMINE meets ART PROJECT

    LUMINE meets ART PROJECT
    アートと人々の未来の地図を描くプロジェクト。
    お客さまの日々の生活を豊かにする「アートのある毎日」を提案。
    ルミネ館内における展示や、暮らしに取り入れやすい作品を揃えたアートフェアの開催など、アートとの自由な出合いの場を創出します。