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LUMINE meets ART PROJECT

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2024.06.05LUMINE meets ART

meets ART story #13

  • #INTERVIEW

自然の流れに従い、自分の感覚を信じる。
「一木造り」で現代の女性像を彫る飯沼英樹が大切にしていること

「消費社会に生きる女性たち」をテーマに、スタイリッシュなファッションに身を包んだ木彫りの女性像を制作する飯沼英樹さん。一本の木材から姿形を掘り出す「一木造り」の技法による作品たちは、どれも力強い表情を浮かべている。彼女たちがその目の奥にどんな感情を秘めているのか、あれこれ想像したくなってしまう。

今年の春には、東京・南青山にリニューアルオープンした「アザワイズギャラリー」のこけら落としとなる個展を開催した。展覧会タイトルの「レクト/ヴェルソ」はフランス語で「裏表」を意味する。今回はランウェイやストリートからそのまま抜け出してきたような「一木造り」の立像に加え、平面を浮き立たせるように彫り込む「厚肉彫り」によるレリーフも新たに発表された。
「これまではファッション誌の写真をモチーフに、そこには写っていない後ろ姿をも想像しながら、作品を彫り起こしていました。ただ最近はレリーフのように、正面の顔や姿だけを見せて、見えない部分は隠れたままにしておくという表現にも興味が出てきたんです。『ある一面だけを強調して見せる』ことが、今の時代を象徴しているようにも感じられて」

使用する木材の種類にはこだわらず、巡り合わせで手に入った木材の形をチェーンソーで整え、ノミで削っていく。ときに頭上にニワトリなどの動物を乗せた作品が見られるのは、最初からそのように意図したわけではなく、節や欠けといった木材がもともともつ個性との兼ね合いや、作品の強度を保つための結果として生まれたものだという。
「予定調和ではなく、自然の流れに従うことを大切にしています。自分の感覚を信じることもそのひとつ。モチーフの実際の色やスケールといった“正解”に見えるものに合わせるよりも、感じたままに手を動かしていくほうが、作品が美しくなっていくんです」

木の恩恵にあずかる立場として、今後は育樹にまつわる慈善活動も行っていくと飯沼さん。
「森を育てるには植樹はもちろん必要ですが、植えたあとの管理や手入れも大事。虫の被害などによる倒木を避けるために伐採した木を作品に使い、その売り上げの一部を寄付する活動を通して、育樹の大切さを広める広告塔になれたらと思っています」

作品イメージ

「アザワイズギャラリー」での個展の様子。

作品イメージ

「AAK」シリーズより。AAKとは「歩く青いキツネ」のこと。犬を散歩させる女性を着想源に、イメージは「女性と動物の関係」や童話「きつねのルナール」などへと広がり、明け方の空の色を思わせる青いキツネが誕生した。

作品イメージ

制作時に使用する道具の一部。

Text: Kaori Shimura Photo: Ikuko Hirose Design: Satoko Miyakoshi Edit: Sayuri Kobayashi Planning: AERA AD section

※本記事は2024年5月27日に『AERA』に掲載された記事を再編集しております。
※情報は記事公開時点のもので、変更になることがございます。

  • LUMINE meets ART PROJECT

    LUMINE meets ART PROJECT
    アートと人々の未来の地図を描くプロジェクト。
    お客さまの日々の生活を豊かにする「アートのある毎日」を提案。
    ルミネ館内における展示や、暮らしに取り入れやすい作品を揃えたアートフェアの開催など、アートとの自由な出合いの場を創出します。