SUSTAINABLE
廃棄衣料から人気収納バッグへ。「アーバンリサーチ」の心意気
2022.03.22
「アーバンリサーチ」といえば、ファッションやライフスタイルを提案するセレクトショップとしておなじみですが、彼らがすごいのは、単にモノを売るだけではないところ。廃棄衣料から新しいアイテムを生産し、また、一般就労が難しい人の雇用創出など、未来につながる取り組みをいくつも行っています。
廃棄衣料をアップサイクルして生まれた人気商品
「アーバンリサーチ」といえばアパレルのイメージが強いけれど、2018年の発売以来、人気がどんどん高まっているのが、アップサイクルした素材から収納ケースやiPhoneケースなどのプロダクトを生み出すブランド「コンポスト(commpost)」。これは、傷や汚れなどが原因で売れなくなってしまった自社の衣料品を廃棄せず、付加価値のある素材に加工して新製品を開発していくという試み。
例えば、ベストセラー商品の「マルチパーポスバッグ(MULTIPURPOSE BAG)」は4種類のサイズ、6色のカラーから選べて、「ちょっとした収納にぴったり」「撥水(はっすい)性があってキッチンの小物整理に役立つ」とまとめ買いする人も。使い勝手がよく、しかも地球に優しい、まさに今の時代にふさわしいアイテムだ。
「もともと衣料品は綿と化学繊維の混紡など、異なる素材が混在しがちなので、素材を分別してアップサイクルするのは難しいとされてきました。『コンポスト』は、廃棄繊維を色で分けて付加価値のある素材や製品にアップサイクルするカラーリサイクルシステムの開発・研究を行う『カラーリサイクルネットワーク』との協働により実現したブランドです。生産過程には障がい者をはじめとする一般就労が困難な方々にも携わっていただき、彼らの雇用機会の創出にもつなげています」
例えば、ベストセラー商品の「マルチパーポスバッグ(MULTIPURPOSE BAG)」は4種類のサイズ、6色のカラーから選べて、「ちょっとした収納にぴったり」「撥水(はっすい)性があってキッチンの小物整理に役立つ」とまとめ買いする人も。使い勝手がよく、しかも地球に優しい、まさに今の時代にふさわしいアイテムだ。
「もともと衣料品は綿と化学繊維の混紡など、異なる素材が混在しがちなので、素材を分別してアップサイクルするのは難しいとされてきました。『コンポスト』は、廃棄繊維を色で分けて付加価値のある素材や製品にアップサイクルするカラーリサイクルシステムの開発・研究を行う『カラーリサイクルネットワーク』との協働により実現したブランドです。生産過程には障がい者をはじめとする一般就労が困難な方々にも携わっていただき、彼らの雇用機会の創出にもつなげています」
株式会社アーバンリサーチ執行役員であり、コンポストブランドディレクターの萩原直樹さん。もとは国家公務員で、現在は経営企画部部長と内部監査室室長も兼任
便利なアイテムが社会問題を考えるきっかけに
そう語るのは、「コンポスト」のブランドディレクターであり、経営企画なども務める萩原直樹さん。ブランド誕生までを「試行錯誤の連続でした」と振り返る。
「いくら環境に優しくて、就労困難者の雇用創出につながる試みであっても、製品が売れ続けなければ、プロジェクトを続けていくことはできません。ベーシックで使い勝手がよく、丈夫で、なおかつ『カッコいい。欲しい!』と思っていただけるもの。作り手にとって作業が難しすぎないこと。生産過程における素材のロスを極力抑えること。こうしたすべての条件をクリアするのは、本当に大変なことでした」
その甲斐あって、「コンポスト」はヒット商品に。全国の店舗のなかでも、「アーバンリサーチ ドアーズ 南船場店」は特に「コンポスト」が豊富に揃うショップ。2階のフロアの一角にはガラス張りの作業スペースがあり、「コンポスト」の生産過程を実際に見ることができるほか、サコッシュを簡単に作れるキットを使ったワークショップも随時受け付けている。
「製品を手に取っていただくのはもちろん、作業スペースを覗いたりワークショップを体験したりすることが、廃棄や労働にまつわる問題について考えるきっかけになればと考えています」
「いくら環境に優しくて、就労困難者の雇用創出につながる試みであっても、製品が売れ続けなければ、プロジェクトを続けていくことはできません。ベーシックで使い勝手がよく、丈夫で、なおかつ『カッコいい。欲しい!』と思っていただけるもの。作り手にとって作業が難しすぎないこと。生産過程における素材のロスを極力抑えること。こうしたすべての条件をクリアするのは、本当に大変なことでした」
その甲斐あって、「コンポスト」はヒット商品に。全国の店舗のなかでも、「アーバンリサーチ ドアーズ 南船場店」は特に「コンポスト」が豊富に揃うショップ。2階のフロアの一角にはガラス張りの作業スペースがあり、「コンポスト」の生産過程を実際に見ることができるほか、サコッシュを簡単に作れるキットを使ったワークショップも随時受け付けている。
「製品を手に取っていただくのはもちろん、作業スペースを覗いたりワークショップを体験したりすることが、廃棄や労働にまつわる問題について考えるきっかけになればと考えています」
「アーバンリサーチ ドアーズ 南船場店」2階の作業スペースで「コンポスト」を縫うスタッフには、定年退職後に再雇用で戻ってきたベテランも。ほかにも障がい者など就労困難な方も作り手として参加している
スタッフの夢ややりたいことを会社が支援
地球に優しく、人にも社会にも優しい。「アーバンリサーチ」のそんな姿勢は「コンポスト」の成り立ちからも伝わってくるが、ほかにも、日本各地のクリエイターや企業と一緒になってその土地の魅力を発信していく「ジャパンメイドプロジェクト」や、東北の若手漁師集団「フィッシャーマン・ジャパン」とのコラボ漁師ウェアの開発など、ユニークな取り組みも多数。また、社内向けの福利厚生の一環として、社員の趣味や興味のある分野にまつわる活動を支援する「シェアクラブ」制度も興味深い。
「スタッフが夢ややりたいことを実現できるように、会社が資金や活動場所を提供し、支援していく取り組みを2020年からスタートしました。もともとは社内の同好会が発展したもので、『ママシェアクラブ』『銭湯シェアクラブ』などさまざまなクラブがあります」
ときには、シェアクラブの活動が新商品の開発につながることも。例えば、釣りのシェアクラブ「レイクシーカーズ」とアウトドアアパレルブランド「ワイルドシングス」のコラボウェアもそのひとつ。「もっとおしゃれで機能的なフィッシングウェアがほしい」という彼らの願いが形になったプロジェクトだ。
「スタッフが夢ややりたいことを実現できるように、会社が資金や活動場所を提供し、支援していく取り組みを2020年からスタートしました。もともとは社内の同好会が発展したもので、『ママシェアクラブ』『銭湯シェアクラブ』などさまざまなクラブがあります」
ときには、シェアクラブの活動が新商品の開発につながることも。例えば、釣りのシェアクラブ「レイクシーカーズ」とアウトドアアパレルブランド「ワイルドシングス」のコラボウェアもそのひとつ。「もっとおしゃれで機能的なフィッシングウェアがほしい」という彼らの願いが形になったプロジェクトだ。
スタッフの「好き」が高じて新商品が生まれることも。こちらは社内の釣りのシェアクラブ「レイクシーカーズ」と人気ブランド「ワイルドシングス」のコラボにより生まれたフィッシングウェア
スタッフ自ら課題解決のために手を挙げる社風
こうしたサステナブルな取り組みは以前から行っていた、と萩原さん。
「例えば、2011年の東日本大震災後には、津波による塩害で作物を栽培できなくなった畑で綿花を栽培し、収穫したコットンを商品化する『東北コットンプロジェクト』の発起人企業として、立ち上げから関わってきました。東北の農家の方々と70を超えるアパレル企業とが協力しながら現在も続いているプロジェクトで、当時の商品部責任者からの提案がきっかけでスタートしました」
もともと「アーバンリサーチ」の社内には、スタッフ自ら問題意識を持ち、「課題解決のために、こういうことをやりませんか?」と手を挙げるような空気があったという。「仕事だから仕方なく、言われたとおりにやる、というのは精神的にキツいこともありますよね。でも、本気でやりたいと思って自分で企画したものは、たとえしんどくても誇りがあるぶん頑張れるし、周りも応援してくれる。私が『コンポスト』を立ち上げるまでのハードなプロセスを乗り越えられたのも、弊社の社風があったからだと思います」
そんなスタッフの思いが伝わってか、同社の顧客には環境への意識が高い人が非常に多い。アーバンリサーチは不要になった羽毛製品を回収してアップサイクルする「グリーンダウンプロジェクト」に参加しているが、回収する羽毛製品の量が同ジャンルの参加企業のなかでもトップクラスだという。まさに、たくさんの顧客が環境への取り組みに共感、賛同している証し。アーバンリサーチから広がるサステナブルな発想の輪に、これからも注目したい。
「例えば、2011年の東日本大震災後には、津波による塩害で作物を栽培できなくなった畑で綿花を栽培し、収穫したコットンを商品化する『東北コットンプロジェクト』の発起人企業として、立ち上げから関わってきました。東北の農家の方々と70を超えるアパレル企業とが協力しながら現在も続いているプロジェクトで、当時の商品部責任者からの提案がきっかけでスタートしました」
もともと「アーバンリサーチ」の社内には、スタッフ自ら問題意識を持ち、「課題解決のために、こういうことをやりませんか?」と手を挙げるような空気があったという。「仕事だから仕方なく、言われたとおりにやる、というのは精神的にキツいこともありますよね。でも、本気でやりたいと思って自分で企画したものは、たとえしんどくても誇りがあるぶん頑張れるし、周りも応援してくれる。私が『コンポスト』を立ち上げるまでのハードなプロセスを乗り越えられたのも、弊社の社風があったからだと思います」
そんなスタッフの思いが伝わってか、同社の顧客には環境への意識が高い人が非常に多い。アーバンリサーチは不要になった羽毛製品を回収してアップサイクルする「グリーンダウンプロジェクト」に参加しているが、回収する羽毛製品の量が同ジャンルの参加企業のなかでもトップクラスだという。まさに、たくさんの顧客が環境への取り組みに共感、賛同している証し。アーバンリサーチから広がるサステナブルな発想の輪に、これからも注目したい。
「アーバンリサーチ ドアーズ 南船場店」の入り口付近に並ぶ、「コンポスト」の「マルチパーポスバッグ」。名前のとおり、使い方は人それぞれ。スタッフが自宅での使用例を公開する自社サイトの記事(※)も人気
■アーバンリサーチ SDGs基本方針
https://www.urban-research.co.jp/company/sdgs/
※スタッフが自宅での「マルチパーポスバッグ」の使用例を公開する記事はこちら
※本記事は2022年03月22日に『telling,』に掲載された記事を再編集しております。
※情報は記事公開時点のもので、変更になることがございます。
Text: Kaori Shimura Photograph: Ittetsu Matsuoka Edit: Sayuri Kobayashi
https://www.urban-research.co.jp/company/sdgs/
※スタッフが自宅での「マルチパーポスバッグ」の使用例を公開する記事はこちら
※本記事は2022年03月22日に『telling,』に掲載された記事を再編集しております。
※情報は記事公開時点のもので、変更になることがございます。
Text: Kaori Shimura Photograph: Ittetsu Matsuoka Edit: Sayuri Kobayashi