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敏感肌の人が愛する、自然派コスメブランド「OSAJI」の秘密

2022.11.08

敏感肌の人向けのスキンケア用品やコスメを開発しているブランド「OSAJI」。皮膚科学の視点で皮膚の構造や機能に着目し、健やかで美しい肌を保つためのライフスタイルを提案しています。そんな「OSAJI」の誕生物語とモノづくりへのこだわりについて、生みの親である茂田正和(しげた・まさかず)さんに伺いました。

開発のきっかけは母の皮膚トラブル

敏感肌に寄り添う自然派コスメブランドとして2017年に誕生した「OSAJI(オサジ)」。ブランド名は、江戸時代に大名や将軍に仕えた医師を、匙(さじ)を使って薬を調合する姿になぞらえて「お匙」と呼んだことに由来する。

皮膚の構造や機能はもちろん、どうやって健康や美を保つのかというメカニズムにも向き合い、厳選した国産の植物由来原料を使用。スキンケア、ヘアケア、ネイルカラー、フレグランスなど、いずれもルックスがシンプルで、パウダールームにポンと置いておくだけでさりげなくおしゃれ感が漂うのもうれしい。

「OSAJI」を立ち上げたディレクターの茂田さんは、もともとは美容業界とは無縁の人物。ところがあるとき、オーガニック志向だった母が交通事故による精神的なストレスで皮膚トラブルを起こし、それまで愛用していたコスメが使えなくなってしまうという出来事が。それに疑問を抱いたことをきっかけに肌と化粧品の関係に関心をもち、やがて自宅のキッチンで化粧品を作り始めるようになった。

OSAJIのディレクター、茂田正和さん。敏感肌向けのブランド「ネスノ」などの開発を経て、2017年に「OSAJI」をローンチ。著書に『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)

普遍とは、常に変わり続けること

「ちょうど、それまでいた音楽業界を離れようかと模索しながら、自分を見つめ直していたときだったんです。僕の場合は自分の思いを表現するよりも、『誰かのために何かをつくる』ことが仕事のモチベーションにつながる、ということに気づいた時期で。そのタイミングで母のことがあり、肌トラブルで困っている人たちが安心して使えるものを作れたら、と考えたのが始まりでした」

せっかく作るなら、ユーザーにデメリットのない、誠実なものを目指す。そんな思いのもとに2002年から研究を重ね、行き着いたのが皮膚科学の世界だった。東北大学皮膚科で教授を務めた叔父に師事し、化粧品企画会社を創業。以来、多数のコスメブランドの開発を手がけ、2017年、満を持して「OSAJI」をローンチ。現在も、肌にとって本当に必要なものとは何なのかを探求し続けている。

例えば、最近ではアレルギーリスクに着目。アレルギー性皮膚障害と診断された症例のうち、最も多い原因が「化粧品」であるという事実をもとに、自社化粧品の成分の見直しに着手。そして敏感肌向けのスキンケアシリーズ「センシティブ スキン ライン」を開発しました。

「科学は常にアップデートされていくものなので、ときには、良いとされていた成分がそうでもなかったと判明するなど、過去の論説が大きく塗り替わることも。そんなときは既存の製品をすぐ廃番にして作り変えるなど、必要があれば自分たちの過去すら堂々と否定できるスタンスにこだわっています。ウソはつきたくないですから。『普遍とは、常に変わり続けること』だと思っています」

敏感肌向けの「オサジ センシティブ スキン ライン」は写真の洗顔料、化粧水、クリームに加え、乳液の4アイテム。あらゆる肌状態、肌質に優しく寄り添う

モノがあふれる世の中で、本当に必要なのは?

時代やライフスタイルの変化にあわせて、自分たちのモノづくりを柔軟にブラッシュアップしていく。なおかつ、常にオーセンティック(=本物)であり続ける。言葉にするのは簡単だが、実践するのは決して容易ではない。例えば、気候変動をはじめとする環境問題に、消費財を作り続ける立場として、どう向き合うのか。「常に問題意識をもち、自らに問い続けています」と茂田さん。

「これだけモノがあふれている世の中で、まだモノをつくるのか。環境に配慮するのは当然として、そのうえで“存在することが許されるもの”って、もはや限られると思うんです。今、本当に必要とされるものは何なのか、僕たちも日々考えているし、みんなで一緒に考えていくときなんじゃないでしょうか」

「OSAJI」がユーザーに信頼されるブランドであり続ける。そして、「OSAJI」のモノづくりの姿勢に共感したユーザーの意識が、よりよい未来を生み出す方向へとシフトしていく。そんなユーザーからの声が「OSAJI」に届き、「OSAJI」がまた一歩進化していく。茂田さんが目指すのは、そんなポジティブな循環のスパイラルだ。

「『OSAJI』に出会ったことで何らかの気づきを得て、普段の生活で何を買い、何を買わないのかがおのずと変わっていく。そんなきっかけになれたらうれしいし、僕たちもみなさんとともに成長していきたいと考えています」

アーティストとのコラボレーションで毎年人気の「HOLIDAY MAKEUP COLLECTION」。今年は写真家の日置一輝氏の作品がアイシャドウパレット、ネイルアイテム、カラーマスカラのパッケージに

持続可能なほうが楽しい

ちなみに、茂田さんがインタビュー中に最も多く発した言葉は「持続可能」だった。例えば、細かい手作業が必要なローソープ(半熟石けん)作りを福祉作業所でもある長野県の石けん職人集団「ねば塾」に委託していることについては、「自分たちが福祉的でありたいというよりは、シンプルにウィンウィンの関係だったので。お互いにありがとうと言える関係じゃないと、持続可能とはいえないですよね」など。仕事の内容や働き方からユーザーとの関係性まで、どうやらすべてに対して「持続可能かどうか」を第一に問う習慣がついているようだ。その理由を尋ねてみると、「持続可能なほうが楽しいから」と茂田さん。

「ひと昔前はみんな、自分らしさよりも画一的な価値観を求めていましたよね。とにかく働きまくって稼いで、憧れの誰々みたいなスタイルを目指すのが楽しかった。それはそれで悪くはなかったと思うんですよ、そういう時代だったわけだから。でも、今は地球環境や少子高齢化といった課題が山積みで、楽しさの価値も変わってきている。ファストファッションより、ずっと着続けたいものをちゃんと選ぶほうが楽しい、っていうふうに」

自分にとって本当にふさわしいもの、納得のいくものを選んで、そのよさをじっくりと味わいながら使い続けていく楽しさ。これからの暮らしに必要なエッセンスを、「OSAJI」の世界観は教えてくれる。

OSAJIの製品はオンラインのほか、全国の店舗で購入可能。こちらは2022年春に誕生したルミネ新宿店の様子。モダンなムードが印象的 写真提供=OSAJI

■OSAJI
https://osaji.net/

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※本記事は2022年11月08に『telling,』に掲載された記事を再編集しております。
※情報は記事公開時点のもので、変更になることがございます。

Text: Kaori Shimura Photograph: Ittetsu Matsuoka Edit: Sayuri Kobayashi

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