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使い切れなかったコスメをクレヨンに再生。「COSME no IPPO」

2023.01.10

「COSME no IPPO(コスメノイッポ)」は、役目を終えたカラーコスメを回収し、エシカルなクレヨンへとアップサイクルするプロジェクト。立ち上げたのは、長年、美容業界でPRを務めてきた大澤美保さんです。取り組みを始めたきっかけやこれまでの成果、今後の展望について聞きました。

出産を機に、環境問題に真剣に向き合うように

アイシャドウやリップ、チークなどのカラーコスメ。気に入って買ったのに、使っているうちにトレンドや好みが変わり、最後まで使い切れないまま持て余している……。身に覚えはないだろうか? 「ある!」と頷いたあなたに朗報。実は、そんな使い残しのカラーコスメを回収し、エシカルなクレヨンへと生まれ変わらせてくれるプロジェクトがあるのだ。

このプロジェクト「COSME no IPPO」を立ち上げたのは、長年、美容業界でPRを務めてきた大澤美保さん。環境問題に対して自ら何かアクションを起こしたいと考えたのは、2014年に1人目のお子さんを出産したのがきっかけだった。

「自分の身のまわりだけでなく、地球規模で環境問題を見つめるようになったんです。子どもたちが希望を持てるような未来をつくっていくために、私にできることは?と模索し始めました」

大澤美保さん。美容業界で長年PRを務め、2018年に独立。現在はPRの仕事と並行して「COSME no IPPO」の活動を行っている

コスメの美しい色をそのままクレヨンに

美容業界に携わっている身だからこそ、始められるアクション。頭に浮かんだのは、役目を終えたカラーコスメを別のものに生まれ変わらせる、というアイデアだった。

「私を含めて、コスメを使い切れずに結局捨ててしまうことへの罪悪感を抱いている人は多いのでは?と。それにPRという立場上、編集者やライター、美容家の方々とよくお会いしますが、みなさんお仕事柄、毎シーズン、大量の新商品のサンプルを試すんです。すべてを使い切るのは難しいので、使い切れなかったものを整理する必要が出てきます」

さらに大澤さんは、カラーコスメの色に着目。リップやアイシャドウの美しい色合いをそのまま生かすには、画材にアップサイクルするのがよいのではないかと考えた。しかも、画材のなかでもクレヨンなら、最後まで使い切れて、発生するゴミも紙パッケージのみと環境負荷が少ない。さっそく工場を探し、自らアプローチをかけていくなかで、コスメをクレヨンへと再生させてくれる企業に出会い、協力を仰ぐことに。

役目を終えたカラーコスメから生まれたエシカルなクレヨン「ハロヨン」は、約12cm、5色セットで1,980円。持ちやすい形状で、柔らかな描き心地。公式オンラインショップから購入できる

公式インスタグラムを通じてコスメの回収を行う

そして2021年秋、念願のエシカルなクレヨンが誕生。コスメから生まれ変わって新たな価値を得たクレヨンを歓迎する意味を込めて、「ハロー!」と「クレヨン」をかけ合わせ、「ハロヨン」と名づけた。色味は回収されたコスメの色によってそのつど異なるが、いずれも発色がいいのがポイント。

「ときにはラメ入りのコスメから誕生したキラキラのクレヨンが入っていることも。一期一会の出会いを楽しんでいただけたらうれしいです」

現在はイベントなどのほか、公式インスタグラムでもカラーコスメの回収を行っている。DMで問い合わせると、回収可能なコスメや送付先などの詳細を案内してくれるシステムだ。また、化粧品メーカーと提携し、店頭のテスターや期間限定商品の売れ残りなど、通常は廃棄処分となってしまうカラーコスメも回収している。

公式インスタグラムを通じて届いた、使い残しのコスメ。ケース入りのまま送ることが可能だが、コスメ部分のみを丁寧に粉末状にして送ってくれる人もいる

美容業界のゴミをゼロにするのが目標

「プロジェクトを立ち上げて約1年半。コスメを回収する仕組みが徐々に整いつつあり、協力を申し出てくださる個人の方や企業も増えてきました。インプットが多くなった分、これからはアウトプットをどう増やしていくかが課題。私の目標は『美容業界のゴミをゼロにすること』なので、クレヨンに限らず、さまざまなものへと生まれ変わらせていきたいと考えています」

例えば、結婚式や披露宴などのロスフラワーをアロマワックスの色づけに再利用するなど、既にいくつかのプランが進行しているそう。こうした活動を通して、多くの人に「考えるきっかけ」を提供していきたい、と大澤さん。

「使い残したコスメを実際に提供してくださったみなさんからは、『以前より環境問題を意識するようになった』『いろいろな気づきがあった』というフィードバックを多くいただいています。地球の未来をどうしたら守れるか、みんなで知恵をあわせて考えて、行動する。そんな大人たちの姿を子どもたちに見せていけたらいいなと思っています」

私たちもその一員として、フードロスならぬ“コスメロス”の削減に向けて、一歩踏み出したいものだ。たとえ小さな一歩でも、その積み重ねが、希望あふれる未来へとつながる道となるのだから。

昨秋、ルミネ・ニュウマンの新宿3館で行われた「SMART LIFE 2022 SHINJUKU –わたしに似合う、あたらしいくらし–」にて、「ハロヨン」で塗り絵をする人々 写真提供=ルミネ

■COSME no IPPO
https://cosmenoippo.official.ec/

※本記事は2023年1月10日に『telling,』に掲載された記事を再編集しております。
※情報は記事公開時点のもので、変更になることがございます。

Text: Kaori Shimura Photograph: Manami Takahashi Edit: Sayuri Kobayashi

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