LIFESTYLE
LUMINE AGRI PROJECT
いつもの駅に旬の味がずらり。生産者を身近に感じるマルシェ
2023.08.17
ルミネの農業プロジェクト「LUMINE AGRI PROJECT」では、都会と畑をむすび、食との出会いと学びの機会をつくるさまざまな取組を行っています。そのひとつが、全国の野菜やくだもの、グロッサリーを販売する「LUMINE AGRI MARCHE」。現在、新宿駅と「800°DEGREES NEAPOLITAN PIZZERIA 南青山店」、ニュウマン横浜6Fの「2416MARKET」の3箇所で開催しています。今回は、2023年7月27日(木)〜30日(日)に開催された新宿駅でのマルシェの様子をレポートします。
夏のおいしいものが新宿に集合
JR新宿駅から徒歩0分。多くの人が行き交うミライナタワー改札外の広い通路に、マルシェのブースが連なります。ここでマルシェが開かれるのは毎月第4木曜日から日曜日の4日間。2023年7月は「なつの収穫まつり」をテーマとして、トマトやとうもろこし、きゅうり、なす、梨、桃、さらには食用菊や和製のハッカなどの珍しいものまで、夏を楽しめる食材がずらりと並びました。
店頭に立つのは、生産者や、生産者と直接やり取りをして青果物やグロッサリーを仕入れている、生産者とつながりのある人たちです。仕事帰りの人、観光目的で新宿に来た人、LUMINE AGRI MARCHEの常連さんなど、足を止める人はさまざま。お店の人がお客さまに商品や生産地について話したりと、あちらこちらでコミュニケーションが生まれているのが印象的でした。
この日、野菜のつめ放題が大盛況だった「プラスヤオヤ」は、LUMINE AGRI MARCHEに定期的に出店しているお店のひとつです。店頭に立つ尾辻あやのさんと押田直樹さんに、ふだんの活動やマルシェを通して伝えたいことなどについて聞きました。
店頭に立つのは、生産者や、生産者と直接やり取りをして青果物やグロッサリーを仕入れている、生産者とつながりのある人たちです。仕事帰りの人、観光目的で新宿に来た人、LUMINE AGRI MARCHEの常連さんなど、足を止める人はさまざま。お店の人がお客さまに商品や生産地について話したりと、あちらこちらでコミュニケーションが生まれているのが印象的でした。
この日、野菜のつめ放題が大盛況だった「プラスヤオヤ」は、LUMINE AGRI MARCHEに定期的に出店しているお店のひとつです。店頭に立つ尾辻あやのさんと押田直樹さんに、ふだんの活動やマルシェを通して伝えたいことなどについて聞きました。
2023年7月28日(金)に開かれた、新宿駅でのマルシェの様子。
八百屋が持つ「人と人をつなぐ」機能に惹かれた
尾辻さん曰く、プラスヤオヤは「野菜の素人が集まって始めたプロジェクト」。尾辻さんは以前勤めていた会社の軒先で野菜のマルシェを行ったことがあり、そのときに“八百屋の可能性”を感じたそうです。
「マルシェを開いた途端に人の流れが変わり、いろいろな方が立ち寄って話しかけてくれました。それで、八百屋っておもしろいなと。野菜そのものというより、機能としての八百屋に興味を持ちました。年齢もジェンダーも職業もさまざま、まさに老若男女が集まれる場所なんだなと感じて、PR的な観点から八百屋をやってみたいと思ったのが始まりでした」
それから時を経た2019年、尾辻さんは、地域の人たちが交流できる場所をつくりたいと、東京・世田谷に「イエローページセタガヤ」という店を持つことになりました。なにを売るかは決まっておらず、漠然と以前から気になっていた八百屋がいいかもしれないと考えていたとき、山梨県北杜市にルーツを持つ農業支援の会社「FARMERS AGENCY」と出会います。農業や野菜のことを知った尾辻さんは、FARMERS AGENCYと協力し、イエローページセタガヤで八百屋のポップアップ「プラスヤオヤ」を行うことにしました。
「青果業界は、世代交代や後継者問題など、いろいろな課題を抱えていることを知りました。これから先、業界を盛り上げていくためには、私のように青果に携わったことがない人がもっと参入することが必要なんじゃないかなと感じたんです。みんなが八百屋を始めたらどんなにいいかという想いから、八百屋をいろんなところにプラスしていく、そして八百屋という存在を拡張していくという意味を込めて『プラスヤオヤ』と名付けました」
「マルシェを開いた途端に人の流れが変わり、いろいろな方が立ち寄って話しかけてくれました。それで、八百屋っておもしろいなと。野菜そのものというより、機能としての八百屋に興味を持ちました。年齢もジェンダーも職業もさまざま、まさに老若男女が集まれる場所なんだなと感じて、PR的な観点から八百屋をやってみたいと思ったのが始まりでした」
それから時を経た2019年、尾辻さんは、地域の人たちが交流できる場所をつくりたいと、東京・世田谷に「イエローページセタガヤ」という店を持つことになりました。なにを売るかは決まっておらず、漠然と以前から気になっていた八百屋がいいかもしれないと考えていたとき、山梨県北杜市にルーツを持つ農業支援の会社「FARMERS AGENCY」と出会います。農業や野菜のことを知った尾辻さんは、FARMERS AGENCYと協力し、イエローページセタガヤで八百屋のポップアップ「プラスヤオヤ」を行うことにしました。
「青果業界は、世代交代や後継者問題など、いろいろな課題を抱えていることを知りました。これから先、業界を盛り上げていくためには、私のように青果に携わったことがない人がもっと参入することが必要なんじゃないかなと感じたんです。みんなが八百屋を始めたらどんなにいいかという想いから、八百屋をいろんなところにプラスしていく、そして八百屋という存在を拡張していくという意味を込めて『プラスヤオヤ』と名付けました」
イエローページセタガヤは昼は八百屋、夜は居酒屋として営業。
店頭に立って野菜を売り始めた尾辻さんは、八百屋だからこそ生まれるさまざまな人との出会いがあったと言います。
「常連の育休中のお母さんがふらりと来て、おしゃべりついでにトマトを買ってくれるようなことがあります。そんなふうに、八百屋をやってなかったら出会っていなかった人がたくさんいるんですよね。スタッフが足りないときに『私が店番するよ』と言ってくれたり、友だちやご両親を連れて来てくれたりと、昔ながらのお店のような、懐かしい感じの人間関係がここにはある。ビジネスとしてやらなければならないことはもちろんありますが、地域とそういう関係を築くことのほうがむしろ大切だと考えています。
野菜って毎日使うものなので、あまり遠くには買いに行かないですよね。生活圏のなかに、帰りに寄りたい場所がある、会いたい人がいることは重要だと思います。そういう店が増えたら、街はもっと豊かになるのではないでしょうか」
イエローページセタガヤから始まったプラスヤオヤは、その後、さまざまなマルシェなどに出店。一方、あとから仲間入りした押田さんは、「実は、野菜があんまり好きじゃなかったんです」と言います。
「でも、世の中がどんどんインフレになっていくなかで、さほど価格が上がっていない野菜にはビジネスチャンスがあるんじゃないかとずっと思っていました。その後、尾辻と出会い、仕入れた野菜を食べさせてもらったとき『これめちゃくちゃうまいじゃん、これだったら食べられる』と。どうせならおいしい野菜を売りたかったので、僕も参加させてもらうことにしました」
尾辻さんは「野菜の話をするときにインフレなんていう言葉を出してくる人に出会ったことがなかった。異なる視点を持っているからこそ、押田に参加してほしいと思いました」と振り返ります。
押田さんが大切にしているのは、農家さんやお客さんとのコミュニケーション。徐々につながりを広げ、現在はプラスヤオヤの運営のほか、飲食店へ野菜を卸したり、スーパーマーケットの青果部門の仕入れを一括して担ったりもしています。
「常連の育休中のお母さんがふらりと来て、おしゃべりついでにトマトを買ってくれるようなことがあります。そんなふうに、八百屋をやってなかったら出会っていなかった人がたくさんいるんですよね。スタッフが足りないときに『私が店番するよ』と言ってくれたり、友だちやご両親を連れて来てくれたりと、昔ながらのお店のような、懐かしい感じの人間関係がここにはある。ビジネスとしてやらなければならないことはもちろんありますが、地域とそういう関係を築くことのほうがむしろ大切だと考えています。
野菜って毎日使うものなので、あまり遠くには買いに行かないですよね。生活圏のなかに、帰りに寄りたい場所がある、会いたい人がいることは重要だと思います。そういう店が増えたら、街はもっと豊かになるのではないでしょうか」
イエローページセタガヤから始まったプラスヤオヤは、その後、さまざまなマルシェなどに出店。一方、あとから仲間入りした押田さんは、「実は、野菜があんまり好きじゃなかったんです」と言います。
「でも、世の中がどんどんインフレになっていくなかで、さほど価格が上がっていない野菜にはビジネスチャンスがあるんじゃないかとずっと思っていました。その後、尾辻と出会い、仕入れた野菜を食べさせてもらったとき『これめちゃくちゃうまいじゃん、これだったら食べられる』と。どうせならおいしい野菜を売りたかったので、僕も参加させてもらうことにしました」
尾辻さんは「野菜の話をするときにインフレなんていう言葉を出してくる人に出会ったことがなかった。異なる視点を持っているからこそ、押田に参加してほしいと思いました」と振り返ります。
押田さんが大切にしているのは、農家さんやお客さんとのコミュニケーション。徐々につながりを広げ、現在はプラスヤオヤの運営のほか、飲食店へ野菜を卸したり、スーパーマーケットの青果部門の仕入れを一括して担ったりもしています。
尾辻あやのさん(左)と押田直樹さん(中央)。
つくる人と食べる人の架け橋になりたい
人とのつながりを大切にしてきたプラスヤオヤ。LUMINE AGRI MARCHEに出会ったのも、ルミネの別のイベントに携わっていた山梨県の企画会社からの紹介でした。押田さんは、LUMINE AGRI MARCHEが都会の真ん中である新宿駅で開催されていることに惹かれたそうです。
「ほかのマルシェに出店するなかで、お客さんから『もっと都心でやってくれたら買いに行きやすいのに』と言われることが多かったので、新宿駅という立地はすごくいいと思いました。実際に出店してみたら予想外のこともありましたね。駅は不特定の人が往来する場所なので、お客さんとは一期一会かと思っていたのですが、『先月も買いました』と来てくれるリピーターもいて。こういう場所でも常連がつくんだとおどろきました」
プラスヤオヤで取り扱っているのは、山梨県北杜市産の有機野菜が中心です。ただ、有機栽培という条件は必須ではなく、実際に食べてみておいしかったり、見た目が美しかったり、農家さんとやりとりするなかで深いストーリーを感じたりしたことで仕入れたものもあります。
この日は白なすやトマト、にんじん、ピーマンなど、色とりどりの夏野菜がラインナップ。押田さんは「おいしいものを、一番おいしい旬の時期に届けるという販売方法が叶うのは、マルシェならでは。そして、お客さまに直接農家さんの想いを伝えられることもまた、マルシェの魅力です」と言います。
「たとえば『星空ファーム』という北杜の農家があって、そこはひとみちゃんという女性がひとりでやっているんですね。彼女はいま妊娠中で臨月なんです。そういう話をお客さんにすると、一気に親しみを感じてファンになってくれることもあります。このあいだは常連の方が『精がつくからひとみちゃんに渡してあげて』と希少なバターを差し入れてくれました」
尾辻さんは「産地や栽培方法といったラベルに載せられる情報と、載せられないものがあると思うんです」と話し、こう続けます。
「農家さんのエピソードを伝えると、お客さんにとって農家さんは、会ったことはないけれど『知っている人』になりますよね。知らない生産者だったはずなのに、ぐっと近い存在になる。私たちはプラスヤオヤを通してそういうことをやっていきたいと思っています。
反対に、農家さんもお客さんとつながりたいと考えているんですよ。私たちがお客さんに聞いた味の感想を農家さんに伝えると、『市場に卸した途端“○○ちゃんのオクラ”じゃなくて“○○県のオクラ”になっちゃうから、フィードバックもらえるのは本当にうれしい』と言っていただけます。きっと農家さんも、食べる人も、みんなそうなるといいなと思ってるはずです。ただ、その手段がない、やり方がわからないだけだと思うので、私たちが橋渡し役になってつなげていきたいです」
「ほかのマルシェに出店するなかで、お客さんから『もっと都心でやってくれたら買いに行きやすいのに』と言われることが多かったので、新宿駅という立地はすごくいいと思いました。実際に出店してみたら予想外のこともありましたね。駅は不特定の人が往来する場所なので、お客さんとは一期一会かと思っていたのですが、『先月も買いました』と来てくれるリピーターもいて。こういう場所でも常連がつくんだとおどろきました」
プラスヤオヤで取り扱っているのは、山梨県北杜市産の有機野菜が中心です。ただ、有機栽培という条件は必須ではなく、実際に食べてみておいしかったり、見た目が美しかったり、農家さんとやりとりするなかで深いストーリーを感じたりしたことで仕入れたものもあります。
この日は白なすやトマト、にんじん、ピーマンなど、色とりどりの夏野菜がラインナップ。押田さんは「おいしいものを、一番おいしい旬の時期に届けるという販売方法が叶うのは、マルシェならでは。そして、お客さまに直接農家さんの想いを伝えられることもまた、マルシェの魅力です」と言います。
「たとえば『星空ファーム』という北杜の農家があって、そこはひとみちゃんという女性がひとりでやっているんですね。彼女はいま妊娠中で臨月なんです。そういう話をお客さんにすると、一気に親しみを感じてファンになってくれることもあります。このあいだは常連の方が『精がつくからひとみちゃんに渡してあげて』と希少なバターを差し入れてくれました」
尾辻さんは「産地や栽培方法といったラベルに載せられる情報と、載せられないものがあると思うんです」と話し、こう続けます。
「農家さんのエピソードを伝えると、お客さんにとって農家さんは、会ったことはないけれど『知っている人』になりますよね。知らない生産者だったはずなのに、ぐっと近い存在になる。私たちはプラスヤオヤを通してそういうことをやっていきたいと思っています。
反対に、農家さんもお客さんとつながりたいと考えているんですよ。私たちがお客さんに聞いた味の感想を農家さんに伝えると、『市場に卸した途端“○○ちゃんのオクラ”じゃなくて“○○県のオクラ”になっちゃうから、フィードバックもらえるのは本当にうれしい』と言っていただけます。きっと農家さんも、食べる人も、みんなそうなるといいなと思ってるはずです。ただ、その手段がない、やり方がわからないだけだと思うので、私たちが橋渡し役になってつなげていきたいです」
この日のおすすめは「とろ〜り旨なす」という品種名の白なす。オリーブオイルでグリルし、塩胡椒を振るだけでおいしくいただける。
これまでを振り返り、「野菜が苦手で知識もほとんどなかったからこそ、勉強するのが楽しかった」と押田さん。「農家の方においしい調理方法を聞いたりして、いまでは野菜が好きになりました。ただ、進んで食べるのはうちが取り扱っているおいしい野菜限定ですが」と笑います。
尾辻さんは「青果の世界には、プロももちろん必要ですが、それとは違う私たちのようなオルタナティブな存在がいてもいいと思うんです。価格の安さだけでなく、おいしさで野菜を選びたい、そう感じている人たちはたくさんいると思いますし、私ももともとそのひとりでした。そういう人たちにこそ、おいしい野菜を届けられたらいいですね」と話しました。
都会の真ん中にある、駅という日常的な場所。そこに集まるおいしいものたちは、さまざまな人と人との出会いを生んでいます。
野菜やくだものが持つストーリーに触れることで食への向き合い方が少し変わり、暮らしがもっと豊かになる。LUMINE AGRI MARCHEはそのきっかけをつくってくれます。
■イエローページセタガヤ
https://www.instagram.com/ypsetagaya/
■プラスヤオヤ
https://www.instagram.com/plusyaoya/
--------------------------------------
LUMINE AGRI MARCHE
▼新宿
場所:JR新宿駅ミライナタワー改札外(ニュウマン新宿 2F エントランス前)
開催日:毎月第4木曜日〜日曜日
営業時間:3月〜10月/木~土曜日13:00~20:00、日曜日11:00~18:00 11月〜2月/木~土曜日12:00~19:00、日曜日11:00~18:00
▼南青山
場所:800° DEGREES NEAPOLITAN PIZZERIA 南青山店
開催日:毎月第4土曜日
営業時間:12:00~17:00
▼横浜
場所:ニュウマン横浜 6F 2416MARKET内
開催日:常設
営業時間:2416MARKETの営業時間に準ずる
※開催中止または開催時間を変更する場合があります。詳細は公式のInstagramかFacebookをご覧ください。
尾辻さんは「青果の世界には、プロももちろん必要ですが、それとは違う私たちのようなオルタナティブな存在がいてもいいと思うんです。価格の安さだけでなく、おいしさで野菜を選びたい、そう感じている人たちはたくさんいると思いますし、私ももともとそのひとりでした。そういう人たちにこそ、おいしい野菜を届けられたらいいですね」と話しました。
都会の真ん中にある、駅という日常的な場所。そこに集まるおいしいものたちは、さまざまな人と人との出会いを生んでいます。
野菜やくだものが持つストーリーに触れることで食への向き合い方が少し変わり、暮らしがもっと豊かになる。LUMINE AGRI MARCHEはそのきっかけをつくってくれます。
■イエローページセタガヤ
https://www.instagram.com/ypsetagaya/
■プラスヤオヤ
https://www.instagram.com/plusyaoya/
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LUMINE AGRI MARCHE
▼新宿
場所:JR新宿駅ミライナタワー改札外(ニュウマン新宿 2F エントランス前)
開催日:毎月第4木曜日〜日曜日
営業時間:3月〜10月/木~土曜日13:00~20:00、日曜日11:00~18:00 11月〜2月/木~土曜日12:00~19:00、日曜日11:00~18:00
▼南青山
場所:800° DEGREES NEAPOLITAN PIZZERIA 南青山店
開催日:毎月第4土曜日
営業時間:12:00~17:00
▼横浜
場所:ニュウマン横浜 6F 2416MARKET内
開催日:常設
営業時間:2416MARKETの営業時間に準ずる
※開催中止または開催時間を変更する場合があります。詳細は公式のInstagramかFacebookをご覧ください。