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きょうは本屋に寄って帰ろう/Vol.5(選者:山口博之さん)

2023.10.31

本を愛するあの人が、ルミネのシーズンテーマを切り口におすすめの本を紹介するこの企画。今回のテーマは「Wild & Primitive - 自然が教えてくれること」です。
大自然のなかに立つと、わたしたち人間も自然の一部だと感じることができます。ときにはインターネットを断って、ウィンタースポーツやキャンプなどのアウトドア・アクティビティを思い切り楽しんでみる。自然の営みに触れ、そのエネルギーを体感することで、自分の世界がまた少し広がるはずです。
選書したのは、ブックディレクター・編集者の山口博之さん。人間が自然とともに生きることについて、異なる切り口から考えることができる2冊を紹介します。

『人間がいなくなった後の自然』著:カル・フリン、訳:木高恵子(草思社)

「世界で起きた様々な出来事がニュースとしてテレビやSNSから流れてくる。各地で戦争が起き、自然災害があり、街や産業が衰退し、自然が減っているなどなど。そうした報道や記事は人々が興味を唆ると考えられた何らかの判断によってメディアに乗っている。『人間がいなくなった後の自然』は、そうした報道では報じられることのない、人間がその姿を消していった打ち捨てられた場所で、自然がいかにその姿を回復し生きているのかを教えてくれる」


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私は二年間かけて、最悪のことが起きてしまった場所を旅した。戦争、原子炉のメルトダウン(炉心溶融)、自然災害、砂漠化、毒化、放射能汚染、経済崩壊に見舞われた風景である。
―――
(本書より)


「著者のカル・フリンは、この本を『救済の書』だという。放射能汚染されたチェルノブイリや緩衝地帯となって人間の活動が減った戦争国同士の中間地点、旧炭鉱のボタ山など、ネガティブ要素ばかりでおよそ人がいないような場所で、自然がいかに生物学的プロセスを経て再生していくのかを調査し、自然の力を実際に目にしてきたからだ。元の自然を取り戻していたり、他では失われた種の生物が生きていたり、これまでにない新たな自然のあり方を示していたりもする。

『放棄=再野生化』という実験の渦中にいる終わったかに見える風景は、その実、自然にとっては次なる世代への始まりの可能性もある。果たしてそこには、どのくらいの、どんな人間たちが存在している/できているだろうか」

『ソロー『森の生活』を漫画で読む』文:ヘンリー・デイヴィッド・ソロー(いそっぷ社)

「レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』と並んで、“自然が教えてくれること”というテーマにおいて普遍的な一冊はヘンリー・デイヴィッド・ソローの『森の生活』だろう。ウォルデン湖という湖の近くに自力で小さな小屋を建て、そこで人間が自然とともにできる限りシンプルに生きるということを実践しながら、人間と自然の幸福のあり様を問い、発見し続けた。

そうした『森の生活』は過去何度もリバイバルし、環境問題が喫緊の課題となっている今も改めて注目されている。でもこの本は岩波文庫版で上下巻合わせて660ページを超えるほど長く、“読みたいと思ったけど”という人や、“読んだけど途中でやめてしまった”という人も多い。

本書は、『森の生活』からセリフを抜き出して漫画の言葉として使った『森の生活』の超エッセンス版。極めてシンプルな絵に最小限だけどしっかりとソローのアイディアと思想が伝わる適切な引用がなされている。さすがに抜き出しだけじゃという人向けに、その背景となる解説や抜き出し箇所の前後が最後にちゃんとまとめられているのもありがたい。ソローの思想の骨子を掴んだらもう一度オリジナルの『森の生活』に戻って読んでみてほしい」


山口博之
ブックディレクター、編集者。good and son代表。1981年仙台市生まれ。立教大学文学部英米文学科卒業後、2004年から旅の本屋「BOOK246」に勤務。選書集団BACHを経て、17年にgood and sonを設立。ショップやカフェ、ギャラリーなどさまざまな場のブックディレクションをはじめ、広告やブランドのクリエイティブディレクションなどを手がけ、そのほかにもさまざまな編集、執筆、企画などを行っている。
https://www.goodandson.com/


※該当書籍の取り扱いは各店舗へお問い合わせください



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