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Stories for new standard
これからの世界での、わたしらしさ -3-

2020.09.15

これからの世界での、わたしらしさ

これまでの日常が一変し、新たなライフスタイルが定着しつつある今日このごろ。

変わったこと、変わらないこと、変えていきたいこと。

住む場所も国籍も違う、さまざまなライフスタイルを送る10名のみなさんに、考える時間が増えたからこそ気づけた、自分らしさや自分の本質についてお伺いしました。

あなたの大切なものは何ですか?

いま一度、自分に向き合ってみてはいかがでしょうか。




                      
 

思い出すとき、
その人にもう一度、会っている。

尾形 真理子 <文>


 仕事柄、1日の大半が人と会う時間。それが一転、多くのプロジェクトは中止や延期、すべてがオンラインに切り替わり、「人と会えない時間」が突如として、わたしの生活の中に生まれました。
 不思議と、淋しくなかった。
最初は自分がこんなにドライな人間だったのかと、戸惑いました。そんな人間が、他者の気持ちを慮ったつもりでコピーを書いていたのか、と。
 思い出すというコミュニケーション。
時間に追われ、次々と情報が飛び込んでくる毎日の中で、誰かを「思い出す」時間は少ないです。散歩中に梔子(くちなし)の香りが漂ってきて、ああ、姉の誕生日には毎年この花が咲いていたな。あの時の喧嘩の理由はくだらなかったなとか、小さなきっかけから思い出されることがたくさんあります。
 記憶に風を通す。
 思い出すことで、記憶の風通しがよくなってきて、あれ? あの時のあの人の言葉は、実は違う意図だったのかな? と、その瞬間は反射神経でしか感じられなかったことも、時を経てちゃんと気づけたりする。記憶に教えられることもある。自分にとって大切なことや、他者への愛情が、深まっていきました。
 会えない時間は、誰かを思い出す。そんな静かなコミュニケーションも、おすすめです。


profle / mariko ogata

クリエイティブディレクター/コピーライター。LUMINEのシーズン広告はじめ、資生堂、Tiffany&Co. 、Netflix、FUJITSUなど多くの企業広告を手がける。その他、歌詞の提供やコラムの執筆など幅広く活動。





                      
 

優しい記憶に包まれて

チャールズ・ベイリー


 これまで自分が送ってきてたライフスタイルを変えていくことに、最初はとても困惑しました。世界のいたるところで混乱が始まる頃、ガールフレンドと暮らしていたロンドンから、家族のいるサマセット州の家に引っ越すことになりました。4月から二人で暮らす家を探す予定だったのですが、ロックダウンのためその計画は水の泡に。長い間、僕たちは別々の場所で時間を過ごすこととなりました。5年間の付き合いのなかで、これほど離れたことはありませんでした。
 自分の置かれた状況や不安な気持ちを処理するため、自分の描くカラフルなイラストの世界に没頭し続けました。これまでは自分のまわりの人や、自然風景、日々の何気ないやり取りから得られるインスピレーションをイラストに落とし込んでいたのですが、外出ができず家族以外の人たちとの交流が絶たれてしまったあの長い期間は、家族や友人、ガールフレンドとの思い出や記憶を頼りに制作することが増えた気がします。レコードでお気に入りの音楽を流し、かつての平穏な世界に想いを馳せ懐かしむ。そんな時間を大切にするようになりました。まだまだ孤独や不安な気持ちを描いてしまうこともありますが、以前よりも家族やカップルなどの“人”や”繋がり“をテーマにしたあたたかい作品が多くなったように感じます。
 不安だらけだった英国も、だんだん日常を取り戻しつつあります。 新しく得た視点を持ちながら、普段の生活に戻った世界を見るのが楽しみです。


profle / charles bailey

イギリス在住のイラストレーター。カラフルで活気やユーモアに満ちた世界観、詩的な構図が特徴的。2020年には、フランシス・ロークの子供向け絵本『A WE THING』のイラストレーションも担当。 Instagram @bigfatbambini





                      
 

空間を超えたコミュニケーション

金子 渚


 お客さまとの会話から生まれるアイデアや、対面でお客さまからイメージを感じとる機会がない中で、ネイリストとしてできることは何なのか、どうコミュニケーションを重ねるべきなのか。ネイルサロンDISCOを当面クローズする際にはたくさん悩みました。ふりかえると、私自身にとってもDISCOにとっても、実際に会えなくても人と繋がることができたのは、この自粛期間中の大きな気づきでした。
 一番反響が大きかったのは、SNSで配信中のDISCOらしく仕上げられるセルフネイルの動画。まだサロンに来たことがない人や、普段ジェルネイル派の人とも、自然とコミュニケーションが生まれ、ネイルの楽しさが広がっていく感覚がとても嬉しかったのを覚えています。日々配信を続ける中で、新しい配色にチャレンジしたり、ポリッシュのテクスチャーや筆の硬さまでこだわったり、初心に戻ってネイルアートを純粋に楽しめていたように思います。また、自分の中の「ちょうどよく働く感覚」を知り、家族と過ごす時間が増えて、心に余裕ができたせいか、イレギュラーな状況下でも柔軟に対応できたのかもしれません。まだまだ変化できる自分でいられてよかったなと思います。
 今、あらためてお客さまと過ごす時間、何気ない会話がとても愛しく大切に思えています。自分が本当に大事にしたい空間づくりや、働くこと、自分のスタイルについて向き合うことができたからこそ、今までよりもさらに充実し、私の世界を広げてくれた期間でした。


profle / nagisa kaneko

渋谷のネイルサロン「DISCO」のネイリストオーナー、ジュエリーブランド「MAIDEN」デザイナーも務める。独自の色使いとセンスが光るデザインに定評があり、ファッショニスタ御用達のネイルサロンとして名をはせる。





                      




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