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CLASS ROOM

日々を面白くしてくれる、私の偏愛コレクション。

2020.09.09

2020年度の「CLASS ROOM」の講座は、「LUMINE CLASS ROOM LIVE」としてYoutubeでのライブ配信形式でお届けしています。
9月23日(水)の講座では、モデルの小谷実由さんをゲストに迎えます。小谷さんは、喫茶店、レコード、花など、好きになったものをとことん掘り下げたくなる性格だそう。SNSでもそれらについて発信しています。小谷さんお気に入りの喫茶店「喫茶 ローヤル」で、そのめくるめく“偏愛歴”と、好きなものとの向き合い方について伺いました。


子どもの頃、ブロマイドを持ち歩いていた

好きなものはたくさんあります。喫茶店、花、櫛、レコード……最近はスカーフや本も集めていますし、でもやっぱり一番多いのは服でしょうか。着ることはもちろん、年齢的にもう着れないかなって思うものでも、大事な服ならとっておいてしまいます。

それから、カラーブックス。「猫」とか「中国茶」とか、ひとつのテーマが1冊にまとめられている文庫本サイズの本のシリーズで、60年代から90年代にかけて出版されていたものです。少しずつ集めていて、家にも事務所にもいっぱいあるんですよ。60年代や70年代当時の情報を詳しく知ることができるし、文章の言葉の選び方や語り口調もすごくいいんです。風情があるというか、品があって優しい。図鑑みたいで写真も素敵です。

子どもの頃はモーニング娘。が大好きで、ブロマイドを集めていました。フォトアルバムにギチギチになるくらい詰めて、いつもカバンに入れていたんです。出かけた先で開いて見ることもないのになぜ持ち歩いていたかというと、テレビでよく「持ち物を見せてください」みたいな街頭インタビューがあったんです。もし自分がそれに遭遇したら、一番見せたいものを見せられるようにと備えていたんです(笑)。

並べて眺めるだけでいい

もともとモノを集めること自体が好きなんだと思います。ブロマイドは部屋で床に並べて、メンバーごとや衣装ごとに並べかえたりして、見て、またアルバムに戻すだけ。集めたものを、ただ眺めて楽しんでいました。

それは今も変わっていなくて、櫛のコレクションも実際に使ったりはあんまりしないんです。使い心地ではなく、色や形が素晴らしいという観点で集めているので、ときどき眺めて、また箱にしまって。たぶん、同じ種類のものを並べて眺めることで安心するのかな……。ブロマイドも、お守りのようなものだったのかもしれません。

好きなものはいろいろありますが、やっぱり見た目に惹かれることが多い気がします。そのとき、なにが自分の中で決め手になっているんだろうということをいつも考えますね。たとえばこのテーブルがかわいいと思ったのは、天板の柄が好きだからだ、とか。

でも本当は、好きなことに理由はいらないと思うんです。私は仕事で好きなものについてお話しさせてもらうことが多いので、ついつい説明できるように分析してしまうのですが、なにかに触れて瞬間的に上がった気分や熱量が一番大事だと思います。

派生するように、好きが広がっていく

好きなものとは偶然に出会って、そこから広がっていくことが多いです。
例えば喫茶店。親が音楽好きだったので、CDが家にたくさんあって子どもの頃から音楽が好きでした。CDのアートワークを見ていたら衣装が素敵だなと思い始め、もっと見たくなってその時代の映画を観て。そうしていくうちに今度は、映画に出てくるインテリアが気になり始めて、一番身近でそういう時代の素敵なインテリアを体験できるのが喫茶店だったという流れなんです。そうやって、寄り道していくうちにどんどん好きなものが派生していくことがよくあります。

昔は60年代のポップなカルチャーやデザインが好きでしたが、最近はもうちょっとソリッドなものとか、レトロフューチャーに惹かれるようになりました。昔の人が描いた未来の街みたいな、いい意味でチープなSFも大好き。たぶん、まっすぐにかわいい、美しいもの以外にも、ちょっとシュールなものが好きなんですよね。モノを真正面から見るだけでは足りない……もっといろんな角度からのぞいてみたい!というところがあるのかもしれません。

ただし、猫は真正面から見ています。猫は猫であるだけでかわいい。

自分と向き合う時間が増えた

偏愛についてのエッセイを書いたことがあって、そのとき“偏愛”ってなんだろう?とすごく考えました。でも、よくわからなくって。辞書で意味を調べても、「偏って愛すること」みたいなことしか載っていないし、なにより、私は単純に自分の好きなものをただ好きでいるだけなので、変わったことをしている意識がないんです。

ただ、自分の好きなものに気づいていなかったり、好きなものがあるけど、どこがグッときてるのかまでまだ掘り下げていない人も多いのかもしれません。私に偏愛の才能みたいなものがあるのではなくて、その種はみんなが持っていると思います。自分の好きなものの魅力にさらに気づけたら日々がすごく面白くなるので、お気に入りのモノを深堀りしてみることはいろんな人にやってみてほしいなぁ。同じものを好きでも、人それぞれの深堀り理由は全然違うと思うのでそれも気になりますね。

自粛期間中は、自分自身と向き合う時間が増えて、好きなものとあらためて向き合うことも多かったと思います。世の中では大変なこと、つらいことがたくさん起こっていますが、強制的に自分を見つめ直せる時間ができたことは、数少ない良かった点だと私は思っています。

できることを、ちゃんと続けること

SNSで好きなものを発信するのって、言ってしまえば不要不急なことですよね。だから、必要ないんじゃないかともすごく考えて……。もっと別の、役立つ情報を拡散したり、なにか特別なことをしたほうがいいのかなとも思いました。

でも、そういうなかでも、私の投稿が日々の楽しみになっているというメッセージをファンの人からいただいたんです。それで「あ、これでいいんだ」と思えて。自分が当たり前に、自信を持ってできることをちゃんと続けることは、間違っていないんだと思うことができました。

無理になにかをすることが向いていないのもわかっているので、状況が変わっても私ができることを着実に、120%の力で届けることしかないと思っています。ネガティブな意味ではなくて、ある種決心のような、自分はそうするべきだと。

発信した“好き”が誰かのきっかけになれたら

もちろん、多くの人に見てもらえているという意識や責任はあるので、言葉にも慎重にならないといけない。それでも私は好きなものを発信したいです。それは、見てほしいからとか、こう思われたいというよりは、単純に自分がいいと思っているものを知ってもらいたいんです。

自分のことを言葉で伝えるのは好きだし大事ですが、モノや作品を通して伝えられたら、そのモノを知ってもらうこともできて、それが誰かのなにかきっかけになれたら、とても嬉しい。“好き”を発信することで、いろんなことが伝わる気がします。


小谷さんおすすめの「暮らしをもっと楽しくしてくれる一冊」

『現実入門―ほんとにみんなこんなことを?』著:穂村 弘(光文社)

「歌人である穂村弘さんのエッセイが大好きで、日々穂村さんが書いている本を噛み締めるように読んでいくことが私の最近のライフワークになりつつあります。ときに笑い、ときに考えさせられる。日々の張り詰めた気持ちから解放させてくれる癒しがあって好きです。
本書は穂村さんが今までやったことがなかったものに果敢に挑戦していく模様が描かれていて、普段のエッセイ作品よりもなんだか勇気をもらえたりします」


<プロフィール>
小谷実由(モデル)
ファッション誌やカタログ・広告を中心に、モデル業や執筆業で活躍。一方で、さまざまな作家やクリエイターたちとの企画にも取り組む。昭和と純喫茶と猫をこよなく愛する。愛称は“おみゆ”。


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LUMINE CLASS ROOM LIVE『偏愛のすすめ』
9月のCLASS ROOMでは、小谷さんに好きなことをとことん突き詰める暮らしについてお話をしていただきます。ライブ配信中に小谷さんへの質問コメントも受け付けているので、是非ご参加ください。

配信日時:2020年9月23日(水)20:00~21:00
配信方法:上記日時にYouTube上でライブ配信

*アーカイブ動画を配信中:前編後編

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