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ミュージアム的発想で、日常をアップデート。新しい季節は「偏愛」を表現することから始まる

2025.02.20

2025年春のニュウマンがお届けするシーズンビジュアルのテーマは「ニュウマン的アートミュージアム」。春らしく“花”をモチーフにしつつも、素材や動きに一風変わった表現を取り入れた作品になっています。昨年に続きクリエイティブディレクターを務めたSIMONEの渡辺琢磨さんに、新ビジュアルに込めたメッセージや制作の裏側について伺いました。

わかりやすさを少しだけ裏切ってみる

女優・菊地凛子さんを起用し、「This is my “b”side.」をテーマに展開した2024年から一転、CGによるユニークでコンセプチュアルな仕上がりとなった2025年春のシーズンビジュアル。“アートミュージアム”というテーマは、「街の中心である駅にありながら、日常+αの体験ができる場所」というニュウマンの持つ個性を象徴しています。新たなテーマを前に、なにができるかを考えたとき、渡辺さんは「ニュウマンとはどんな場所か」という根源的な問いに立ち返りました。

「近年の商業施設は、文化的な発信など買い物だけに限らない体験ができる場所になりました。ニュウマンの場合も食を含むさまざまなコンテンツをライフスタイル型で提案し、“そこに行けばなにかがある”という期待感を生む場所ですよね。さらに大きな特徴が、生活動線上の駅という場所に立地していること。スペシャルなものが日常のなかにある感覚がとてもニュウマンらしいと感じました」

そのうえで、“花”や“祝福”、“始まり”といった春の普遍的なイメージと、今季のファッションのトレンドでもある、フェミニン/ロマンチックをかけあわせたビジュアルを提案。ただし、「ストレートな表現を裏切ることでインスピレーションをもたらす」という、これまで渡辺さんがニュウマンのシーズンビジュアルで意識してきたことは今回も変えず、「普遍的なものを違う素材で見せる」ことで、新たな気づきや解釈をうながす表現に挑戦しました。

国境を越えたコラボで表現した多様性

淡い夕空色を背景にガラス細工でできた植物が伸び、やがて花を咲かせます。すると今度は花びらが空気や熱によって膨張し、膨らみきった花は風船のように空へと舞い上がっていく——。
渡辺さんの構想をもとにできあがった映像は、洗練された美しさと無邪気な遊び心が同居しているかのようです。
CGの制作は、韓国のクリエイティブスタジオ・HERE Creativeが担当しました。制作を進めるなかでHERE Creativeのアーティストが特に力を注いでくれた点について、渡辺さんはこう話します。

「全体の構図やレイアウト、それらをより素敵に見せるためのカメラアングルのバランスを提案してくださいました。というのも、CGとはいえ実空間でカメラを回すのと一緒で、少しアングルを変えただけでも花の印象が変わってしまうんです。それから、色味と素材感、膨らみの質感。リアルにはない現象なので綿密にシミュレーションをしつつ、プログラムを組んでくれました」

渡辺さんたちがイメージする動きを叶えるため、花の形状にもこだわったといいます。

「従来の花をモチーフにした映像とは一線を画したいと考えました。目指したのは、実際の花からインスピレーションを受けながらも、単なる再現ではなく、ガラスの花を通して夢のような、超現実的な雰囲気を表現すること。そのために、さまざまな花の形を研究して照明やテクスチャの調整を細かく行いました。
また、花びらが膨らむシミュレーションも重要なポイントです。適切な強度や速度のバランスを保つことで美しい形状を維持することが不可欠だったので、何度も試行錯誤を繰り返しました」

制作過程でつくられたストーリーボード

もうひとつ、渡辺さんがこだわったのがビジュアルに添えるメッセージです。映像のなかでガラスの花が膨らむ様子と、実際のガラス細工をつくる工程をリンクさせて生まれたのが、「膨らむ(偏)愛のかたち。」というコピーでした。

「最近“界隈”とか“推し活”という言葉が広まっているように、自分の好きなものをオフィシャルに表現し、かつお互いに認め合いうという新しい仲間・コミュニティのあり方はもはや当たり前になっています。ニュウマンのお客さまにも、自分の“好き”を吹き込んで偏愛をめいっぱい膨らませてほしいという意味を込めました」

花の形や色をバラバラにしたのも、それぞれが持つ“偏愛”を表現するため。多様なライフスタイルを肯定するニュウマンらしいメッセージになっています。

CGの制作中の画面キャプチャ

見た人の1日をハッピーにするために

ビジュアルのできばえについて、渡辺さんはこんな手応えを感じています。

「フックのある人物像やキャッチーなコピーに依存せず、ビジュアルそのもので振り向いてもらうことに真摯に向き合わなければならないという点で、ハードルの高さを感じました。でもそのぶん、インスピレーションとなる“なにか”をもたらし、見る人の記憶に刻まれたり、自身で考えてもらうという、これまでとはひと味違うコミュニケーションが可能になるのではないかと考えています」

願わくは、ミュージアムを訪れて素敵なアートに出会ったときのような感動体験が生まれ、「シンプルに『きれいだな』という感想から、なにかを思い出したり、考えるきっかけになれば。さらに、見る前と見たあとで1日の気持ちや景色が違ったものに見えたり、色づいて見えたりするとうれしいですね」と話す渡辺さん。HERE Creativeも「この幻想的で夢のようなビジュアルを通して、見る人が自分なりのインスピレーションを見つけ、想像の世界へと引き込まれることを願っています」とコメントしています。

日常を少しだけアップデートするヒントを与えてくれるような、春のニュウマンのシーズンビジュアル。新しい季節にふさわしいときめきとワクワクを、ぜひ感じてみてください。


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Creative Director:Takuma Watanabe(SIMONE INC.)
Art Director:Mayuko Ishida(SIMONE INC.)
Video Director:Shintaro Kamei(SIMONE INC.)
Producer:Fumika Ochi(SIMONE INC.)
Production Manager:Haruka Tokoi(SIMONE INC.)
Creative & Production Agency:HERE CREATIVE
3D Artist:Studio TDL
Retouch:VITA INC.


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