“ゆる煎茶”を楽しもう
講師:茂木雅世(日本茶アーティスト)
お茶を淹れる作法にとらわれない、その日その時の味を楽しむ「ゆる煎茶」をモットーに活動をする日本茶アーティストの茂木雅世さんの「ゆる煎茶会」にご参加いただけます。急須・茶器を使っておいしいお茶を淹れる、ゆったりした時間を茂木さんと一緒に愉しんでみませんか?
私自身、ずっとお茶が好きで、煎茶道を習って師範になったんですが、その過程で感じたことがありました。抹茶を立てる茶道も、茶葉をお湯で淹れる煎茶道も、作法が重視されます。茶器の扱いや飲むときの所作、いろいろなルールがあるんです。
その一つひとつに意味があって、すべて理にかなっているから、動作に一切の無駄がありません。そういう型を学ぶことで、ものを丁寧に扱えるようになったり、人に対するおもてなしの心が身に付くという、人間形成という側面もあるんですよね。
でも、作法を重視するあまり、緊張して震える手で淹れるような場面を目にしたこともあって。あらためて、本来の「お茶をおいしく、飲んでもらう」という目的を大切に、かつ、私の大切にしている目的として、リラックスできるお茶の場を創りたいと思ったんです。「Chill」って思ってもらえるような。だから「ゆる煎茶」(笑)。雰囲気としては、ほっとする実家で飲むお茶。日常と非日常を行ったり来たりする感じをどう表現するのかというところですね。
茶室での正式なおもてなしもすてきですが、でも、おもてなしの形はそれだけではありません。たとえば、桃山時代の丿貫(へちかん)という茶人は、茶室の入り口に落とし穴をつくったそうです。一回落として、お風呂に入れて着替えさせて、お茶をどうぞって(笑)。
だから、いろんなおもてなしがあっていいと私は思っています。最近やっているのは、「TEA ON THE BEACH」という、砂浜に木の枝でつくったパラソルの下でお茶を淹れるというイベント。おもてなしというより、「みんなで楽しもうぜ!」というテンションで。
茶器も楽しみのひとつですね。急須も、昔つくられた物の中には、つまみがお花の形になっていたり、形自体が鳥になっているものがあったり、すごくかわいいんです。実際に急須をつくっている陶芸家さんと一緒に釉薬の比率を変えて、どれがいちばんお茶に合うのかっていう実験をしたこともあって。いわゆる“お茶をやっている人”というイメージからは遠いかもしれません。でも、緊張しないで、暮らしの中で楽しんでもらうのがやっぱり一番うれしいんです。
そう思うようになったのには、ひとつのきっかけがありました。もともと、実家では母が毎日お茶を淹れてくれていたんですが、当時はそこに特別何も思うことはなかったんです。でも、大人になって仕事が大変だったとき、久しぶりに自分で淹れたお茶がすごくおいしくて、涙が出てきて。
きっと、小さい頃の記憶とか、いろんなことを感じたんだろうと思いますが、そこで感じたことを表現したいと思ったのが、現在の活動を始めたきっかけです。最近は、ブラック企業でお茶を延々ふるまい続ける、謎の活動をしたいってずっと言っています(笑)。「お茶にしようか」って声が聞こえると、やっぱり安心するでしょう?
よく「おいしいお茶を教えて」と言われますが、10人いたら10人、何をおいしいと感じるかは違います。日本人にとって日常になじんでいるだけに、お茶には一人ひとりの記憶がある。私がお茶を通してやっていることは、記憶に残る時間や場、目には見えない大切なものをつくることなのかなって思っています。
お茶を淹れる作法にとらわれない、その日その時の味を楽しむ「ゆる煎茶」をモットーに活動をする日本茶アーティストの茂木雅世さんの「ゆる煎茶会」にご参加いただけます。急須・茶器を使っておいしいお茶を淹れる、ゆったりした時間を茂木さんと一緒に愉しんでみませんか?
かたくるしくない、誰もが笑顔になっちゃうような「ゆる煎茶」をモットーに煎茶のこれからの在り方を模索・企画・発信する人。全国でお茶にまつわるイベントを企画・開催すること9年間。FMyokohama「NIPPONCHA茶CHA」DJ他、様々なメディアでお茶の魅力を発信しています。Twitter:@ocharock