異文化に身を置いたり、価値観が近い人と交流したり。
夜の過ごし方で、最近興味があるのはスナックです。もともと、銭湯とか喫茶店とか、今の時間軸とは異なるような場所に行くのが好きで。スナックに行っても、まだまだ「おじゃまします」という感じなのですが、そういう異文化に触れることで自分をあらためて知ったりもして。「いい昭和歌謡をぜんぜん歌えない、やばい!」みたいな(笑)。そういうことって、ふだんは気付かない。
以前、バーでアルバイトをしていたことがあるのですが、バーに来る人は、本性を明かしきらないというか、いつもとは違う自分を楽しんでいるイメージがありました。周りとある程度の距離を取るから、自分の形がちゃんと見えてくる。だからふだんの環境とは違う場所に行くことも、自分を客観視できるという意味で、感覚をゼロに戻すひとつの方法ではあると思います。
今の季節は夜の時間が長いから、夜にしかできないことを積極的にやってみるのはいいかもしれませんね。映画のオールナイト上映でも、最近流行っているナイトプールでも……ちょっともう寒いかもだけど(笑)。さきほどの話とは逆で、価値観がちゃんと深い次元で共有できる人のコミュニティでは、個人が持っているちょっと変なところとか、ずれているところが、肯定される感覚がある。伊丹十三も言っているような「驚き」と、ああ、こんなことが話し合えるんだ、って泣けてしまうくらいの深い次元での「共感」。その両方のバランスが大切だと思います。
「今、何を考えたいか」をみんなで考える。
「She is」でイメージしているのは、群れるという感じではなく、緩やかにつながっていくコミュニティ。毎月特集をつくって運営していくのですが、特集の内容をみんなで考えて掘り下げるということがひとつの軸になると思っています。自分たちにとって、今、何を考えたいかということがテーマです。
もうひとつの軸が、有料メンバーに登録すると月に1回ギフトが届くという仕組み。女性には生理があって、バイオリズムの変化で気分が落ち込むことがあります。そういうときに、うれしいことが起きたらいいよねって。私は個人的に、意外で素敵なことが起きたときに幸せを感じる癖があって、ギフトにはそういう想いも込めています。
今は女性に限らず、どんな人もさまざまな理由で息苦しさを感じている時代なのではないかと思っています。そのうえで、生物学的に女性として生まれてきて、社会的にも身体的にもいろいろな選択が迫られるということを自分事として捉えたときに、女性の立場から生き方を考えていきたいなと思いました。
自分のものだと思える、新しい、小さなコミュニティ。
今、「She is」はティザーサイトでメールマガジンの登録ができる状態なのですが、想像していた以上にたくさんの人が登録してくれて。一緒に立ち上げた竹中とふたりで号泣しました……。アンケートには「こういう場所がほしかった」とか、「自分のものかもしれないって思えた」といったコメントもありました。
年代的には20代半ばから30代くらいを中心に考えているのですが、アンケートでは10代から50代まで幅広い方に回答していただきました。10代の方からは「私にはまだ早いのかもしれないけれど、いつかこういう大人になるために読みたい」、40代の方は「こういうものがあったらよかったなって思いました」と、自分の場所かもしれないと受け止めてもらえる人に出会えたことがうれしかったです。
まずは自分たちの実感を大事にしながら少しずつ形にしていく予定ですが、もっと広く、それこそ女性だけじゃなくて男性にも見てもらえたら。かといって、むやみやたらに拡大していきたいとは思っていないんです。「ひとりひとりが、無敵かもしれないと思える夜を増やす」というのは、言い換えれば、自分らしく生きても大丈夫だ、って思える瞬間が増えるということです。そんな想いが、ちゃんと心の中のコアなところに、届くべきところに届く。そういう場所でありたいなと思っています。