プチリノベ入門
自分で棚を取り付け、壁にペンキを塗り、フローリングを貼り替えて……。「住まいは自由に編集ができます」と話すのは、内装を模様替えするように楽しむためのサイト「R不動産toolbox」の荒川公良さん。自分でできるリノベーションのヒントやアイデアをうかがいました。
家だって“編集”して自分好みに
荒川さんによれば、最近、リノベーションに興味がある女性が増えてきているのだそう。けれど、実際リノベをするとなったら、やっぱり勇気がいるし、やり方だってわからない。そんな悩みを解消するためのキーワードが「編集」。「今日は何を着ていこうかな」「外食にしようか、家で食べようか」など、衣食住のうちの「衣」と「食」は自分好みに“編集”しているのに、「住」だけがそうなっていない、と荒川さんは言います。
建売住宅を買うか、マンションを買うか、設計を依頼するか。日本では家の“編集”は人任せにされてしまっています。でも、誰かがつくった建物に合わせるのではなく、自分の生活に住まいを合わせていくことはできるんです。そもそも生活って、結婚したり子どもができたり、その時々で変わっていくものですよね。それに合わせて、家も自分で考えて変えていくほうがいい。
荒川さん自身、古いビルの一室に住んで、内装に手を加えながら暮らしています。帽子を飾るフックを取り付けてみたり、壁の色を2色で塗ってみたり。一度にすべてをやろうとせず、生活しながら、気になる部分を少しずつ“プチリノベ”していく、それが一番のポイント。
みんなが自分で決めたがっている
とはいえ、最初から“住まいを編集する”という考えがあったわけではなかった、と荒川さん。前職でリノベーション設計を手がけていた頃は、クライアントに綿密なヒアリングをして、細部までこだわってデザインしていたそうです。
ところがあるとき、お客さんに「住みはじめるまで、間取りを決めたくない」って言われたんです(笑)。そんなこと、普通だったらありえない。でも、一生懸命考えて、壁が動いて間取りを自由に変えられるデザインにしました。無事に完成して喜んでもらえたんですが、疑問も湧いてきて。その方の「間取りを決めたくない」という要望の裏にある気持ちは、「自分で決めたい」ということだったんじゃないかって。
その後、別のクライアントに、トイレに付けるペーパーホルダーを30種類ほど提案してみたら、夢中になって選んでくれた。結果的に決まったのは、荒川さんがイメージしていたのとは別の素材のもの。「決めないほうが喜んでもらえる」という気づきを得たのです。
だから、「toolbox」では、床材やペンキも、解体工事も施工も全部、お客さんが選べるようにしています。つまり、自分が持っている家具に合わせて、壁や床を選ぶことができる。お金がかかると思うかもしれませんが、DIYでやるなら棚を取り付けるのに5000円、ペンキ一式揃えても1万円。アンティークの家具の背景が白いビニールクロスだなんて、残念じゃないですか。賃貸の人も多いと思いますけど、最近は壁一面だけDIYできるような物件もあるし、徐々に流れは変わってきている。家づくりって、本当はすごく自由なんです。
ちなみにR不動産toolboxでは、従来のオンラインショップに加え、9月1日にショールーム(※商品の購入はできません)をオープンしたそう。「約500点の商品を、実際に手に取ってみてくださいね」と荒川さん。また、おすすめサイトも教えてくれました。
◎リノベのインスピレーションはココから。
REMODELISTA
http://www.remodelista.com/
◎リノベ可能な物件を探すならココで。
DIYP
http://diyp.jp/
もちろん東京R不動産も!
http://www.realtokyoestate.co.jp/
失敗を重ねて、理想の部屋に近づいていく
使い古された足場板をフローリングにしたり、壁一面をグリーンにしたり。実際にtoolboxを利用してリノベーションした人たちの事例をたくさん紹介しながら、「失敗を恐れず、まずやってみることが大事」と話す荒川さん。その理由を、ファッションにたとえてこう話してくれました。
中学生とか高校生の頃、振り返ってみるとダサい服を着ていたなって経験、ありますよね(笑)。でも、失敗を繰り返すからこそ、センスもよくなる。家も同じです。壁に穴が空いたって埋められますし、ペンキがはみ出したらまた塗ればいい。自分らしさがあふれている家って、すごくいいですよ。心地よい住まいは、毎日の生活の栄養分。みなさんも、ぜひ、今日から住まいを見つめ直してもらえれば、と思います。
CLASS ROOM恒例の「荒川さんにとって、よい暮らしとは?」という質問の答えは、「そうですね、『自由』じゃないでしょうか」。
自由になるためには、自分に素直にならないといけないし、何を我慢しているのか気づかないといけない。そして知識や技術を蓄えていくと、やりたいことができるようになる。そうやって自由自在に暮らせるようになることが、「いい暮らし」なんじゃないでしょうか。
荒川公良(R不動産 toolbox)
1979年福井県生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科建築学専攻修了後、株式会社イリア(インテリアデザイン)を経て2007年より「東京R不動産」を運営する株式会社スピークにて住宅やオフィス等のリノベーション設計を行う。2010年より「R不動産toolbox」をスタート、2013年に株式会社TOOLBOXの設立に際し執行役員就任、事業推進をリードする。
【R不動産toolbox】http://www.r-toolbox.jp/