2017.5.24
Report 1/3

民芸とぼくの暮らし方

講師:中原慎一郎(ランドスケーププロダクツ代表)

インテリアショップ「Playmountain」やカフェ「Tas Yard」を運営、1940~60年代のモダンデザインをルーツに新しいものづくりを目指す「ランドスケーププロダクツ」。今回のCLASS ROOMでは、代表の中原慎一郎さんが講師を務めました。教えてくれたのは、クラフトアイテムを生活に取り入れ、楽しく暮らすコツや、民芸の魅力について。その様子をどうぞ。

モダンデザインの中にあった民芸品

大学時代にアンティーク家具を扱うショップで働いたことから、家具に興味を持ち始めた中原さん。卒業後に上京し、ミッドセンチュリー家具を扱うアンティークショップでの勤務を経て、2000年に神宮前でインテリアショップ「プレイマウンテン」を立ち上げました(現在は千駄ヶ谷にて営業)。それからは家具の販売だけではなく、飲食、設計など幅広く仕事を展開します、そんななか、ミッドセンチュリーを代表するデザイナーであるイームズをまとめる展覧会の設営に携わったことをきっかけに、民芸やクラフトに興味を持つように。

展覧会の設営に携わったことで、イームズの家に入る機会があったんです。世界的なデザイナーですから、洗練されたデザインのインテリアなのだろうなと思っていたら、驚いたことに、世界中の民芸品が部屋に散りばめられていました。そのことに、僕は大きな衝撃を受けて。イームズは、民芸品に触れることで精神的な健康さを育んでいたということのようなんです。

「イームズ・デザイン」展が成功を収め、中原さんはさらに「若い人が民芸品に興味を持つような展覧会を企画してほしい」という依頼を受けます。それが、2003年に開催された「民藝とランドスケーププロダクツの出会い」展。これをきっかけに、民芸品への興味をさらに深めることになりました。

展覧会で、民藝運動の創始者・濱田庄司のお孫さんと出会ったんです。彼と濱田庄司の家に行くと、そこにはイームズから譲り受けたラウンジチェアがあった。ほかにもいろんな国のものを見つけて、民藝運動は決して古臭いものではなく、新しい運動であることを思い知りました。それから、益子町にも通うようになって、民芸やクラフトの世界にどっぷり浸かるようになりました。ちょうど僕もクラフトに対して、デザインされすぎない居心地の良さを感じていた頃だったので、タイミングも良かったんでしょうね。

モノだけではなく、お店や人との出会いも魅力

中原さんの時代は、民芸品や民芸品を扱うお店の情報を調べるのは、もっぱら古本がメインだったそう。最近はインターネットですぐに情報が見つかり、買うこともできますが、リアルな場だからこその選び方やお店の歴史にも触れてほしいと中原さんは言います。そこで、いくつかのお店を紹介してくれました。

まずは、駒場にある「日本民藝館」。ここは目の前に、民芸運動家の柳宗悦が住んでいた家があって、そこも定期的に開放されて入れます。海外でデザイナーやものづくりをしている友人も、日本に来ると行きたがるので、いつも連れて行っています。建物自体にもすごく雰囲気があるんですよ。

そのほかにも、全国の食器をとりそろえている「備後屋」、BEAMSのレーベルである「fennica(フェニカ)」、そして、中原さんの大のお気に入りである益子町の魅力もたっぷりと紹介してくれました。

400以上の窯元がある益子町は、日本でも有数のクラフトの街。ここまで盛り上がっているのは、東京から車で1、2時間という距離感が大きな要因ではないかと思っています。都心と接点を持ちながらものづくりができる、外からの影響も適度に受けて変化できるという意味では、東京と益子はすごくいい距離感なんですよね。海外でも同じで、クラフトで有名な街は、都市から1、2時間という距離感だったりするんですよ。

益子町にあるのは、仁平古家具店を営む仁平さんが倉庫を改装してつくった「pejite(ペジテ)」、濱田庄司がひいきにした「赤羽まんじゅう」、ピザがおいしい「雨巻茶屋」、宿泊も可能なカフェ「益古時計」などなど。現在も数々の魅力的なお店がありますが、ものづくりの人たちが増えていくことで、街も移り変わり、さらに魅力あふれるお店が増えるそうです。そんな益子町に行って「どんどん話をしてほしい」と話す中原さん。

お店で気に入ったものを見つけたら、どういうふうに使ったらいいか、ほかにはどんな形のものがあるか、作家さんにどんどん聞いてほしい。陶器市が定期的に開催されることもあって、益子町の作家さんはお客さんとの交流にも慣れている人が多いですから、安心して質問してください。各地でイベントも行っていますが、皆さんにはぜひ益子町の工房に行って、作家さんに使う側の声を聞かせてあげてほしいなと思っています。

発見し、学ぶという楽しみ方を

それぞれの用途に沿う道具として生まれた民芸品。人々のライフスタイルが移り変わっていく中で、民芸品をどのように生活に取り入れていけばいいのでしょうか? 中原さんはこんなアドバイスをしてくれました。

もちろん決められた用途はありますが、自分で思いついた、好きな使い方をしていいんです。使って失敗することはあると思いますが、失敗してもいいと思えるくらい気に入れば買ったほうがいい。僕はアメリカでいろんな作家さんの家に行ったとき、ものの使い方にはすごく影響を受けました。砂漠に住んでいる友だちの暮らしをそのまま真似ることはできないけど、どこか感じるものがあるんです。

講義の最後は、CLASS ROOM恒例の質問。中原さんにとってよい暮らしとは?

 

「失敗を恐れずに、なんでもやってしまうこと」かな。僕はすべてのことを「遊び」だと捉えて、楽しく取り組んでいます。もし壁に当たっても気にせずに、ポジティブに捉えて突き進んでいく。そうするうちに、失敗しない道を選ぶ直感も鍛えられるだろうし、それがよい暮らしにもつながっていくのではないかな。

>>交流会の様子はこちら

中原慎一郎(ランドスケーププロダクツ代表)

1971年、鹿児島県生まれ。ランドスケーププロダクツ代表。オリジナル家具等を扱う「Playmountain」、カフェ「Tas Yard」、コーヒースタンド「BE A GOOD NEIGHBOR COFFEE KIOSK」、ギャラリースペース「CURATOR’S CUBE」、ヴェトナム麺食堂「Pho 321 Noodle bar」を展開。また住宅/店舗のデザイン業務、イベントプロデュース/ブランドディレクションを手がける。2017年2月、サンフランシスコに「Playmountain EAST」をオープン。
【ウェブサイト】http://landscape-products.net/

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