自分にフィットするファッションの楽しみ方
ハヤカワ五味さんは、小さい胸のランジェリー「feast(フィースト)」や細身ワンピース「Double Chaca(ダブルチャカ)」など、“課題解決型アパレル”を展開する株式会社ウツワの社長。ですが、ご自身にフィットする服を選べるようになったのは、ここ1年のことだとか。そんなハヤカワさんが、「服選びが楽しくなった」というきっかけと、自分に合う服の選び方について教えてくれました。
何もかも自分ひとりで背負わなくていい
高校生の頃はロリィタ服を楽しんでいたハヤカワさん。大学2年生でfeastを立ち上げて以降、取引先関係者の目を気にするあまり、無難な服を選ぶようになってしまいました。細身の体がコンプレックスで、着る服によっては貧相に見えてしまい、悩んだ挙句、それを隠すような服装ばかり揃えてしまったそう。何を好きなのかわからなくなるくらいファッションを楽しめなくなったハヤカワさんですが、あることをきっかけに考え方が変わりました。
ファッションセンスがいいなと、前々から思っていた友達がいて、彼に、服を選ぶのが苦手なことを正直に言って、1日かけて新宿で服を選ぶことに付き合ってもらいました。彼は以前から私に似合う服があると、ずっと言っていてくれた友達で、その1日で、服の知識を教えてもらったり、似合う服を提案してもらえたりしたんですね。結局、クローゼットの8割を買い替えるきっかけになって、それで服を選ぶ楽しみができました。快晴の日なら、『鮮やかな青いズボンを履こう』って思えたり。だから、自分でどうすればいいかわからないときは、周りにいる詳しい人を頼るのはアリですよ。
人に苦手なことを告白するのは恥ずかしいことかもしれません。けれど、ハヤカワさんは素直に認めて、人を頼るようにしているそうです。誰かに教えてもらうことに尊い気持ちを持っているのだとか。
最初は誰かを真似ることからはじめていいんですよ。誰かに教えてもらったことでも、身についたら、ひとつ学んだことになるからかな。Instagramで、あたかもファッションセンスがいい感じに、知っていますよ感を出している私も、服についてちゃんとわかったのは、2017年の9月ぐらい。友達と1日新宿で買い物をしてからなんです。『ほんとに、何もかも最初から自分でできなくたっていいんだよ』ということは、みなさんにとにかく知ってほしいなって、思って今日はきました。
形から入ると生活も変わる
そんな体験を通して、ハヤカワさんはファッションセンスを磨けるものだと感じています。センスは、「選択肢の数」と「いつ、どれを選択するのか」の掛け算でできていると思うからです。ハヤカワさんは選択するものを決めるために、まずは詳しい人から学ぶことが大事だと言います。では、選択肢の数はどうすれば増やせるんでしょう?
ファッションの話を人からいっぱい聞く。いろんな服を見に行ったり、触ったり、使ってみたりする。『今日はどんな服を着よう』という、“どんな服を着よう”の選択を続けていくと選択肢は広がります。その選択肢のなかに、自分に一番似合う服を選べる可能性もひそんでいると思うんです。もしも選択が間違っても、次により良い選択をするための練習ぐらいに思うといいですよ。詳しい人に教えてもらうときから、その服を選ぶ理由を聞きながら、『今日はこういう理由でこの服にしよう』を繰り返していくと、経験値が増えて、自分なりに選んでいけるようになってくるような気がしています。
もしも今、自分にフィットする服を着ていないと感じている人がいるなら、オススメの方法があるみたいです。
私と同じように、クローゼットを8割ぐらい入れ替えてみるのはいいかもしれません。私の場合は、クローゼットの服を売ったお金に、チャリンと、自分のお金を5万円ぐらいプラスしたら、8割入れ替えることができました。取り替えて、形から自分の生活を変えてみるっていうのは、ひとつアリだと感じています。もしも買った服を使わなかったとしても、それを手放して、また新しい服を迎え入れてあげたらいいんですね。服を売ったり買ったりしながら、試着のときと自宅で着た時の印象が違っていたとか、学びが増えていくと思うから。
身なりから自分を変えてみると、意外な生活をはじめることができたそうです。
昔から、こんな風になりたいなと思っている人たちから、声をかけてもらえるようになってきました。だから、自分がこうなりたいと思う人物像に向けて、服を近づけていくっていのはアリだなって感じています。
納得したものに囲まれる幸せ
もしも、自分の好きな服と自分に似合う服が異なってしまった場合でも、「絶望する必要はないんだよ」とハヤカワさんは話します。
そういうときは、好きな服と似合う服の間に架け橋をつくるようなことをしてみるといいかな。ふたつを見比べたときに、何かしら共通項が見つかるはずだから、それを探してあげるとハッピーな架け橋がつくれるはず。自分で選んだり、架け橋を探すことって難しいと思うんだけど、世間が決めた選び方や探し方に合わせてしまうと、以前の私みたいに服を楽しめなくなっていってしまう。失敗してもいいし、誰かを真似てもいいから、自分で選べるようになることを少しずつできるようになっていけたらいいですよね。
講義のあとは、会場のみなさんから寄せられた質問に答えてくれました。たとえば、ハヤカワさんのなりたい人物像はどういうイメージですか?
パソコンを抱えるPerfumeののっち(大本彩乃さん)です。のっちのようにシャキッとしていて、媚びない雰囲気の女性になりたい。仕事ができて、でも周りには優しいような素敵な人をイメージしています。私自身、形から入るタイプなんですね。
CLASS ROOM恒例の「あなたにとって、いい暮らしとは?」という質問にも答えてもらいました。
私にとってのいい暮らしは、自分が良いと思ったものに囲まれている暮らし。自分で良いと思えるものを選んでいくと、それが誰かに伝わって、つながりが生まれます。何より、納得したものに囲まれて暮らしていたら、幸せだなって思うんです。朝起きて、低気圧でテンションが低くなってしまった日でも、クローゼットを開けたら自分の好きな服で溢れていたら、どれを選んでも幸せですよ。
ハヤカワ五味(ファッションデザイナー)
1995年生まれの22歳。東京出身、多摩美術大学卒業。課題解決型アパレルブランドを運営する株式会社ウツワ代表取締役。高校1年生の頃からアクセサリー類の製作を始め、プリントタイツ類のデザイン、販売を受験の傍ら行う。大学入学直後にワンピース等の《GOMI HAYAKAWA》、2014年8月には妹ブランドにあたるランジェリーブランド《feast》を立ち上げ、2018年にはラフォーレ原宿に常設店舗を出店。