野外フェスの楽しみ方
6月講座は、「野外フェスの楽しみ方」をテーマに、フジロックを運営しているスマッシュの倉橋慶治さんを講師に迎えました。フードやファッションなど、音楽だけではない野外フェスの楽しみ方を教えていただきました。
音楽ファンに愛されるフジロック
スマッシュは、コンサートツアーのブッキングや制作など、プロモートをする会社です。そこで倉橋さんは、約25バンドを担当し、年間100回ほどのコンサートにたずさわっています。
スマッシュのなかでも、ライブを一番見ているという自負は持っていますよ。
1997年から数えて24回目を迎えるフジロック・フェスティバルでは、第1回からスタッフをしてきました。毎年、回を重ねるに連れ、熱狂的なファンが増えてきたことは、フジロックが愛されている証拠でもあります。
きっと、純粋に音楽を聴くことが好きな方々がファンになってくれているのかな。フジロックに来て、その環境を好きになってくれて、だんだんと、このフェスの雰囲気を知っていっていただけたんだと思います。
今では、海外でパックツアーが販売されるようにもなり、中国をはじめ、アジアの音楽ファンも集うようになりました。
スタッフの手でつくられるフジロックの今
毎回、注目を集める出演アーティストのラインアップは、スマッシュのスタッフ総出で話し合い、決めていくのだそうです。
ブッキングミーティングはすごく長い(笑)。洋楽の日、邦楽の日、若手の日とか、ジャンルに分けて複数日ミーティングします。まずは都心部のファンが「行きたい!」と思ってくれるように、フェスの主役に当たるヘッドライナー系のアーティストから声をかけていって。スタッフが持ち寄ったバンドから、どういうラインアップにしていくのか。出演料との兼ね合いを見つつ、時間をかけて決めていきます。
演目以外にも、スマッシュで決めていく仕事はあります。会場の設営であったり、来場用のリストバンドであったり。24年で変化したことはたくさんありました。
昔ステージだったオレンジコートは、テントを並べて、食事ができるエリアに変えました。小ちゃなステージを用意して、バンド演奏を聴きながら、ごはんを食べることができます。2019年は、このステージがもう少し大きくなる予定です。
来場者の入退場を管理するリストバンドにはICチップが入っていて、いずれはそれで会計できるようになるといいですよね。海外のフェスには、多いんですよ。それでも、フジロックがはじまった頃は、メールもケータイもなくて、ファックスを使っていたくらいなので、大きな変化です。
女性や子どもが楽しめる野外フェス
フジロックを楽しみにくる女性たちは、どんなメイクやファッションが多いのでしょうか?
基本はナチュラル系です。都内にいるときも急に雨が降ることはありますよね? 同じように天候が崩れることもあるので、カッパは持っておいたほうがいいと思います。長靴も、可愛いものが増えてきたので、選ぶことも楽しみのひとつ。
近年は、家族連れの来場者も増えているようです。
親子でアウトドアファッションを楽しむ方もいます。なかには、3世代でくる家族もいますよ。キッズランドを利用する際は、子どもがバギーに乗っている間に親は音楽を楽しむ。子どもが物心つくようになると、会場でいろんなところに興味を持つようになって、ライブを見る時間を取りにくくなりますが、中学生にもなると、一緒にライブを楽しめるようになります。フジロックは中学生まで無料で、世界一子どもに優しいフェスだと思うので、ぜひ家族でも楽しみに来てください。
カレーライスに丼もの、ラーメンのほか、行列ができるピザといったフードの楽しみも、フジロックの魅力だと続けます。
京都の櫻川という日本料理屋がハモ茶漬けを出してくれたりもしています。ミシュランで1つ星を取ったような割烹料理で、2019年は茶漬けからうどんに変えて出品するみたいです。
やりたいことを仕事にできる暮らしの豊かさ
講義の後半は、参加者との質疑応答を行ないました。
Q.倉橋さんオススメのステージはどこですか?
夜遅くまで会場にいることができるなら、ぜひルーキーを見てほしいです。あとは、入場ゲートの前に「THE PALACE OF WONDER」というエリアがあって、楽しいですよ、カオスで(笑)。
Q.これまでにブッキングで一番手こずったアーティストは?
断トツでボブ・ディラン。10年以上、声をかけました。マネージメント会社も、レコード会社も彼をコントロールせず、本人が出演を決める方なので、出演が決まった際は、「嘘でしょう?」と信じられないくらいに嬉しかったんですよ。
Q.フジロックを楽しむうえで、最低限、気をつけたほうがいいことは?
特にありません。フジロックはファンと一緒につくってきたフェスなんです。ずっと自主性を大事にしてきて、今のフジロックができています。
最後に、CLASS ROOM恒例の質問にも答えてもらいました。倉橋さんにとって、「良い暮らし」とは?
いろんなことを考えてみたんですけど、「今」が一番。好きなことを仕事にさせてもらえて、それを家族も理解してくれて。子どもが大きくなったとき、音楽に興味を持って、「レッチリ知ってる?」なんて聞かれたら、「知ってるよ。会ったことあるもん」って答えたり。自分のやりたいことをやっているのは、良い暮らしだなって思います。
倉橋慶治(コンサートプロモーター)
FUJI ROCK FESTIVALの主催をはじめ海外バンドの招聘を行うSMASH CORPORATIONにて制作業務を担当。RED HOT CHILI PEPPERS, OASIS, BRAHMAN, SiMなどの国内外を問わずさまざまなアーティストのブッキングから帯同まで全てのコンサートにまつわる業務を行う。年間ライブ本数は150本を超える。