講師:芝崎信明(&Premium編集長)、野村由芽(CINRA.NET編集者)、青柳文子(モデル・女優)
野村さんの3つのキーワード
〈銭湯〉〈手芸〉〈俳句と詩〉
続いては「ほかのおふたりと比べると、すごく具体的ですが……」と話しはじめた野村さん。まずは銭湯について、上野の「燕湯」、巣鴨の「稲荷湯」、“キング・オブ・銭湯”といわれる北千住の「大黒湯」、三軒茶屋のハードコアな「千代の湯」などを、スライドで次々と紹介していきます。
銭湯が大好きな祝茉莉(しゅく・まり)さんというアイドルがいたり、「東京銭湯」というウェブサイトがあったり、「銭湯を盛り上げたい」という気運を感じます。もちろん私も大好きでよく行っています。なぜ銭湯がいいと感じるのかを考えてみると、自分にとっては非日常だからなのかなって。街なかに昔のままごく普通に残っているし、ふだん付き合っている人とは違う人に出会える。毎日の見え方が、少し変わるんです。それと、銭湯は孤独を磨ける場所だとも思います。SNSではたくさんの人とつながっているけれど、銭湯に行けば裸一貫、初対面のおばちゃんと話したりするわけで、それによって自分を客観的に見つめることができる。個人の時間を濃くすることが自信にもつながるし、みんなと過ごす時間がより楽しくなるんです。
2つ目のキーワード「手芸」の魅力は、「芝崎さんが言っていた『塗り絵』と近いかもしれませんが、集中するので無心になれるし、ふだん使わない指を使うので肉体的にもエキサイティング」なところ。最近では、編み手にオーダーするか自分で編むかを選べるロンドンのウェブサイト「WOOL AND THE GANG」、「ほぼ日刊イトイ新聞」から生まれた「気仙沼ニッティング」、クラークソン瑠璃さんの刺繍キットなども人気を集めているそうです。
そして最後は、「俳句と詩」について。又吉直樹さんと堀本裕樹さんによる『芸人と俳人』という書籍やメールマガジン、著名人が俳句を持ち寄り批評し合う公開句会「東京マッハ」、ラップでバトルするテレビ番組「フリースタイルダンジョン」などなど、こちらもさまざまな旬のトピックが。
俳句や詩って、形式自体が日常とかけ離れていますよね。最初はとっつきにくいと感じますが、触れることで考え方が変わることがある、いわば「日常からすっと離れるスイッチ」みたいなものだと思うんです。詩って、心を動かされたときにふとわき上がってきた、その人だけの言葉。私自身も、そういう言葉を大事にしたいし、もしかするとその言葉は、今ではなく、未来に必要になる言葉かもしれないって。