2018.3.24
Report 1/3

私とお米と佐渡島

講師:相田忠明(佐渡相田ライスファーミング)

地域の新しい魅力を発信するプロジェクト「旅ルミネ」。その第一弾は「佐渡」、3月23・24日にはニュウマン新宿5階のルミネゼロで「旅ルミネmeets佐渡島」が開催されました。今回のCLASS ROOMはこのイベント内で特別講座として3月24日に開催。佐渡島で米づくりを行う相田忠明さんが、こだわりの農法や佐渡の文化について語りました。講座の合間には、相田さんのつくったお米を使用したおむすびの試食も。その様子をどうぞ。

家族7人、みんなで協力して米づくり

相田さんが米づくりを行うのは、佐渡島の中央、国中平野にある1ヘクタールを超える大きな水田。そこにはトキが何百羽も群れていて、朝はいつも飛び立つのを待ってから農作業を始めるそう。

窓を開けるとトキが飛んでいる、というのが日常的な光景です。私は大学進学と同時に佐渡を離れて、以前はゼネコンで30億円以上のお金を動かすような仕事をしていました。家庭の事情で戻ってきて、父の農業を本格的に継いだのは8年前になります。よくスーツ姿で人前に出るので、「本当に農作業をしているの?」と聞かれますが、家族7人、三世代の家族経営でちゃんとお米を育てています(笑)。

2013年、相田さんは事業を法人化。農業のことを人に説明する機会が増えるにつれ、田と畑の違いを知らない、白米と玄米を別種だと勘違いしているなど、意外とお米についてよく知られていないという現実を目の当たりにします。そこで相田さんは稲作の1年間の流れを記録した動画を自主制作。講座はその映像を流しながら進みました。

まず春に種籾を水につけ、ビニールハウスで25日間かけて苗を育てます。それを田植え機で田んぼに植えて、9月に稲刈り。この稲刈りが本当に楽しくて、小学6年生の息子も「刈りたい、刈りたい」と言って手伝ってくれます。ちゃんとアルバイト代や給与明細も渡しているんです(笑)。冬は精米をして、来年の計画を練り直す。これが大まかな1年の流れになります。田植えと稲刈りの時期には、お弁当を田んぼに持っていって家族で食べるのが相田家恒例のイベントです。

「相田家産佐渡スーパーコシヒカリ」の秘密

相田さんのつくるお米「相田家産佐渡スーパーコシヒカリ」はさまざまな賞を受賞。それをきっかけに、メディアからの取材や都内でのイベント出店が増え、徐々にブランド米として知られるように。つくり方のこだわりとは。

佐渡産の牡蠣殻を使っての水質改善や、牛糞などの有機肥料を使った米づくりが特徴です。有機肥料を使うと虫がつきやすいのですが、特殊な機械を使ってきれいに取り除いています。農法は毎年改良を加えていますが、一番大切なのは日々の管理。水回りを朝昼晩チェックしたり、田んぼの生き物を調査したり。目立たないけれど、そういった毎日の作業が重要なんです。

日本人の主食としてお米は親しまれていますが、パンやパスタなどの選択肢が増えたことで、国内での消費量は減少し続けています。そこで余った米を家畜に食べさせる、肥料にするという選択肢もありますが、「やっぱり人に食べてもらいたい」と相田さんは海外進出に踏み出しました。

香港のお寿司屋さんでもうちのお米を扱ってもらっています。ただ、最近はアジアに進出するお米農家さんも増えて、残念ながら足の引っ張り合いもあったりする。そういうのがわずらわしくて、去年、思い切ってニューヨークへ。現地の日本食レストランで佐渡の伝承芸能「鬼太鼓」を披露しつつ、売り込みをしてきました。人脈ゼロの状態でしたが、評価していただいて、地元の大学にも呼ばれたんです。

鬼太鼓を通じて、佐渡と世界をつなぎたい

鬼太鼓は、無病息災と五穀豊穣を願って、集落の1軒1軒をまわり玄関先で太鼓を打つ「門付け」というスタイルで行われます。江戸時代から続くこのお祭りと米づくりのあいだに、明確なつながりがあると相田さんは話します。

祭りが行われる時期と、稲作で手が空く時期がちょうど重なるんです。そのことに気付いたのは農業を始めてからですね。佐渡には集落ごとに、全部で126団体の鬼太鼓の団体があります。それぞれに地域性があって独自に伝承されてきたため、衣装や踊りのスタイルはさまざま。時代ごとに常に変化してきた芸能です。

今年2月には、ミュンヘン、ミラノ、パリを回って鬼太鼓のワールドツアーを敢行。イベントは大盛況で、相田さんは「鬼太鼓が世界で通じる」と自信を深めたといいます。地下鉄で移動しているときも、「Cool!」と写真を撮られることも。

400年以上前の人が、今でも世界で通じるものをつくったということがすごいですよね。鬼太鼓という芸能を通じて、佐渡のことを世界の人に知ってもらいたい。鬼太鼓に限らず、昔から続いてきたものを次世代に引き継ぐことに責任を感じています。そういった文化や風習が、佐渡という“ふるさと”をつくっている。いろんなものを現代までつなぎ続けてくれた先人に、とても感謝しているんです。

>>交流会の様子はこちら

相田忠明(佐渡相田ライスファーミング)

新潟県佐渡出身。大学進学時に佐渡を出て、卒業後は新潟のゼネコンへ就職。結婚後、市役所のエンジニアとして佐渡へUターン。2010年から本格的に米作りに加わって事業を引き継ぎ、2013年に『株式会社佐渡相田ライスファーミング』を設立。自らを「稲職人」と呼び、親子2代、家族7人で米作りを行っている。

TOPへ戻る