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漢方は、無理せず心地よく過ごすための「生活のお守り」

2021.10.27

CLASS ROOMは、ルミネが運営する暮らしをもっと楽しむためのカルチャースクール。さまざまなジャンルで活躍するゲストを招いてお話を伺い、ルミネマガジンとYouTubeルミネ公式チャンネルで配信しています。
2021年10月講座では、台湾発の漢方のライフスタイルブランド「DAYLILY」の代表兼CEO、小林百絵さんをゲストに迎えました。漢方は特別な薬ではなく、暮らしの一部。そんな台湾のカルチャーに魅了されたという小林さんに、心地よさを大切にする漢方とのつきあい方について伺いました。

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女性たちの体温と気分を上げたい

―DAYLILYを立ち上げたきっかけを教えてください。

大学院に通っていたときに、台湾人女性の王怡婷(Eri)と知り合いました。両親が台湾で漢方薬局を営んでいる彼女から漢方の話を聞き、深く興味を持ったことがきっかけです。その後、EriとふたりでDAYLILYを立ち上げました。


―台湾漢方のどういったところにご興味を持ったのでしょうか?

日本だと「漢方=薬」というイメージが強いかと思うのですが、台湾ではまったくそうではありませんでした。生活のなかに溶け込んでいて、ライフスタイルのひとつとして取り入れられていることを、彼女の話を通して知ったんです。そこにすごく興味を引かれましたし、うらやましいなと感じました。


―台湾では漢方は体調を崩したときにとるものではなく、食事をとったり、お茶を飲むような感覚なのですね。DAYLILYのコンセプトについても教えてください。

私たちは日本やアジアの女性たちをはじめ、たくさんの方々に台湾の漢方のライフスタイルを伝えたいと考えています。漢方をもっと身近に取り入れてもらえるようなことをしていき、それによって、女性たちの体温と気分を上げていけるようなブランドになりたいです。


―パッケージもとてもかわいらしいですね。

特に日本人の女性にとって漢方は生活から少し遠い存在というか、ハードルが高いと感じる方もいるので、「デザインがかわいいな」「部屋に置きたい」といったところから興味を持っていただけるといいなと。デザインもコンセプトも、自分の生活に取り入れたいと感じてもらいたいという思いのもとに生まれています。

美しいデザインが目を引くDAYLILYの商品。漢方のお茶や食材、コスメなど幅広い。

台湾に根づく漢方カルチャー

―台湾では、具体的にどういった形で漢方カルチャーが根づいているのですか?

台湾の街にはたくさんの漢方薬局があります。日本でいうとスーパーやコンビニのようなイメージでしょうか。食材として漢方を買ったりもしますし、夜市にも漢方スープのお店や漢方デザートのお店が多くあるので、台湾の人々は体調が悪くなくても日々気軽に漢方をとっているんです。


―台湾の方は、なぜそんなふうに日常に漢方を取り入れるようになったのでしょうか。

日本では西洋医学が主流なこともあり、身体が悪くなってから薬でそれを解決するという方法がスタンダードになっているのですが、台湾ですと西洋医学よりも東洋医学のほうが根づいているので、悪くなる前から身体を整えていくという意識が強いのだと思います。

台湾の人たちを見ていると、自分の身体のことをすごくよく知っていますし、自分の状態を日々把握しながら無理なく生活している印象がすごくあって。そこは、日本人がまだできていないところだなと感じました。


―「無理なく」というのはひとつポイントになりそうですね。

お店をやっているなかで、日本人の方によく「漢方って続けなきゃいけないんでしょ?」と言われます。続けないと効果が出ないというイメージが強いかと思うのですが、決してそういうものではなく、「自分の身体が必要としているときに取り入れる」ぐらいがちょうどいいと思っています。

続けなきゃいけないと思うと心に負担がかかってしまうので、「自分の心と身体が気持ちよくなるために取り入れる」、そういう心持ちで始めてみていただけたら。もちろん、自分の身体や生活に合っているなと感じるようであれば、気持ちのいい範囲で続けていただきたいですね。

台湾の漢方専門店に並ぶさまざまな種類の漢方。

大事なのは、自分の心と身体に正直でいること

―小林さんがおすすめする漢方の取り入れ方は?

実は私、もともとなにかを続けることがすごく苦手なんです。そんな私の習慣になっているくらい手軽なのが、朝に白湯を飲むこと。漢方の世界では、白湯はお薬の代わりになるほど身体にいいと言われているんです。お湯を沸かして熱すぎない温度まで冷まし、ゆっくり飲むのがいいですね。でもそれも、身体にいいからというよりは、単純に身体が気持ちよくなるから続けていることだったりします。


―やはり、「身体のコンディションをよくするにはこうでなきゃいけない」とハードルを上げすぎないことが大事なんですね。

おっしゃる通りです。漢方を始めることに対するハードルがもっと下がっていくといいなと思うので、白湯のようにちょっとしたことから始めてみていただけたら。それも、「続けなきゃいけない」とは思わずに、自分の心と身体のために気持ちいいことだけを選んで取り入れていくのがいいのではないでしょうか。大事なのは、自分の心と身体に正直でいることです。


―漢方の考え方は、最近よく聞くようになった「ウェルビーイング」にもつながりそうですね。

台湾の人にとって、漢方は生活のお守りのような存在なんですよね。そういう存在があることって、すごくヘルシーだなって。漢方にかぎらず、生活のお守りになるようなもの、頼れるもの、拠りどころになるものがあると強くいられる。言い換えると、それはすごくウェルビーイングな状態だなと思います。


―小林さんご自身が、ウェルビーイングな暮らしを保つために心がけていることはありますか?

私は以前広告代理店で働いていたのですが、そのときに、自分の心と身体が気持ちいいことを素直に選べなかったり、いろんなものに縛られてしまったり……なんだか、ヘルシーじゃないなと思ってしまったことがありました。だからこそ今、DAYLILYを経営するなかでは、私もスタッフのみんなも気持ちがいい状態を一緒につくっていけたらいいなと思っているんです。

周りの人も含めてとなると、自分ひとりをケアするより難しくなってしまうかもしれないのですが、日常的に接している人たちが心地いいほうが自分も心地よくいられるものですよね。


―そういったことを心がけるようになって、小林さんのなかでなにか変化はありましたか?

無理をしなくなったなというのは、すごく思っています。共同創業者のEriと、「無理をしない」と口癖のようによく言っていて、そうしたらだんだんと心も身体も楽になりました。


―将来のためになにかを犠牲にするのではなく、今を大切にするようになったという。

そうですね。もちろん長期的な視点で「こうありたいな」ということは考えつつも、そのために今を犠牲にするのではなく、まずは今を気持ちよく生きる、楽しくいることが、その先にもつながっていくと思います。

DAYLILY 誠品生活日本橋店。

しなやかに生きるための拠りどころ

―漢方があることによって、日々の暮らしはどのように豊かになっていくと考えますか?

繰り返しになってしまいますが、なにか軸になるものや拠りどころになるものがあると、誰しもがしなやかに生きていけるのではないかと感じています。それは時期によって変わってもいいのですが、そのなかでも変わらないもの、常に自分の生活のそばにいてくれるものがあると、すごく心強いですよね。漢方はアジア人の身体にとても合っていて、無理せず取り入れられるので、そういう存在になり得るものだと思います。


―先ほどおっしゃっていた「生活のお守り」という表現もとても素敵だなと思いました。

生きていると、どうしても社会の構造や価値観に縛られてしまうことがあります。それを一度解放して自由になり、自分の頼れるものと生きていくようなことが、心地よい生き方につながると思っています。誰かの考えにとらわれることなく、一人ひとりがそんなふうになれるといいですよね。


―そうですね。漢方もいろいろな種類や効能があるので選ぶのもおもしろそうです。

もちろんDAYLILYのお店にいらっしゃったら、スタッフがお悩みを聞いたりしながらその方に合ったものを一緒に選んだりもできるので、友達に相談しに行くような気持ちでぜひお越しいただけるとうれしいです。


―最後に、小林さんにとってよい暮らしとは?

やはり、私と私の周りの人たちみんなが、自由に楽しくいられることでしょうか。自分の心と身体が必要としていること、気持ちよくなれることを素直に選べる状態は、すごく豊かでヘルシーだと思います。

小林百絵さんおすすめの、暮らしをもっと楽しくしてくれる一冊

『オードリー・タン 自由への手紙』協力:オードリー・タン、構成:クーリエ・ジャポン編集チーム(講談社)
「DAYLILYのルーツは台湾にあります。今の仕事を始めてから頻繁に台湾に行くようになり、台湾の人たちの暮らしを見ていると、とても自由で、伸びやかで、なんて気持ちよさそうなんだろうと感じました。
この本を読むと、既存のルールや常識から解放され自由になることや、自分だけでなくまわりの人も解放し、自由にするヒントがたくさん書かれていて、読むだけでも気持ちよくなれますし、自分の生活にも取り入れてみようと思えます」

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<プロフィール>

小林百絵(「DAYLILY」代表兼CEO)
1992年、北海道生まれ。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科修士課程修了後、広告代理店に入社。退社後の2018年、共同創業者の王怡婷(Eri)とともに台北で漢方のライフスタイルブランド「DAYLILY」を始める。現在は台北に1店舗、日本国内に5店舗を運営。
https://daylily.com.tw/


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