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ジェンダーギャップに多様性。いつの時代も最先端を行く、バービードールの世界

2023.07.20

バービードールといえば、「子どものころ、大好きだった」「懐かしい!」という人も多いはず。バービーが誕生した背景には、「性別にかかわらず、誰もが自分の可能性を広げられるように」との願いが込められていることをご存じでしたか? 今回は現代の私たちが直面している課題に早くから声を上げてきた、バービーの世界にフォーカスします。

かつては玩具にもジェンダーギャップがあった!?

世界中の子どもたちはもちろん、幅広い世代に人気のバービー。なかにはグッズを集めている大人の女性や、親子3世代ファンというファミリーも。8月には実写映画『バービー』が公開されるとあって、ますます注目度が高まっている。

バービーといえば、ファッションアイコンという印象やイメージカラーのピンクが思い浮かぶけれど、実は、単に可愛いだけの玩具ではない。ジェンダー平等や多様性を表現し、未来を担う子どもたちをエンパワーメントするメッセージを発信し続ける、時代の先駆者でもあるのだ。

バービーがデビューしたのは1959年。のちにバービーを発明することになる女性、ルース・ハンドラーは、夫らとともに 玩具メーカー「マテル社」を経営していた。そのころ、女の子向けの人形といえば、赤ちゃん人形が主流。母親や病気の人の世話をする人になりきって、抱っこしたりあやしたりして遊ぶものがほとんど。

しかし、自身の娘が紙人形を使い、お世話遊びに夢中になっている姿を見たルースは、「男の子向けには消防士や宇宙飛行士など、憧れの職業になりきれる玩具があるのに、女の子には選択肢がないなんておかしい」と考えるように。女の子が遊びながら自分の将来像を夢見ることができる、そんな人形を作ろうと決めたのだった。

左から消防士、科学者、宇宙飛行士のバービー。累計250以上というさまざまな職業のドールには、「You Can Be Anything(あなたは何にだってなれる)」というメッセージが込められている

義足や脱毛症のバービーも登場

ルースはマテル社の役員や営業マンたちを説得し、1959年3月、ニューヨークで開かれた玩具の展示会で最初のバービーをデビューさせた。赤ちゃん人形とは体形も服装も違うバービーをバイヤーたちは疑問に思っていたが、すぐにアメリカ中の女の子たちが飛びついて、記録的な売り上げをたたき出した。まもなく、世界中に旋風を巻き起こしていく。

その後もバービーは、自らモダンな家を購入したり、人類が月面着陸するより前に宇宙飛行士になったり、1992年以降はアメリカ大統領にほぼ毎回立候補したりと、「You Can Be Anything(あなたは何にだってなれる)」を体現。また、1960年代には、性差や肌の色の違いで差別が起きないようにとバービーの友達として肌の色が褐色でショートヘアのドールが登場し、1980年には黒人やヒスパニックの“バービー”がデビュー。近年はふくよかなバービー、背の低いバービー、長身のバービーなども加わり、多様性の大切さを表現し続けている。

「肌の色や髪の色、体形など、それぞれ異なる特徴を持つバービーなどがそろう『バービー ファッショニスタ』は人気のシリーズ。過去には義足や脱毛症のバービーも発売しました。美の多様性や個性を認めることの大切さを表現したもので、子どもたちは先入観なくフラットなのでどのドールも平等に見てくれますし、当事者の方々も喜んでくださっています」(マテル・インターナショナル マーケティング部 バービー担当の小林美穂さん、以下同)

いずれも仕様はかなり精巧。例えば、レインボーチェックのロンパースとパープルの車いすが印象的なバービーの場合、車いすは専門家の協力のもとに本物仕様をハイレベルで再現。ドールは22点の可動式で、タイヤを動かす操作も楽しめる。

「現在は、ドールハウスなどの建物もバリアフリーに設計。付属のスロープを使えば車いすでも家に入れて、エレベーターで移動することができたりと、他のドールと遊べるように配慮しています」

「バービー ファッショニスタ」シリーズ。右が「バービー ファッショニスタ カラフルロンパース くるまいすつき」

夢を実現した女性たちの声を勇気の源に

バービーが誕生当初から掲げるメッセージは「You Can Be Anything(あなたは何にだってなれる)」。これまで250以上にのぼる「なりたい職業」をかなえてきたバービーを通して、性別や人種、体形を問わず、誰もが自分の可能性を自由に広げていける、ということを伝え続けている。

近年は、世界中の女性にインスピレーションを与え続ける女性のロールモデルに敬意を表し、彼女たちをモデルにした世界でたった1体のバービーをプレゼント。日本ではこれまで、黒柳徹子さん、プロテニスプレーヤーの大坂なおみさん、写真家で映画監督の蜷川実花さんなどが選出された。またマテル社が運営する「バービーロールモデルインタビューサイト」 では、彼女たちをはじめ、夢をかなえた女性たちのインタビューを紹介している。

「お子さまたちが将来の夢を抱くには、まず、世の中にはこういう職業があるんだよ、ということを知ることが大切です。ロールモデルとして活躍する女性たちがどうやって夢に出会い、実現したのか。彼女たちのリアルな言葉には、子どもはもちろん大人の女性も元気づけられます」

7月20日〜8月31日の期間中はルミネエスト新宿のウインドウ にて、8月11日公開の映画『バービー』とのコラボレーション企画として、絵描きのイズミダ リーさんとフラワーアーティストの密林東京(鈴木明子)さんによる「You Can Be Anything」をテーマにした作品が展示され、あわせて、2人がなぜ今の職業を選んだのかというメッセージビデオも流れる予定だ。

海洋プラスチックの再生素材も使われているファッションパックシリーズ。多様性やジェンダーの機会均等のみならず、環境問題にも取り組む

「女性はこうあるべき」という無意識の壁を壊す

さらには、「ドリーム・ギャップ」をなくしていくプロジェクトにも注力。女の子は5歳くらいになると夢と現実の差を意識してしまい、女性である自分が何かを成し遂げるには限界があると諦めてしまう「ドリーム・ギャップ」が生まれる傾向があるという。

社会に潜む「女性はこうあるべき」といったジェンダーの壁をなくすために、動画によるメッセージを配信するほか、ジェンダーとキャリアの関係に対してどう考えているか、親子それぞれ意識を調査するなどの取り組みを行っている。

「日本でもジェンダー問題に対する意識がここ数年で急激に高まってきた影響で、バービーが発信し続けているメッセージにも注目が集まるようになってきました。とはいえ、私たちが国内で実施した調査では、ドリーム・ギャップを自分ごととして受けとめていない大人もまだまだ多い。バービーをきっかけに将来の夢やよりよい社会について親子間や友人どうしで自然と会話が生まれる、そんなシチュエーションが増えていくことを目指して、これからも動き続けていきます」(小林さん)

バービーが発信するメッセージは、次世代の子どもたちに夢を与えると同時に、私たちがいくつになっても、どんな立場であっても、勇気とパワーをもたらしてくれるもの。大人になった今、あらためてバービーの世界に向き合ってみると、私たち一人ひとりがこれからの時代を自分らしく生きていくためのヒントが見つかるかもしれない。

マテル・インターナショナル アソシエイトマーケティングマネージャー 小林美穂さん

■マテル・インターナショナル
https://mattel.co.jp/toys/barbie/

※本記事は2023年7月20日に『telling,』に掲載された記事を再編集しております。
※情報は記事公開時点のもので、変更になることがございます。

Text: Kaori Shimura, Photograph: Takehiro Goto, Edit: Sayuri Kobayashi

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