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きょうは本屋に寄って帰ろう/Vol.10(選者:小谷実由さん)

2024.03.21

本を愛するあの人が、ルミネのシーズンテーマを切り口におすすめの本を紹介するこの企画。今回はモデルの小谷実由さんに、「Charging Creativity - クリエイティブの扉を開く」というキーワードから思い浮かぶ本を挙げてもらいました。
さまざまなクリエイティブに触れると、眠っていた感覚が刺激されてなにかについて考え始め、そのなかに自分の新しい「好き」を発見できるかもしれません。そのことが、まだ見ぬ世界へと飛び立つ勇気をくれるはずです。

『いいビルの写真集 WEST』著:BMC(パイインターナショナル)

「初めて見るはずなのに、どこか懐かしさがある。自分の記憶の中の何かとなんだか繋がっているような感覚に襲われるデザインのビルたちは、街中に息を潜めながらも堂々とそびえ立っている。このビルに出会わなければもう掘り起こされないままになってしまう記憶もあったかもしれない。

いわゆる高度経済成長期と言われる1950年代半ばから1970代のはじめにかけ建てられた“いい”ビルたちを外観から内装、調度品までをBMC(ビルマニアカフェ)の人々が愛を持って解説してくれる一冊。自分が子供時代や青春時代を過ごしたわけでもないのに、これらを眺めているときのこの懐かしくて心がギュッとなる気持ちはなんだろう。あなたの日々の生活を送るなかではあまり出会えない感情や好奇心がこのビルたちの中には詰まっているかもしれない」

『いつも旅のなか』著:角田光代(KADOKAWA)

「『いつか世界中を旅してみたい』そんな風に考えることがある。でも、思っているだけでいろんな理由や事情で難しいことだと感じてしまう。それならば、誰かの旅を覗いてみるのはどうだろう。誰かの旅行記はガイドブックとは違う、まるでそこに自分も一緒に行ったような気持ちにさせてくれる。

小説家の角田光代さんがモロッコやマレーシア、アイルランド、スペインなど世界を縦横無尽に旅していく際に起こった出来事を綴る一冊。みんなが知っているような観光地はあまり出てこないけど、その土地での人々との交流風景がとても鮮やかで、まるで角田さんの隣に同乗している気持ちになり、焦ったり驚いたり笑ったりできる。感情が動くと、今まで自分がいたところとは違う場所に一歩足を踏み出せた気持ちになる。私はこの体験を知っているから、と思うと難しいなと感じることもいくつか減った気持ちになる気がする」

『朝、空が見えます』著:東直子(ナナロク社)

「空はどんなことがあってもいつも自分の側に存在している。どんな場所に行こうとも、いつも同じ場所にある。でも、当たり前の存在過ぎてあまりこの事実に気付くことができない。日々を大切に多感に過ごしたいのに、毎日はあっという間に過ぎていく。どこかで息をスーッと吸うように立ち止まりたい。

歌人の東直子さんは、365日早朝の空を眺めながら詩を綴った。いつ何時も側に存在している空だけど、そこから受け取る印象は様々。『壁紙にしたいようなかわいい空です。』『遠い旅人が眠る、清潔なシーツのような空です。』『「きれいに忘れる」のきれいの使い方っていいかも、と思えるきれいな空です。』まるで空と対話をしているような穏やかな時間。こんな風に日常生活でいつも見ている景色と自分も対話してみたいと、これからの見慣れた景色を変えてくれそうなドキドキを与えてくれる一冊」


小谷実由
ファッション誌やカタログ・広告を中心に、モデル業や執筆業で活躍。一方で、さまざまな作家やクリエイターたちとの企画にも取り組む。猫と純喫茶をこよなく愛する。愛称はおみゆ。著書にエッセイ集『隙間時間』(ループ舎)。J-WAVE original podcast「おみゆの好き蒐集倶楽部」のナビゲーターを務める。
https://www.instagram.com/omiyuno/


※該当書籍の取り扱いは各店舗へお問い合わせください


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