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「知らないだけで実は持っていた」力を出し切り、得られる疲労感と充足感

2024.05.07

「This is my “b”side.」というコンセプトで、未だ見ぬ自分を探る2024年のニュウマンのシーズンビジュアル。シーズンごとに違う自分を見つけ出すインスピレーションの源となるような、ニュウマンからのメッセージが込められています。この夏は、自分のなかに眠る力を解き放ち、これまでにない自分に出会ってみたくなる。そんな気持ちを刺激されるビジュアルになりました。シリーズを通して制作を担当する、SIMONEのクリエイティブディレクター・渡辺琢磨さんに、今回のテーマや撮影時のエピソードを聞きました。

リミッターを外し、今とは違う自分に出会う

2024年夏のシーズンビジュアルのテーマは「叫ぶ、パンクス」。静かな内なるエネルギーに満ちていた春のビジュアルから一転し、目に飛び込んでくる鮮やかな赤い空間と、菊地凛子さんの野性を感じる力強い視線が印象的です。「春との違いも意識した」という渡辺さんは、今回のテーマについて次のように話しました。

「コンセプトである『This is my “b”side.』に沿って、1年を通して4つのシーズンでそれぞれ違う“意外な一面”を見せていくという狙いがあります。このシリーズは凛子さんも積極的にクリエイティブに参加してくださり、話をするなかで、身体を動かし発散するような動的なパフォーマンスもやってみたいという意見をいただいたんです。今回はそれが、僕らが考えていた音楽をテーマにしたものと合致したので、そこをベースに方向性を決めていきました。

夏なので開放感がありパワーを感じるもの、インパクトがあり直感的に受け取りやすいものということで“パンク”というジャンルで表現しています。凛子さんのイメージとのギャップも、“b side”としてとても良い効果を生むと思いました」

思い切り叫ぶという非日常的なアクションが、自分のなかにある潜在的な力を引き出す。そんなふうに、誰しもがきっかけしだいでリミッターを外し、自分でも気づいていない内に秘めたパワーを爆発させることができるというメッセージが込められています。

湧きあがるエネルギーを解き放ち、満たされる

深く激しいエネルギーを感じる真っ赤な空間で、全身を使ってマイクに感情をぶつける菊地凛子さん。ムービーでは凛子さんの叫ぶ声は聞こえませんが、聞こえないはずの声が視覚を通じてダイレクトに飛び込んでくるような、そんな感覚を覚えます。

「大きな声を振り絞り、自分の気持ちを外に出す。感情を爆発させ発散させるということが、まず表現したいことでした。ムービーは、すべてを出し切ったあとに尽き果てて横たわっているカットで終わります。それは全力を出し切ったあとの清々しい充足感で満たされた主人公の姿です。エネルギーを思う存分発散し、静寂のなかで自分の心臓の音が満足そうに鼓動している。今回は解放し発散するだけでなく、そのあとに得られる気持ちよさや自分への影響まで表現したかったんです」と渡辺さん。

その動的なエネルギーの発散や内なるパワーの覚醒は、スチールのビジュアルでも同様に強く印象づけられていました。赤という象徴的な色彩の世界で存在感を放つ菊地さんの佇まいや「This is my “b”side.」の真っ赤なコピーが、そこにあるストーリーを感じさせ、想像が掻き立てられます。

身体を動かし五感を信じて見つけたくなる自分だけの“b side”

今回のビジュアルでも、撮影カットのバランスやアングル、菊地さんのスタイリングやポージングなど、かなり細部まで意識しコントロールしたという渡辺さん。そこには勢いと激しさのなかにしっかりとニュウマンのメッセージを込めたクリエイティブにするという、制作チームの強い想いがありました。

「単純に“かっこいいミュージックビデオ”という印象にならないよう、ニュウマンのビジュアルとしてのスタイリッシュさや感度と、音楽のステージやパンクスというテーマのバランスをかなり吟味しながらつくりました。撮影自体も、これまでのシーズンビジュアルでいちばん時間がかかったかもしれません。たとえば赤の色味をどれくらいにするか、ライティングのバランスをどうするか、マイクの持ち方をどうするかなど、細かいところまでスタッフで意見を出し合い慎重に調整しました」

真っ赤な世界に時折挟み込まれるイメージは、自分の内面を反映したものなのか、夢の世界なのか。一瞬の視覚のブレが記憶や感情を揺さぶります。そこに春とはまったく違う表現の仕方で、全く別の“b side”を見せる菊地さんの存在があることで、ニュウマンらしさやそのファッション性をしっかりと織り込んだビジュアルが完成しました。

制作チームが一丸となって形にした、2024年夏のシーズンビジュアル。その熱量がそのまま伝わるような、インパクトのあるビジュアルです。「フィジカルな体験のきっかけになれば」と渡辺さんはいいます。

「全力を出すことは気持ちいいんだということを、見た人にあらためて感じてもらえるとうれしいです。この数年は世の中の動きとともに新しいテクノロジーを取り入れたり、自分の内面にフォーカスすることも多かったと思います。だからこそ、もっとシンプルに自分自身の五感を信じて、身体を動かし心へフィードバックすることを大切にしたい。自分のなかに蓄えたパワーや欲求をしっかり発散して、そのあとの“筋肉痛”を楽しんでみてほしいです」
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Creative Director:Takuma Watanabe(SIMONE INC.)
Art Director:Mayuko Ishida(SIMONE INC.)
Movie Director:Ayano Kamiyama(SIMONE INC.)
Producer:Fumika Ochi(SIMONE INC.)
Production Manager:Haruka Tokoi(SIMONE INC.)

Actress:Rinko Kikuchi
Photographer/DOP:Mitsuo Okamoto
Cinematographer:Daisuke Abe(bird and insect)
Gaffer:Hirotsugu Hamada(bird and insect)
Stylist:Shotaro Yamaguchi(eightpeace)
Hair:Yusuke Morioka(eightpeace)
Make up:Asami Taguchi(home agency)
Set Designer:Yuichi Ishida(R.mond inc.)
Retouch:VITA INC.


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