LUMINE MAGAZINE

SCROLL

LIFESTYLE

 

きょうは本屋に寄って帰ろう/Vol.14(選者:木村綾子さん)

2024.08.07

本を愛するあの人が、ルミネのシーズンテーマを切り口におすすめの本を紹介するこの企画。今回は「Culture Remix -個性あふれる世界」をテーマとして、オンライン書店&出版社「COTOGOTOBOOKS(コトゴトブックス)」の代表であり、文筆家でもある木村綾子さんが3冊をセレクトしました。
昔からあるテキスタイルと、トレンドのファッションをミックスしてみる。その土地に伝わる風習や食、おまじないなど、古の文化をクリエイティブな視点で捉え直してみる。そうすることで、長く愛されてきたものが新しいときめきをくれます。それぞれの個性が混ざり合っていくことで、世界はもっとおもしろく広がっていくはずです。

『チープ・シック』著:カテリーヌ・ミリネア/キャロル・トロイ、訳:片岡義男(草思社)

いまからもう50年近く前に書かれた本なのに、まったく古びず、むしろ開くたびに新鮮な刺激をもらえるのは、ここで紹介されているのが単なる「着こなし」ではなくて、「生き方」だからだと思うのです。

ベーシック、クラシック、アンティーク。スポーツ・ウェアに民族衣装。自分の体と一枚の布地との関係。自分がなにを着れば本当の自分になれるのか…。
300枚もの実例写真と、イヴ・サンローランやベッツィー・ジョンソン、写真家、アートディレクターへのインタビューを交えつつファッションの本質に迫っていく構成にも惹きつけられます。

〈あなたの服装は、あなたが自分でえらびとっている自分自身の生き方にぴったりそったものであるべきなのです。〉

50年前の言葉が鮮度を保ったままいまの時代に響きます。

『TOKYO STYLE』著:都築響一(筑摩書房)

人間が創造する本当の豊かさには、インターネットを検索してもそう簡単にアクセスできないんじゃないか。家ほどに、住む人の本質があらわれ、隠そうとしても滲み出てしまう空間はないんじゃないか。この本のなかから漂ってくる気配が、そのことを突きつけてきます。

本書は、1990年前後に東京で暮らしていた人たちのリアルな居住空間を、編集者の都築響一さんが記録した写真集。いわゆる映えとは程遠いけれど、主によって最も使いやすいように工夫され整序された賃貸宇宙がどこまでも広がっています。

〈マスコミが垂れ流す美しき日本空間のイメージで、なにも知らない外国人を騙すのはもうやめにしよう。〉

テクノロジーもポストモダンもワビサビも関係ない、単なる普通の東京人がいったいどんな空間に暮らしているのかに接続できる一冊です。

『アウトサイド・ジャパン 日本のアウトサイダー・アート』著:櫛野展正(イースト・プレス)

アートって執念だよなぁ。櫛野展正さんが紹介するアウトサイダー・アーティストとその作品を知るたびに、いつも思わされます。

本書は、アウトサイダー・キュレーター櫛野さんが日本各地からアーティストを発掘して、そのアートとアーティストの人となりを紹介します。
2万匹以上の昆虫でつくられた千手観音像、家族をつなぐ壁新聞、極彩色の紳士、仮面だらけの謎の館、河川敷の草刈りアート、家一軒がまるごと作品になっている桃色御殿、ガムの包み紙の裏に描かれた絵…。
いわゆる美術の「正史」には残らない。他人には無意味に見えることかもしれない。でも、その人が生きるためには必要な表現活動であることが、どの表現からもこれでもかと伝わってくるのです。

世間の評価やお金からは切り離された世界で、信じるままに作る、生きる強さ。「いいね!」の数にとらわれない生き方と出会える一冊です。

木村綾子
1980年生まれ。静岡県浜松市出身。明治大学政治経済学部卒業後、中央大学大学院にて太宰治を研究。10代から雑誌の読者モデルとして活動。現在は文筆業の他、ブックディレクション、イベントプランナーとして数々のプロジェクトを手掛ける。著書に『いまさら入門 太宰治』(講談社)、『太宰治と歩く文学散歩』(角川書店)、『太宰治のお伽草紙』(源)など。
2021年よりオンライン書店「COTOGOTOBOOKS(コトゴトブックス)」を、2024年より同名で出版社を立ち上げる。一冊目の書籍は、町田康初歌集『くるぶし』。
https://www.instagram.com/kimura_ayako/
https://cotogotobooks.stores.jp/


※該当書籍の取り扱いは各店舗へお問い合わせください


===================
■あわせて読みたい
>> きょうは本屋に寄って帰ろう/Vol.13(選者:小谷実由さん)

■こちらもおすすめ
>> "IT’S NEW" WEEK 2024 AW

TOP