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どんな自分も自分。シリーズを締めくくる「芯のある女性像」を求めて

2024.10.03

「This is my “b”side.」というコンセプトで展開されてきた、2024年のニュウマンのシーズンビジュアル。春・夏・秋に続く今回は、シリーズのラストを飾るにふさわしい、力強さをたたえています。シリーズを通してクリエイティブディレクターを務めてきたSIMONEの渡辺琢磨さんに、コンセプトや込めた想いなどについて伺いました。

2024年春(上)、夏(左下)、秋(右下)のシーズンビジュアル。

シリーズの集大成として示した“答え”

女優・菊地凛子さんを起用した2024年のシーズンビジュアル。「This is my “b”side.」を共通のメッセージとして、春は「惑星の女王」、夏は「叫ぶ、パンクス」、秋は「モンスター」と、シーズンごとに違った「私」を表現してきました。
自分というものは常に多面的であるけれど、最後にどうするかを決めるのは“たったひとりの自分”。その本質に迫るために、渡辺さんは『私ならどうする?』『どうなりたい?』と想像力を掻き立てられるようなビジュアルを制作してきました。今回はそんなシリーズの総決算。方向性を決めるにあたっては、さまざまな議論を重ねたといいます。

「これまでの流れを踏襲し、また違った自分の一面=“b”sideを見せるのか、シリーズを締めるために“答え”をちゃんと提示してあげるべきなのかという議論がまずありました。
そのうえで、やっぱりシリーズを通じて根底にある、『これが私の一面であり、全部私だから、堂々と強くありたい』というメッセージを表現することが大事だと考えたんです。
これまでは割と非現実的な設定だったりしたのですが、今回は現実的なものをベースにして、しっかりと自分として成り立っている凛子さんを表現しようと考えました」

人間は誰しも、さまざまな面を持ちます。そしてときには「もしもこういう自分になったら」と空想してもいい。けれど、どんな「私」もやっぱり「私」。そんなメッセージに立ち返り、これまでに表現してきたいろいろな菊地さんを“全部ひっくるめて自分である”という答えに集約しようと考えた渡辺さん。「リアルに存在する凛子さんの、かっこよく強く、堂々と立っている姿を表現することで、シリーズがしっかりと完結するだろうと考えました」と続けました。

メッセージを際立たせるシンプルさ

1本の木を背に佇む菊地さんと、降り続ける雪。ごくシンプルなセットとシチュエーションは、ひとりの女性を取り巻くさまざまなものを示唆しています。

「雪は季節性だけでなく、現実の世界で絶え間なく降りかかってくる多様な外的要因を表しています。そんな逆境にも負けず、『これが私』と堂々と立っている凛子さんから、すべてを糧に自信へとつなげ、いちばん素敵な自分を想像しようというポジティブなメッセージを受け取ってほしいと考えました」

ムービーのカメラワークも、ワンカットでゆっくりとズームアウトしていくというとてもシンプルなもの。菊地さんの「私じゃない自分も、私。思い込みだって力になる。This is “me”. — 次はあなた」というセリフが際立ちます。「春・夏・秋では『This is my “b”side.』だったところを『This is “me”.』に変え、『これが私』だと言い切れた。いい終わり方ができたと思います」と渡辺さんは話しました。

衣装やメイクも、モノトーンを基調に、シンプルで力強さを感じるスタイリングになっています。「凛子さんの魅力を引き出すためにどういうスタイリングがマッチするかを考え、このジャケットスタイルに行きついた」と渡辺さんは話し、こう続けました。

「マスキュリン(男性的)だったり、クラシカルな要素が、みなさんが潜在的に持つ“強さ”のイメージに結びつくと考えました。センシュアルだったり柔らかい感じというよりは、ソリッドでフォーマル、かっちりとしている雰囲気。なので今回は、それを表現できるジャケットスタイルの衣装を選びました」

また、コートやグローブ、ストールはあえて着けず、“冬感”が強くならないように意識したという渡辺さん。「あくまでも凛子さんの女性像を際立たせることを重要視しました。ぬくぬくとして守られているような印象にはせず、逆境のなかでも力強く立っているということを強調したのもポイントです」と語りました。

撮影にはこれまでと同じチームで臨みました。「シンプルな画面だからこそ、あれこれと試していい方法をセレクトしていったというよりは、みんなでひとつのゴールにしっかりと向かっていった印象です。スタジオに凛子さんが立ったときのインパクトは想像以上でした」と渡辺さん。菊地さんの力強さをいかに引き出すかという目的をチーム全員で共有し、形にしていきました。

1年間の制作を振り返って

シリーズの完結となる今回のシーズンビジュアル。1年間を通した制作を振り返り、渡辺さんは「率直に、楽しかったです」と話しました。

「テーマは一貫しているものの、まったく違う4本になりました。凛子さんが持つ表現のバリエーションの豊かさには毎回新鮮におどろかされましたね。
メッセージとしては普遍的かもしれませんが、今回のシリーズではそれを大胆に拡大解釈し、『いろんな自分がいる』と極端に振り切って表現してきたわけなんですね。そのフィナーレとして、“自分らしさ”のような言葉よりもっと強い、どんな自分も肯定して讃えるような、『まわりがどう言おうが、自分は自分』と言い切れる自信を持つための後押しになれたらいいなと思います」

毎日いろんなことがあるけれど、自分の強さ、そして弱さも受け入れ、力に変えて、確固たる自分を持つこと。1年間をかけてまっすぐに発信したメッセージは、私たちに勇気を与えてくれます。

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Creative Director:Takuma Watanabe(SIMONE INC.)
Art Director:Mayuko Ishida(SIMONE INC.)
Movie Director:Ayano Kamiyama(SIMONE INC.)
Producer:Fumika Ochi(SIMONE INC.)
Production Manager:Haruka Tokoi(SIMONE INC.)

Actress:Rinko Kikuchi
Photographer/DOP:Mitsuo Okamoto
Cinematographer:Daisuke Abe(bird and insect)
Gaffer:Hirotsugu Hamada(bird and insect)
Stylist:Shotaro Yamaguchi(eightpeace)
Hair:Yusuke Morioka(eightpeace)
Make up:Asami Taguchi(home agency)
Set Designer:Yuichi Ishida(R.mond inc.)
Special Effects:GRIFFITH
Retouch:VITA INC.


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