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きょうは本屋に寄って帰ろう/Vol.17(選者:小谷実由さん)

2024.12.13

本を愛するあの人が、ルミネのシーズンテーマを切り口におすすめの本を紹介するこの企画。今回は「Borderless KAWAII -未知なるカワイイを探しに」をテーマに、モデルの小谷実由さんがセレクトしてくれました。
柔らかでやさしい、ほっこりして癒しをくれる。リアルでも、たとえばバーチャルな世界でも、「カワイイ」は自分の内に秘めた無邪気な感覚を呼び覚ましてくれます。いろんな「カワイイ」が詰まった3冊の本は新たな視点をもたらし、世界をぐっと広げてくれるかもしれません。

『マムアンとララちゃん』著:ウィスット・ポンニミット(宝島社)

猫と暮らす日々に、可愛いという言葉は欠かせない。何年も何度でもいつまでも投げかけ続けるであろうこの言葉。自分に密接に関係する猫と共に歩む日々には、さまざまな出来事がありさまざまな気付きがある。猫の教えてくれることってどれもこれも可愛い形をしているのに、その中で受け取らせてくれるものはとても大事なことばかり。どうして猫ってあんなに可愛くてクレバーなんだろう。

タイ・バンコク出身のマンガ家であるウィスット・ポンニミット。愛称はタムくん。彼もまた猫4匹と共に暮らしている。このマムアンちゃんと愛猫のララちゃんの物語は、何気ない日々の中にある、彼女たちふたりの、それぞれの、気づきの瞬間が詰まった一冊。猫と暮らす人は自分と自分の猫を重ねて、猫じゃなくても自分と自分の大切な人を重ねて。難しいことを考え過ぎるのはやめて、日々をシンプルに、ふわふわと浮かぶような心の軽さで見ることができる気がする。

『ぼくの ポーポが こいを した』作:村田沙耶香、絵:米増由香、編:瀧井朝世(岩崎書店)

自分の大事なものと、自分の大事な人が大事な関係になってしまった。そこに自分の入る隙間はあるだろうか? それでも二人が同じ大事な気持ちを持っているのなら、それを側で見れるならまぁいいか。とても変だけど、恋は変なものらしい。

クリスマスに“ぼく”が貰った大事な友達、可愛いくまのぬいぐるみのポーポ。いつの間にやらおばあちゃんとポーポはこいびとになっていて、どうやらおばあちゃんとけっこんするらしい。そんな新しい関係性の創造を色とりどりの絵と言葉で伝えてくれる一冊。可愛いは愛情を持って大事にしたいということ。きっとポーポとおばあちゃんはお互いにとても可愛い気持ちでいっぱいで、いつしか恋になっていた。“ぼく”にそんな可愛いの意味を初めて教えてくれたふたりにとっての“ぼく”もきっと可愛い存在。可愛いの先には無限大の世界が広がっていることを知る。

『恋の迷宮』著:宇野亞喜良(888ブックス)

小さくて可愛い。言葉から浮かぶ景色が可愛い。手作業で大事に作られて出来たという事実が可愛い。可愛いとは愛すべき事柄の全てに口にしてしまう、とても多様な層で出来たもの。

切なくも美しく、妖艶であり可憐。そんな世界を生み出し続けるイラストレーター、アートディレクター 宇野亞喜良。こちらは1968年刊の詩画集の復刻。従来の本たちに比べると手のひらにすっぽりと収まるようなサイズがとても目を引く。その小ささゆえに製本、函の制作、シール貼はすべて手作業で製作されている。本を開く前からこの本に対する愛おしさで、胸がいっぱいになりそうだ。本を開けば小さな世界いっぱいにひろがる宇野亞喜良の世界。それは自分の手のひらが入口。現実世界では体験し得ない、胸をきゅっと掴んでうっとりさせる言葉や絵に酔いしれよう。

小谷実由
ファッション誌やカタログ・広告を中心に、モデル業や執筆業で活躍。一方で、さまざまな作家やクリエイターたちとの企画にも取り組む。猫と純喫茶をこよなく愛する。愛称はおみゆ。著書にエッセイ集『隙間時間』(ループ舎)。J-WAVE original podcast「おみゆの好き蒐集倶楽部」のナビゲーターを務める。
https://www.instagram.com/omiyuno/


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