民芸とぼくの暮らし方
講師:中原 慎一郎(ランドスケーププロダクツ代表)
千駄ヶ谷にあるインテリアショップ「Playmountain(プレイマウンテン)」を運営するランドスケーププロダクツ代表の中原慎一郎さんに、クラフトアイテムを生活に上手に取り入れ、楽しく暮らすコツをご紹介いただきます。鹿児島にも拠点をかまえ海外にまで活躍の幅を広げる中原さんからといっしょに、民芸の魅力を味わってみませんか。
以前は何かのコレクターという人が多かったと思いますが、今は衣食住のバランスがとれている人が多いですね。アパレルを見ていても、最近はライフスタイル系のお店が多い。そういう意味で、みんながいろんなことにちゃんと興味をもっているんだなと思います。それに、以前は「○○用」という決められた用途を気にして買う傾向がありましたが、今は、これはこう使おうと自分で考えて選ぶ人が増えていて。
僕自身も、モノがいいだけでは選ばないんです。誰もが認めるすばらしいものがあっても、多少使い勝手が悪くても、自分の出会いだとこっちだなっていうこともあって。お金を出せばいいものが買えるっていうスタンスで買い物をしていると、意外と使い込まないんじゃないかなぁ。それって結局、所有欲だけだったりしますし。
それよりも、自分が動いて人と出会う。そして、この人はこんなに面白いことをやっているんだっていうことがわかると、「じゃあ僕がこうやって使おう」って、その人の挑戦を含めてサポートしたくなるんです。出会うっていうことには、そういう面白さがありますよね。きっとひとりでもいいから好きな作家さんを見つけると、そこから世界が広がっていくのかなと思います。
最近は、インスタグラムなんかで作家の趣味嗜好がすぐにわかるでしょう。つくっているものや生活が全部わかるから、ある程度判断できちゃう。もちろん発信する側も意識的にやっていると思います。写真がすごすぎて、お店にいくとがっかりしちゃうこともありますよね(笑)。普段出会えない人と出会えるツールでもあるので、何を選択するのかは自分次第でしょうけど。
僕のいとこの女の子も、インスタですごい数のフォロワー数がいるんです。毎朝、子どもと食べる食事をアップするだけなんですが、器の選び方から食材の選び方まで、とにかく徹底しているんですよ。花の生け方にしても手抜きがない。その女の子にとっては、普通なら生活に追われてしまうところを、SNSでの反応があることで、モチベーションを保っている部分があるんだと思う。
たとえば作家さんでも、お客さんがよく来る工房はちゃんとしているんです。工房もきれいだし、ビジネスもちゃんとしている。逆に工房がとっちらかっている人は、商売もとっちらかっている人が多かったり(笑)。「見られる」ってけっこう大事で、心地いい暮らしを続けていくためのモチベーションになったりする。そういう意味でも、SNSは役立っていると思います。
ちなみに、僕の家にはいろんなクラフトがバラバラに集まってきます。もらったり買ったり、用途があるものもないものも。作家さんと仲良くなるには、買うっていうのが重要なんです。どれだけ言葉で言っても、買ってないってことは興味がないっていうことだから。家では、気分によって、料理に合わせてこの器がいいなっていうふうに楽しんでいますね。
ただ、まあ、クラフトの楽しみって、結局は自己満足ですよね。究極の自己満足(笑)。人にコレクションを見せびらかしたいっていう人もいるかもしれないし、旅の記憶と結びついているという人もいるかもしれない。紅茶を飲むときはこれ、ビールならこれって、暮らしの中のルーティーン、儀式的にクラフトを使っている人も多いと思います。
もちろん缶のままビールを飲むのもいいですが、それだとただ酔えればいいのかっていう話になりますよね。お気に入りのグラスでお酒を飲みながら映画でも観るかっていうふうに、ただ疲れて寝るっていう生活を少しだけ楽しくしてくれる。そういうところが、クラフトにはあるのかなって思います。
千駄ヶ谷にあるインテリアショップ「Playmountain(プレイマウンテン)」を運営するランドスケーププロダクツ代表の中原慎一郎さんに、クラフトアイテムを生活に上手に取り入れ、楽しく暮らすコツをご紹介いただきます。鹿児島にも拠点をかまえ海外にまで活躍の幅を広げる中原さんからといっしょに、民芸の魅力を味わってみませんか。
1971年、鹿児島県生まれ。ランドスケーププロダクツ代表。オリジナル家具等を扱う「Playmountain」、カフェ「Tas Yard」、コーヒースタンド「BE A GOOD NEIGHBOR COFFEE KIOSK」、ギャラリースペース「CURATOR’S CUBE」、ヴェトナム麺食堂「Pho 321 Noodle bar」を展開。また住宅/店舗のデザイン業務、イベントプロデュース/ブランドディレクションを手がける。2017年2月、サンフランシスコに「Playmountain EAST」をオープン。
【ウェブサイト】http://landscape-products.net/