2017年5月24日(水)に開催されるCLASS ROOMの講座「民芸とぼくの暮らし方」で講師を務めてくれるのは、中原慎一郎さん。1940~60年代のモダンデザインをルーツに新しいものづくりを目指す「ランドスケーププロダクツ」の代表を務めています。店舗内装などのインテリアデザインを中心に、千駄ヶ谷のインテリアショップ「プレイマウンテン」などでオリジナル家具や小物も展開、2017年にはサンフランシスコに新店舗をオープン。そんな中原さんにうかがった、民芸やクラフトを取り入れた暮らしの魅力とは?

アノニマスな手仕事の器に面白さを感じて。

最初は、当時のハイテク素材を使っていたミッドセンチュリー期に活躍したデザイナーの家に、クラフトのものがいっぱいあることが意外で、興味をもったんです。たとえばイームズ夫妻の家に日本のこけしが並んでいたりね。その後、「民藝とランドスケープ・プロダクツの出会い」という展覧会で会場構成やディレクションを担当したことでさらに民芸やクラフトへの興味を深めました。

そこで知ったのは、柳宗悦をはじめとする民芸運動を起こした人たちの着眼点の面白さ。民芸って、もともとは無名のプロダクト、いわゆる雑器に用の美を見出したんです。銀座でハイエンドのものが売られている中、そういう無名の器を売るお店ができたことが、パンクというか、センセーショナルな面白さがあって。

そういう意味では、ミッドセンチュリーの家具も同じなんです。1950年代以降は簡単に捨てられていたほど、ありきたりなプロダクトだった。それがリバイバルして新たな価値を得ていって、今では美術館に収蔵されているでしょう? そういう価値の変遷自体が面白いと思ったんですよね。民芸も再ブームがあって、たまたま僕は早い段階で展覧会に関わりましたが、当時はまだ早かったんですね。

デザインだけでもなく、クラフトだけでもない。

僕の興味がクラフトに移っていったのは、自然な流れで出会って、素直にいいなと思ったから。民芸やクラフト自体は古いものですが、自分にとっては新鮮な出会いでした。積極的に流行を追うタイプではないんですが、あれこれ動いていると自然と時代の空気のようなものを感じたりするのかもしれません。

ミッドセンチュリーの再ブームに僕もどっぷり浸かりましたが、デザインデザインしたものとだけ暮らしていくのはなんとなく窮屈だし、どこかに落ち着きや安らぎを感じたくなる。たとえばゴミ箱をかごにするだけで、テーブルに手仕事の器を置くだけで、生活の中に優しさが生まれる。クラフトって、そういう役割を持っていたりするんです。

部屋にただかっこいいものを置いたり、飾り付けるのとは違う、生活と密着する中でできてきた道具ゆえの魅力がクラフトにはあって、それをどれくらいの割合で取り入れるのかも、またひとつの面白さ。民芸だけに囲まれて暮らすのも面白いけど、それだけだと単純に飽きるでしょう?(笑) 僕は定番だけが好きなタイプではないから、そのときの気分や世の中の流れの中で取り入れていきたいって思っています。

用途に応じた道具をちゃんと使うことの豊かさ。

素材で言えば、木やガラス、陶などシンプルな素材のもの。ハイテクな素材を使ったプロダクトも多いけれど、そういうものはすぐに古くなってしまいますが、昔ながらの素材は進化しない代わりに、つくり手次第でいくらでも新しい表現ができます。その時代の表現ができているものが好きで、そういう作家さんと出会うとドキドキしますね。

僕はよくカリフォルニアに行くんですが、作家の生活から学ぶことも多いんです。すごく単純なことなんだけれど、バターをバターケースに入れて使うとか、ソルト&ペッパーをミルに入れて使うとか。たとえば、これは長野の上田の砂糖入れと楊枝入れです。北海道の僕が好きな喫茶店で使われていて、お尻のデザインまできちっとされていてかわいいなと思って教えてもらったんです。ウチで営業している「Tas Yard」で使っていたら、同じようにお客さんに聞かれて、お店で扱うことになって。

たとえば砂糖を袋のまま使うんじゃなくて、これに入れるだけでちょっと暮らしの風景が変わるでしょう? そういうモノひとつで景色が変わるんですよ。「ランドスケーププロダクツ」という会社名も、プロダクトによって景色が変わる、自分たちが関わることで景色が変わるということを目指しているんです。

民芸とぼくの暮らし方

民芸とぼくの暮らし方

講師:中原 慎一郎(ランドスケーププロダクツ代表)

千駄ヶ谷にあるインテリアショップ「Playmountain(プレイマウンテン)」を運営するランドスケーププロダクツ代表の中原慎一郎さんに、クラフトアイテムを生活に上手に取り入れ、楽しく暮らすコツをご紹介いただきます。鹿児島にも拠点をかまえ海外にまで活躍の幅を広げる中原さんからといっしょに、民芸の魅力を味わってみませんか。

日時
2017年5月24日(水)19:30~21:30
会場
カフェパーク(恵比寿)
参加費
無料
定員
60名
※応募者多数の場合は抽選となります。
受付期間
2017年3月17日(金)~5月10日(水)
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中原 慎一郎(ランドスケーププロダクツ代表)

1971年、鹿児島県生まれ。ランドスケーププロダクツ代表。オリジナル家具等を扱う「Playmountain」、カフェ「Tas Yard」、コーヒースタンド「BE A GOOD NEIGHBOR COFFEE KIOSK」、ギャラリースペース「CURATOR’S CUBE」、ヴェトナム麺食堂「Pho 321 Noodle bar」を展開。また住宅/店舗のデザイン業務、イベントプロデュース/ブランドディレクションを手がける。2017年2月、サンフランシスコに「Playmountain EAST」をオープン。
【ウェブサイト】http://landscape-products.net/