大人の女性に、拠り所となる場所を。
「She is」では、魅力的な女性たちの声を集め、女性の生き方の多様性を広げるコンテンツを展開していく予定です。企画が立ち上がったのは去年の春くらい。自分たちが30歳前後の年齢になって、これから何を大切にして生きていくのか、変わりゆくライフステージとどう折り合いをつけていけばいいのか、そんなことを考えたんですよね。
学生の頃は地方に住んでいて、『Zipper』や『FRUiTS』といった雑誌が文化への扉でした。当時は『Zipper』の読者モデルに憧れて前髪を短くしていて、通学途中にすれ違う他校生に「カッパ」って呼ばれていたんですけど(笑)、周りがなんと言おうと私はこれが好きなんだって何かに誓うみたいに明確に思っていて。それが年齢を重ねていくにつれ、社会的な責任が大きくなるにつれ、自分が大事にしてきたものを大事にし続けることが難しくなってくる。とくに女性は結婚や出産などによる立場や身体の変化も大きいですよね。だからこそ、女性の拠り所になるような場をつくりたいと思ったんです。
それに今は、インターネットで誰でも情報発信ができるようになったから、個人が内面に抱えもっているものが垣間見えるようになりました。だからそれぞれの人が、自分の考えや感性にフィットする人たちとつながって交流を育んでいくことが、拠り所になるんじゃないかって。「She is」では、アーティストやクリエーターから、ユニークな考えをもつ身近な女性を含めた「Girlfriends」と呼ぶメンバーとともに場所をつくっていくのですが、今回の講義でゲストスピーカーに招いたシンガーソングライターの吉澤嘉代子さんもそのひとりです。
「無敵かもしれないと思える夜」とは。
今回、CLASS ROOMの講義のテーマとして「夜」というお題をいただいたのですが、吉澤さんにお声がけしたのは、現実と妄想を織り交ぜて、強度のある作品をつくっている方だから。夜って、想像力が掻き立てられる時間じゃないですか。吉澤さんはそういう意味でぴったりだなと思いました。
吉澤嘉代子『月曜日戦争』
「She is」の「ひとりひとりが、無敵かもしれないと思える夜を増やす」というコンセプト文に「夜」というワードがあるのは、真夜中に必死になって書いていたからかもしれません(笑)。ただ、この言葉が浮かんだときに、私自身が励まされた感じがありました。たった一言だけど、「そういう瞬間があるのかもしれない」と思えるだけでも、ものの見方が変わってくる。
少し前に、Twitterで「#無敵かもしれない」というハッシュタグをつけた投稿を募集したんです。集まったツイートの内容はどれも、自信満々ではない、だけど、ちょっとうれしいようなこと。私の場合、仕事が遅くなると、電話しているフリをしながら歌って帰ることがあるのですが(笑)、それも夜なら許されるような気がするじゃないですか。
夜は、自分の感覚をリセットする時間。
夜って不思議な時間だなって思うんです。つげ義春の『夜が掴む』という漫画じゃないですけど、暗くて押しつぶされそうなときもあれば、余計な情報がないからこそ集中できるような瞬間もある。1日が終わって、明日どうしよう? とか、今日はこうだったなって振り返ったりもしますよね。そういう意味では人がリセットする瞬間なのかなと。そもそも、人が必ず寝ないと生きていけない仕組みになっているのも、もしかしたらちゃんとリセットしなさいということなのかもしれないなと考えたりもします。
夜の捉え方はいろいろとありますが、私が思うのは、自分に向き合えるような時間になるといいなということ。日中は仕事でも家庭でもやらなければいけないことがたくさんあるから、夜に一瞬だけでも、普段は忘れてしまっていることや、感覚がマヒしていることを、一度ゼロに戻すような。いかに自分でスイッチを転換していけるのかということが、すごく大事なんじゃないかと思うんですよね、なかなか自分でもできないんですけど(笑)。