ずっと使えるいいモノの選び方
講師:山田遊(バイヤー)
7月講座の講師は、フリーランスでバイヤーとして活躍する、method(メソッド)の山田遊さんです。ショッププロデュース・ディレクション、イベントのプランニングから、IMFやAPEC参加者へ贈呈される記念品等についての選定、企画開発コーディネションなど、目利きとして活躍される山田遊さんに『ずっと使えるいいモノの選び方』と題し、時間がたっても色あせない、名品や良い物の選び方などを紹介いただきます。
ミニマムな暮らしに寄せすぎてしまったら、色気が薄れてしまいます。それはつまらなさの素。だからどのくらいスパイスになる神秘的な要素をそろえたらいいのか、テレンス・コンランはそれを3%と言っているんですよね。人によっては10%になるのかもしれなくて、20〜30%になってしまうと、行きすぎ。ものを好きな気持ちが出すぎてしまうと、どんどん高い割合になっていくんだろうな。
ただ、THE CONRAN SHOPの店内を見回すと、そういう神秘的な要素が10%以上そろっていることに気づきます。それは、お客さんにTHE CONRAN SHOPのなかで神秘的な要素をチョイスしてもらうためなんですね。そこに置いてあるもの全部を生活に取り入れてほしいわけじゃなくて。もしもその10%以上の神秘的な要素を全部取り入れてしまったら、テレンス・コンランの言う美意識とはきっとズレてしまいます。
そんな神秘的な要素を持つ、情緒的なものにストレスを感じないのは、ものがうるさいかうるさくないかに関係していて。MUJIでも、IKEAでも、100円ショップでも、良いものはあるし、良いものを探すのは好き。
たとえば、オフィスで使っているジャスパー・モリソンのグラスには、やっぱり、いいなぁって感じていて。ジャスパー・モリソンのものの良さは、実はなかなかわかりづらくて、それは、ほんとにさりげなく、気づくこともないような繊細なデザインが周到に隠れているから。だから「このグラスいいなぁ」って思うんですよ。
さりげなくて、気づかないようなところに隠れている豊かさは、ずっと使っているから気づけるようになっていくんだろうな。一目で見て分かるような機能性とはちょっと違う。たくさんものを見て、たくさんものを使っていくと、気づかなかったことがたくさんわかって。誰かに薦められたものを使えば、一足飛びで良いものを手にすることはできるかもしれないけど、本当に良さを感じられるようになるかどうかは、使い分けてみてはじめてわかること。
でも最初から豊かさが隠されているようなものを使っていると、気づく瞬間がくるまで遠くなってしまいます。だから最初は服や食べ物のような用途のわかりやすい、身体性の高い物から広げていくと気づきやすいですよ。たとえば、食べ物にこだわったら、健康を意識していくじゃないですか。ダイエットでもいいし。
ダイエットをしていても、貧しい食事にはしたくないから、豊かにしたくなっていく。写真映えを良くしたいとも思うんじゃないかな。それなら、食べ物だけではなくて器にもこだわるようになって。ごく自然に、流れで。服が好きな人だったら、最初は見栄えから入っても徐々に肌触りまでこだわっていって。次第にルームウェアまで気遣ったり、タオルに関心を向けたり。
そうしたら、バス周りにも興味が移っていって、いろんなものにこだわっていけるようになる。お風呂の椅子が嫌だな、こだわりの石鹸を買ったからソープディッシュをどうしようかな。そういうふうに、どういうものが良いんだろうって考えるようになっていくのは、やっぱり、ものの縁の結びつき。
だから、より即効性があって、機能性を感じるようなものからこだわっていくようにしても、きっとものの豊かさをわかるようになっていけるはずで。その先に、情緒的なものを持つ豊かな暮らしがあるんじゃないかな。
7月講座の講師は、フリーランスでバイヤーとして活躍する、method(メソッド)の山田遊さんです。ショッププロデュース・ディレクション、イベントのプランニングから、IMFやAPEC参加者へ贈呈される記念品等についての選定、企画開発コーディネションなど、目利きとして活躍される山田遊さんに『ずっと使えるいいモノの選び方』と題し、時間がたっても色あせない、名品や良い物の選び方などを紹介いただきます。
東京都出身。南青山のIDÉE SHOPのバイヤーを経て、2007年、method(メソッド)を立ち上げ、フリーランスのバイヤーとして活動を始める。現在、株式会社メソッド代表取締役。2013年に「別冊Discover Japan 暮らしの専門店」が、エイ出版社より発売、2014年「デザインとセンスで売れる ショップ成功のメソッド」誠文堂新光社より発売。