現物を見に行くと特別な味わいに出会う

私は好きなアーティストの作品や気になる展示を見に行くためだったら、海外に行くことも多いんです。渡航費には代えられない、価値があると信じていて。実際に生で見るからわかる、感じられることがあります。2016年には、アメリカ人アーティストのポール・マッカーシーの作品を見たくて、ニューヨークまで展覧会に行ってきました。

生まれて初めてニューヨークに行ったこともあって、作品やアーティストの熱を感じて、すごく感動しました。生で見ないとわからない質感とか、サイズ感とか、想像を超える衝撃ばかりで。そういう感覚を味わってみたら、アートの魅力をもっと感じれると思います。だから若い子にもちょっとでいいから体感してみてほしくって。iPhoneの画面越しでみるのとは違う、気というか、念というか、そういうものが作品からは溢れているんです。

それに、私は特に海外でアートを見ると感じるんですけど、その作品を見に行くまでの道のりや、展示されている空間、気温とか、匂いとか、そういうものが全部思い出として体に残っていって、作品の魅力にプラスされていく。そういう感覚が、アートの楽しみを深めてくれていると思うんです。

ずっと忘れられない感動の記憶

それこそ、アーティストによっては歳を重ねて作風が変わったりすることもありますし、自分自身もちょっとずつ心境の変化が生まれていくので、年代によって、どんな体感を得られるのかは異なってくるんですね。それでも、未だにこれを越える「すごいなぁ」って感覚は得られていないなって思えるアートも、私にはいくつかあって。

たとえば、物心ついたばかりの時に、写真家のマリオ・テスティーノの展示を見に行ったときは、とても感動たのを覚えています。東京都写真美術館で開催されていたんですけど、一度も写真展に行ったことはなかったし、マリオ・テスティーノのことも詳しくなかったのに、なぜか惹かれて。すごく写真が綺麗だったし、とても大きな写真が多かったことに、純粋に感動してしまいました。

帰るときには写真集を買っていたほどで。マリオ・テスティーノは、とても大きなポートレート集を出しているんですけど、1週間くらい、ずっと見続けていたくらい。アートが部屋にあれば、「あのときに買ったな」って楽しみを感じることもできて。作品を持つことって、そういう良さもあります。

暮らしを豊かにする多幸感の在処

やっぱり、アートのある暮らしって、贅沢だと思うんです。たとえば食事も、できれば美味しい料理を食べたいですよね? 舌が肥えてれば、より本当の美味しさに気づくことができたり。アートとの出会いを重ねることも、それに近いような気がしています。

私はアートに触れることで、たくさん刺激を受けてきました。見たことの無いものや、出会ったことの無い考え方だったり。そして、その度に感じる、すごく人間らしい、あの多幸感。美味しいと感じることや、綺麗だと惹かれるときに、ものすごく幸せな要素が体の中で溢れていると思うんですよ。公園に行くと落ち着いたり、海の写真を見ているとなぜか癒されてしまったりするのも、そのひとつなんじゃないかな。

「好き」とか、「綺麗」とか、うまく言葉にならない感動って、すごく大事だと思うんです。そういう感動を、作品はたくさん与えてくれる。アートからそういう感動を覚える機会を取り入れていくと、暮らしはもっと豊かになると思っています。

わたしのアートの楽しみ方

わたしのアートの楽しみ方

講師:伊勢春日(VOILLDキュレーター)

9月講座の講師は、中目黒でアートを軸とした個性豊かな企画展を展開しているギャラリー「VOILLD」のキュレーターの伊勢春日さんです。企画展以外にも、「TOKYO ART BOOKAKE FAIR」や「TOKYO ART BAZAAR」といったイベントを多数開催し、次世代のアーティストたちの作品を親しみやすい形で紹介している伊勢さんに『わたしのアートの楽しみ方』と題し、アートの魅力についてお話いただきます。また今回は、ご参加いただいた皆様に、伊勢さんから特別にVOILLDのオリジナルノベルティのプレゼントもご準備しています!

日時
2018年9月26日(水)19:30~21:30
会場
カフェパーク(恵比寿)
参加費
無料
定員
60名
※応募者多数の場合は抽選となります。
受付期間
2018年9月7日(金)~9月19日(水)

伊勢春日(VOILLDキュレーター)

東京都出身。2014年中目黒にVOILLDを設立。展覧会の企画・ディレクションを中心に、TOKYO ART BAZAARなどのアートイベントの開催やラフォーレ原宿の広告制作、アーティストのマネージメントや商品制作、ポップアップ企画のプロデュースなど、多岐にわたるプロジェクトを行う。