子どもの頃、ブロマイドを持ち歩いていた
好きなものはたくさんあります。喫茶店、花、櫛、レコード……最近はスカーフや本も集めていますし、でもやっぱり一番多いのは服でしょうか。着ることはもちろん、年齢的にもう着れないかなって思うものでも、大事な服ならとっておいてしまいます。
それから、カラーブックス。「猫」とか「中国茶」とか、ひとつのテーマが1冊にまとめられている文庫本サイズの本のシリーズで、60年代から90年代にかけて出版されていたものです。少しずつ集めていて、家にも事務所にもいっぱいあるんですよ。60年代や70年代当時の情報を詳しく知ることができるし、文章の言葉の選び方や語り口調もすごくいいんです。風情があるというか、品があって優しい。図鑑みたいで写真も素敵です。
子どもの頃はモーニング娘。が大好きで、ブロマイドを集めていました。フォトアルバムにギチギチになるくらい詰めて、いつもカバンに入れていたんです。出かけた先で開いて見ることもないのになぜ持ち歩いていたかというと、テレビでよく「持ち物を見せてください」みたいな街頭インタビューがあったんです。もし自分がそれに遭遇したら、一番見せたいものを見せられるようにと備えていたんです(笑)。
並べて眺めるだけでいい
もともとモノを集めること自体が好きなんだと思います。ブロマイドは部屋で床に並べて、メンバーごとや衣装ごとに並べかえたりして、見て、またアルバムに戻すだけ。集めたものを、ただ眺めて楽しんでいました。
それは今も変わっていなくて、櫛のコレクションも実際に使ったりはあんまりしないんです。使い心地ではなく、色や形が素晴らしいという観点で集めているので、ときどき眺めて、また箱にしまって。たぶん、同じ種類のものを並べて眺めることで安心するのかな……。ブロマイドも、お守りのようなものだったのかもしれません。
好きなものはいろいろありますが、やっぱり見た目に惹かれることが多い気がします。そのとき、なにが自分の中で決め手になっているんだろうということをいつも考えますね。たとえばこのテーブルがかわいいと思ったのは、天板の柄が好きだからだ、とか。
でも本当は、好きなことに理由はいらないと思うんです。私は仕事で好きなものについてお話しさせてもらうことが多いので、ついつい説明できるように分析してしまうのですが、なにかに触れて瞬間的に上がった気分や熱量が一番大事だと思います。
派生するように、好きが広がっていく
好きなものとは偶然に出会って、そこから広がっていくことが多いです。
例えば喫茶店。親が音楽好きだったので、CDが家にたくさんあって子どもの頃から音楽が好きでした。CDのアートワークを見ていたら衣装が素敵だなと思い始め、もっと見たくなってその時代の映画を観て。そうしていくうちに今度は、映画に出てくるインテリアが気になり始めて、一番身近でそういう時代の素敵なインテリアを体験できるのが喫茶店だったという流れなんです。そうやって、寄り道していくうちにどんどん好きなものが派生していくことがよくあります。
昔は60年代のポップなカルチャーやデザインが好きでしたが、最近はもうちょっとソリッドなものとか、レトロフューチャーに惹かれるようになりました。昔の人が描いた未来の街みたいな、いい意味でチープなSFも大好き。たぶん、まっすぐにかわいい、美しいもの以外にも、ちょっとシュールなものが好きなんですよね。モノを真正面から見るだけでは足りない……もっといろんな角度からのぞいてみたい!というところがあるのかもしれません。
ただし、猫は真正面から見ています。猫は猫であるだけでかわいい。