2017.1.25
Report 1/3

TOKYOをもっと楽しみたい

講師:田島朗(Hanako編集長)、平野紗季子(フードエッセイスト)、小谷実由(ファッションモデル)

2017年1月に開催された新年特別講座は、雑誌を中心にさまざまなメディアで活躍する3人による座談会。田島朗さんはマガジンハウスのライフスタイル誌『Hanako』の編集長、モデルの小谷実由さんは雑誌での執筆など広く活動しており、平野紗季子さんは食をテーマにした執筆活動や商業施設でのエキシビションなどを行っています。まずは、それぞれが3つのキーワードとともにプレゼンテーションした「東京の楽しみ方」から。前編・後編の2本立てで講義の様子をレポートします。

田島さんの3つのキーワード
〈おもしろい人に逢いに行く〉〈ちょっとお酒をのんでみる〉〈羽田空港に感謝する〉

田島さんが編集長を務める『Hanako』は、2016年10月にリニューアルを敢行し、新たに「東京を、おいしく生きる。」をテーマに掲げました。そこには、「おいしいものを食べたい」「おいしい思いをしたい」という、2つの意味が込められています。田島さんが挙げたキーワードも、同じように2つの意味の「おいしい」を楽しむというもの。1つ目の「おもしろい人に逢いに行く」では、「シェフは“会いにいけるアーティスト”のようなもの」として、独自の世界観を持つお店と人を紹介してくれました。

固定概念にとらわれず面白いお店づくりをしている人に数多く会いに行けるのは、たくさんの人が暮らしている東京ならではの楽しみです。最近では、たとえば代々木公園のビストロ「PATH」の原太一さん。朝・昼・晩とそれぞれの表情があり、このお店に通うためなら代々木公園に住みたいと思ったくらい、すてきなお店です。もうひとり、尾山台で「PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGI」を営む岩柳麻子さんもそう。パティシエという枠の外に出ようとしている人で、ご主人の実家の農園で採れた果物を使用し、つなぎにクリームではなくゼリーやソースを使ったパフェが評判を呼んでいます。新しい『Hanako』でも年に4回はスイーツ特集をやることを決めているのですが、パフェもそうだしチョコレートもそうだけど、スイーツは東京におけるこれからの面白いトピックになると思いますね。

ほかにも、焼きそばパンやチョココロネなど“レトロパン”を現代風にアレンジした碑文谷のパン屋「サンチノ」、ブラックバスが出てきて食べたらおいしくて驚いたという代沢のレストラン「サーモン&トラウト」など、たくさんのお店とシェフを教えてくれました。続いて、次のキーワード「ちょっとお酒を飲んでみる」では、すてきなバーテンダーのいる3つのお店を紹介。

女性にとってバーはちょっと敷居の高い印象かもしれませんが、全然そんなことはありませんし、最近は女性の入りやすいバーも増えています。シェフと同じようにバーテンダーも“会いにいけるアーティスト”なんです。カウンター越しに話もしやすいし、情報通なので東京の最新情報も教えてくれます。たとえば、新宿三丁目の“日本一おいしいレモンサワーを出すお店”「The OPEN BOOK」。店内にはオーナー田中開さんの祖父、作家・田中小実昌さんの蔵書が所狭しと並んでいます。もうひとつは、銀座の「美術館ビル」なる雰囲気のあるビルにある「ヴィ・レンブランサ」。バーテンダーの秋谷修二さんは遊び心のある人で、たとえばイチゴベースのお酒を頼むとイチゴが敷き詰められた小さなトランクが一緒に出てきたり。根津の「バー長谷川」は、ハイボールで有名な銀座のバー「ロックフィッシュ」にいた方が出したお店。ウイスキーとたまごサンドの相性抜群な組み合わせをぜひ味わってください。どのお店も、ふだんあまりお酒を飲まない人ほど、楽しめると思います。

田島さんが挙げた最後の意外なキーワードは、「羽田空港に感謝する」。東京自体を楽しむことはもちろんだけれど、実は東京の一番の魅力は「世界とつながっていること」だと言います。

羽田空港は、年間旅客数世界第5位と便も多く、オペレーションも正確で遅れることもほとんどない。それに、都心からのアクセスの良さは世界でも指折り。僕が『BRUTUS』 の編集をしていた頃は海外の取材も多くて、気がつけば学生時代も合わせて120ヶ国くらい行きました。東京での遊びも楽しいけれど、東京に住んでいるからこそ、その先に行ってみようという提案もしたいんです。どこの国に行こうか迷うなら、まずは近場の台湾をおすすめします。実は僕も年末を過ごしたんですが、なんといっても朝食がおいしくて。豆腐のおかゆ、みずみずしいグリンピース、白菜を発酵させた鍋など日本では味わえない料理がたくさん。ほかにも街のすみずみにまで目を向けてみると、さらなる発見もあるかもしれません。街もコンパクトだし、東京を探検するのと同じような気分で楽しめますよ。

>>続いて小谷さんのキーワードはこちら

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