LUMINE MAGAZINE

SCROLL

LIFESTYLE

 

きょうは本屋に寄って帰ろう/Vol.4(選者:小谷実由さん)

2023.09.25

本を愛するあの人が、ルミネのシーズンテーマを切り口におすすめの本を紹介するこの企画。今回はモデルの小谷実由さんに選んでいただきました。
テーマは「Gentle Living - 紡いでいく、愛おしい時間」です。ずっとそばにあるもの、新しく出会うもの……一つひとつの出会いを大切に、つながりを深めていく。そうして愛おしいものを増やしていくことが、毎日をもっと楽しく、豊かにしてくれます。
小谷さんが選んだのは、ご自身の記憶とリンクするという2冊のエッセイ。彼らの言葉たちが、かけがえのない時間を紡いでいくことの価値を教えてくれます。

『もぎりよ今夜も有難う』著:片桐はいり(幻冬舎)

「20代の頃、2年ほど映画館でアルバイトをしていました。ほんの少しの間でしたが、いまでもその時のことを鮮明に覚えていて、当時その映画館で上映されていた作品を見るとそんな気持ちがドッと込み上げ、一度でいいからあの時の仲間たちとまた一緒に働きたいなと少し寂しくなることもあります。

そんな私よりもさらに濃厚な愛おしい時間を映画館で紡ぎ、そして形を変えて今もなおその時間を紡ぎ続けているのは片桐はいりさん。幼い頃から映画に魅了され、7年の歳月を映画館のもぎり嬢として過ごし、運命のように今度は映画の中で活躍される片桐さんの、映画愛そして映画館愛が随所に溢れた一冊。それらを通して出会ったものは彼女にとってどれだけ特別で運命的なものだったのか、大切な時間を暖かな言葉に乗せて感じることができます」

『台湾レトロ氷菓店 -あの頃の甘味と人びとをめぐる旅-』著:ハリー・チェン(グラフィック社)

「幼い頃、夏には決まって祖父が氷をガリガリと削ってガラスの器に持ってくれて、お祭りではプラスチック製のカップに入れられて、目が覚めるような甘いシロップをかけて食べていたかき氷は、ずっと懐かしく幸せな記憶を呼び起こさせてくれる存在です。

どこにでもある当たり前に思っていた風景が、時を重ねることによっていつしかとても意味のあるものになる。台湾では、人々の生活にさらに寄り添う『冰果室』という氷菓店の店が多くあります。日本の純喫茶を愛してやまない著者のハリー・チェンさんは、自身の人生を思い返した時に欠かせなかった風景は冰果室に多く存在していたそう。そんなきっかけから自分が生まれ育ち生活する台湾の美しさを、誰の心の中にも1つはある記憶や物語を通して伝えるべく、台湾にある多くの冰果室を取材し、懐かしく美しい物語として連ねています。

旅の記録やグルメガイドとも違う、大切な記憶を巡るエッセイ。ハリーさんにとっての冰果室のように、自分の記憶の中にある特別な存在を探したくなる一冊です」


小谷実由
ファッション誌やカタログ・広告を中心に、モデル業や執筆業で活躍。一方で、さまざまな作家やクリエイターたちとの企画にも取り組む。猫と純喫茶をこよなく愛する。愛称はおみゆ。2022年7月に初めての著書であるエッセイ集『隙間時間』(ループ舎)を刊行した。
https://www.instagram.com/omiyuno/


※該当書籍の取り扱いは各店舗へお問い合わせください



===================
■あわせて読みたい
>> きょうは本屋に寄って帰ろう/Vol.3(選者:山口博之さん)

■こちらもおすすめ
>> アートはお守りのような存在。気分にあわせて自由に選ぶ

TOP