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きょうは本屋に寄って帰ろう/Vol.13(選者:小谷実由さん)

2024.07.01

本を愛するあの人が、ルミネのシーズンテーマを切り口におすすめの本を紹介するこの企画。今回はモデルの小谷実由さんが「Bon Voyage -夏のエスケープ」のテーマでセレクトしました。
夏は、開放感と冒険を求めて、まだ見ぬ世界へトリップしてみたくなる季節です。美しい風景や初めての食文化、たくさんの出会い。セレンディピティにあふれた旅では、未知の体験だけでなく、新しい自分にも出会えるかもしれません。

『10日暮らし、特濃シンガポール』著:森井ユカ(晶文社)

旅にはいろんな過ごし方があることを大人になってから知った。いつもの生活と変わらないような気持ちで、ただ場所だけが違うという、暮らすように旅をすること。それはきっと誰もが一度は憧れる過ごし方だ。

立体造形家・雑貨コレクターの森井さんが今まで訪れた国は約30カ国。渡航回数も200回という呼吸をするように旅をする彼女が、様々なシンガポールの魅力を観光とは一味違う日常的な文化から楽しむ10日間。一見、高層ビルが立ち並ぶ先進的な印象が深いけれど、それに加えてマレー系、中華系、インド系などのそれぞれの文化が混ざり合い共存する国。ストリートフードやスーパーマーケット、HDBという名の団地に近未来のような自然などから感じる鮮やかでエネルギッシュなシンガポールの空気は、どこか懐かしくて親近感も感じられる場所。シンガポールはどんな人も受け入れてくれる気がする、そんな懐の深い雰囲気に包まれているところなのかもしれない。

『グアテマラの弟』著:片桐はいり(幻冬舎)

旅をする目的が場所でもなく食でもなく人であるというのは、なんだか一層特別なものがある。場所や食はほとんどが揺るぎないものだけれど、人がその地に存在することは偶然性を感じて、さらにその人を目的としてその地に足を運ぶことになると運命的なものまで感じてしまう。

子供の頃はほとんど口を聞かないほどに仲が悪かった弟は、ひょんなことから人生の半分以上をグアテマラで過ごしている。そんな弟に会いに行く姉・片桐はいりさん。様々な偶然や日々の積み重ねからグアテマラに行くことになるが、そこで数週間過ごすうちに生まれた海を超えた新しい家族との思い出や価値観。それらをきっかけにふと思い出した近くにいる家族。外の世界に飛び出すきっかけが人であるということは、ただ観光しに旅に出ることとは全く違う船に乗ることができるように思う。世界中に友達や家族がいたらいいなと子供の頃に描いたような夢を再び描きたくなった。

小谷実由
ファッション誌やカタログ・広告を中心に、モデル業や執筆業で活躍。一方で、さまざまな作家やクリエイターたちとの企画にも取り組む。猫と純喫茶をこよなく愛する。愛称はおみゆ。著書にエッセイ集『隙間時間』(ループ舎)。J-WAVE original podcast「おみゆの好き蒐集倶楽部」のナビゲーターを務める。
https://www.instagram.com/omiyuno/


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