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人はもちろん、地球にもポジティブな変化を。フットウェアブランド「KEEN」

2024.11.12

アメリカ発のアウトドア・フットウェアブランド「KEEN(キーン)」。つま先が守れるサンダルという斬新なアイテムで脚光を浴びて以来、水陸両用サンダルやタウンユースできるスタイリッシュなスニーカーなどで注目を集めています。そんなKEENが環境負荷軽減や機会均等などにも積極的に取り組んでいること、ご存じでしたか? 世界をポジティブに変えていくことを目指す、彼らの取り組みに迫ります。

アウトドアを楽しみたいなら、環境を守る責任がある

KEENは2003年に誕生した、アメリカのポートランドを拠点とするアウトドア・フットウェアブランド。ブランドが生まれたきっかけは、創業者のローリー・ファースト氏の素朴な疑問だったという。

彼は大学時代にテニスシューズのソールを張り替えるビジネスを立ち上げ、その後は大手スポーツシューズブランドの下請け会社を興し、受託生産をしてきた。そんなある日、彼は友人がボートでつま先をケガする場面に遭遇した。「つま先が守れるサンダルがあれば……」。それが、つま先までソールが覆う「NEWPORT」の開発につながり、KEENの創業へと結びついた。

アウトドアというと、山や川、海での遊びやスポーツなどが思い浮かぶが、KEENはアウトドアを「天井のないところすべて」と定義。陸と水、山と街、ファッション性と実用性など、さまざまな状況や要素に対応する多機能なフットウェアは、アウトドアを愛する人たちだけでなく、日頃から足元のおしゃれを楽しみたい人たちの間でも人気を博している。

そんなKEENの大きな特徴は、創業当時から社会貢献を経営の礎としている点。その背景を、PR担当の種田聖子さんはこう語る。

「アウトドアとは、私たちにとって『天井のないところすべて』。KEENは屋外での暮らしや遊びといった活動を自由に楽しむためのシューズブランドとして誕生しました。そんな私たちには、アウトドアという場所を守る責任があると考えています。目指しているのは、地球上のすべての場所をよりよい場所にすること。そのためにさまざまな取り組みを行っています」(種田さん)

KEENのPR担当、種田聖子さん。スウェットはKEENのオリジナルで、廃棄されるはずだった食用の牡蠣の殻とリサイクル素材を使用している

すべての製品から「永遠の化学物質」を排除

取り組みのひとつが、環境負荷の低減だ。たとえば、少し前からよく耳にするようになった化学物質PFAS(ピーファス)の不使用。PFASとは有機フッ素化合物の総称で、水や油をはじき、熱や薬品に強いことから、こげつかない調理器具、衣類の撥水(はっすい)加工、食品の包装など、幅広く利用されてきた。しかし、自然界でなかなか分解されず長期間残るというデメリットがあり、「永遠の化学物質」とも呼ばれている。さらには、人体に蓄積されると発がんリスクや免疫機能の低下といった多くの健康被害を引き起こす可能性が指摘されている。

「KEENでは2014年から対策をスタート。フットウェアの撥水加工時にPFASを使用するのを段階的に廃止し、現在は100パーセントPFASフリーとなっています」(種田さん)

また、レザーシューズには、環境保護などを目的とした、国際的な非営利団体「レザーワーキンググループ」による厳格な審査をクリアした製革業者のレザーのみを使用。調達先を、化学物質や水の処理などの環境対策を徹底している工場に限定し、地球への悪影響を軽減している。

「このほか、防臭加工にプロバイオティクス技術を採用することでケミカルフリーを実現。一部の生地やバンジーコードシステム(留め具やそれに使用されているひも)などにリサイクル素材を使用するといった工夫も行っています」(種田さん)

右から、ハイキングシューズ「ピレニーズ」、スニーカー「KS86」、オープンエア・スニーカー「ユニーク」。いずれも環境に配慮した素材を使用しているうえ、スタイリッシュで履きやすいのが魅力

店内で洗濯用洗剤を量り売りする理由

こうした商品のほか、店舗デザインにおいても地球環境負荷の低減に向けた取り組みを行う。今年4月、ルミネ新宿ルミネ1の5階にオープンした「KEEN GARAGE SHINJUKU(キーン ガラージ シンジュク)」はブランド初となる直営のウィメンズコンセプトストア。こちらでは環境に配慮した店舗のデザインやサービスを採用している。

「床の大半には、入居前のテナントが使用していた木材などをクリーニングして再利用し、廃棄物の削減に努めました。壁などにもリユースの木材を使っています」(直営店の運営を担当するリテールセクションマネージャー・小池誉哲さん)

店内を彩る美しいフラワーアートは、東京・三軒茶屋のオーダーフラワーショップ「BUENO-F」のフラワーアーティスト、マリアさんが手がけたもの。生花を取り入れて、いきいきとしたムードを演出しているのがポイントだ。

「生花はあっという間に枯れやすく、廃棄物となってしまうので、従来の店舗では導入していなかったんです。今回は、ディスプレイした生花をドライフラワーにして再利用することに。花の種類や飾る期間をマリアさんと相談しながら、フラワーロスの回避に励んでいます」(小池さん)

加えて興味深いのが、ニュージーランド発のナチュラルデイリーケアブランド「ecostore(エコストア)」の洗濯用洗剤の量り売りを行うリフィルステーションを店内に設置していること。KEENでは今年から「ecostore」と長期的なコラボレーションをスタートしていて、この試みはその第一弾。洗濯用洗剤、おしゃれ着用洗剤、柔軟仕上げ剤の3種類が用意されていて、空のボトルを持参すると100g単位で購入できる。

「私たちは、植物やミネラル由来の原材料を用い、(ゴミを出さない)ゼロウェイストな世界を目指している『ecostore』の姿勢に共感しています。コラボレーションをすることで、ショップにお越しくださったみなさんにまた違った角度から環境保護に意識を向けるきっかけを提供できたらと考えているんです」(種田さん)

KEEN GARAGE SHINJUKU内のecostoreのリフィルステーション。リフィルのほか、ecostore×KEENオリジナルデザインのボトルも並ぶ

日本独自の災害支援の取り組みも

KEENではこうした環境保護への取り組みのほか、災害支援やジェンダー平等、障がい者支援などにも力を入れている。その最初のきっかけは、2004年のインドネシア・スマトラ沖地震だったのだそう。創業メンバーたちが翌年の広告予算100万ドルの使い道について会議をしていたときに地震が発生し、「この予算を役に立てるべきだ」と災害復興支援に回した。

国内では、2011年の東日本大震災を機に災害緊急支援ネットワーク「一般社団法人OPEN JAPAN」と災害支援をスタート。今年の能登半島地震においても、被災者にシューズを届けるほか、社員が現地でボランティア活動に参加するなどの取り組みを行っている。

また、災害支援のほかにも、新型コロナウイルスの影響でマスクが不足したときは自社工場でマスクを生産するなど、起きている問題に対してシューズブランドであるKEENができることを模索し、動いてきた。

「何かが起これば助け合い、選択肢があるならばサステナブルなほうを選ぶ。世界中でそれが当たり前になればいいなと思います。ポジティブな循環の輪が広がっていくことを願います」(種田さん)

ルミネ新宿ルミネ1の5階のウィメンズコンセプトストア、KEEN GARAGE SHINJUKU

■KEEN
https://www.keenfootwear.jp/

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※本記事は2024年11月12日に『telling,』に掲載された記事を再編集しております。
※情報は記事公開時点のもので、変更になることがございます。

Text: Kaori Shimura, Photograph: Ikuko Hirose, Edit: Sayuri Kobayashi

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