コンプレックスと個性の違い。

コンプレックスって個性ともちょっと違っていて、呪いのようなイメージが強くあります。気になりはじめちゃうと、止まらない。わたしも最近になって好きな服を着はじめてから、やっとコンプレックスを個性だと思えてきました。何が違うのかというと、人と比較して、劣っていると感じていたらコンプレックスになるんじゃないかな。

人と比較するよりも、自分で服を材料にしてどう楽しむか。だから、捉え方の違いなんだろうな。高校生の頃は、ロリィタ服を着ていたんです。ずっと親から反対されていたから、着ちゃいけない服だって罪悪感や背徳感がありました。仕事をしはじめてからも、万人受けするような服を着なきゃいけないんだろうって思っていて。

本当に自分の好きな服を着られるようになったのは、2017年末くらいからです。好きな服を着るようになったら、その服装を通して、人づてに話が広がることは増えていきました。「そのカバンいいね」って言われて、気づいてもらえるんだって感じて、我慢するよりも盛り上がることが多くなるのっていいなって思えたんですね。

ネガティブからポジティブへ。

同じ価値観を持つ人が集まってくるなんて、想像していなかったことです。服装には、自分が何を好きなのか現れるじゃないですか。好きな服装をするようになってから、今まで仲良くならなかったような人とも付き合えるようになっていって、出会いっていいなと思えるようになりました。そういう体験をして、ブランドのつくり方も変わったんです。

もともと自分のネガティブな気持ちや恨み、怒りから発生して、ブランドのコンセプトを考えていたんですね。けど、そういう感情って火力は強いんですけど、単発的というか……。呪いや怒りのような感情って長く続かないから、もう少し、「だから、どんな人になりたいのか」ってポジティブに転じてコンセプトを立てるようになりました。

わたしのつくるブランドでは、着ている人が主役になれる服づくりをしています。たとえば、ダブルチャカの場合、試着したお客様が、「こんなに綺麗になれるんだ」って驚いて購入してくれるんです。それは、人の肌が綺麗に見えるような色使いをしているから。服はあくまでも引き立て役としてあって、お客様がなりたい自分になれることを大事にしています。

楽しみ方の選択肢を増やす目線。

ロリィタ服をはじめ、そのファッションが似合う自分になりたいっていう楽しみ方ってありますよね。一方で、自分中心でファッションを楽しむことができてもいいと思うんです。たとえば、働きたいからリラックスできるようにしたいとか。わたしも、ロリィタ服を着ている時は日焼けを気にするといった制約を感じていましたけど、今は自然な状態の自分に似合う服を選ぶようになりました。

どちらの楽しみ方があってもいいですよね。人それぞれがいろんな選択をしています。人と会う中で、こういう選択肢もあるんだってことに気づけたり、いいなって真似したくなったりして。そういう、いいなって思えることは自分の中から出てくるよりも、人と出会う中で選択肢が増えていくのかな。

なので、わたし自身もいいなって思える選択肢を取れるようになってきたのは、出会ってきた人数が多いから、選択肢の幅も広がっていっただけなんです。じゃあ、自分にコンプレックスを感じている時に、どうすれば人との出会いを増やしていけるのか。人に会うのが嫌いでも、どうやったら一歩を踏み出せるのかってことは知りたいですよね？

次のページへ

• 嫌いな選択肢を減らす、かすかな期待の抱き方。
  自分の好みを素直に見つめる。