東急東横線「中目黒」駅 正面改札前の信号を渡り、左に山手通りをまっすぐ12分。目黒川が交わる一角のB1Fに「VOILLD(ボイルド)」はあります。9月のCLASS ROOMで講師を務める伊勢春日さんがキュレーターを務めるギャラリーです。伊勢さんは同世代を中心としたアーティストやクリエイターと一緒に、アートに触れたことがない方や若い世代の方に向けて、よりアートが身近な存在になるようにと、展示の企画をしています。そんな「アートと出会う」きっかけを編む伊勢さんが、アートとの出会いにまつわる話をしてくれました。

洋服を選ぶようにアートと触れる

VOILLDは、東京で活躍しているアーティストやクリエイターを中心に企画展を組み、アートとカルチャーを発信しています。2014年に、気軽に立ち寄れて、若い方でもがんばったら買えそうな作品も扱うようなギャラリーにしていけたらいいな、と思ってはじめました。東京の若い世代の方たちは、ある程度の感度を持っていて、洋服だったら数万円してもがんばって買う人は少なくありません。ときには衝動買いしたり、買ってそのまま飾っている服があったり。

理想は、洋服を買うように気軽にアートを持ってほしくって。日本人とアートとの距離はまだあると思うので、ちょっとでも縮めることをできたら嬉しいです。そんな私の考えに賛同してくださる方とご一緒して企画展やイベントを催しています。同世代の方が多いのですが、同世代で活躍している方たちと成長していきたくって、これからどんどん下の世代をアートに呼び込んでいきたいです。

でも、ギャラリーに来ると緊張するじゃないですか? 現代アートって難しいし。「こんな真っ白なキャンバスに何の意味があるんだろう……どういうこと?」とか。だから、少しでも敷居を下げたくて、若い子が来たらフランクに接するようにしています。「どこで知って来てくれたの?」って声をかけてみたり。基本的には自由に楽しんでもらいたいと思っています。

「好き」を軽やかに感じて

音楽と同じように、純粋に「好き」って気持ちから入ってもらえたらいいなと思っています。そんな気持ちが高まったら、どんな人なんだろう?とか、なんでこの曲を作ったんだろう?とか、色々なことをもっと知りたくなっていくと思うんです。それと同じような感覚でいいと思っていて。

「好き」っていう気持ちを持った若い子が、何年、何十年とアートに触れて、大人になって色んな事にゆとりができたとき、あの時憧れてたアート買ってみようって思ってくれるようになったら嬉しい。そんなふうに思いながら、まずはVOILLDに来てくれた若い子がギャラリーに行くことに慣れていってくれたらなって、続けています。

私は二十歳のころ、ロンドンに留学していたんです。ロンドンでは、大小問わず色んなギャラリーがたくさんあって、待ち合わせ場所にも使われるように気軽に親しまれていました。みんな作品を見てあーだこーだ喋っていたり、本当に幅広い人がいて。若い子がデートで来ていたり、お婆ちゃんが散歩がてら来ていたり小さな子どもが遊んでいたり。日本でも、そういう風にギャラリーにもっと気軽にくる人が増えたら、すごいいいなって思うんです。

どうしても見たくて渋谷に通った日々

私自身も、若い頃にギャラリーに通ったことがほとんどなくて。それこそ、『ちびまる子ちゃん』(集英社)が大好きで、子どもの頃は漫画家になりたかったんです。小学校低学年まで、ずっと真似をして絵を描いていて、親に「勉強してみたら?」って言われたこともあり、受験をして美術系の私立の中高に通わせてもらいました。

でも、描いたり作ったりするのは全然向いていなかったんですよ。それでも、見るのは好きで。学生時代は、情報源がほとんど無いこともあって『relax』(マガジンハウス)や『STUDIO VOICE』とかを一字一句漏らさずに読んで、当時タワーレコード渋谷店にあったタワーブックスに通いつめて、国内外の写真集とか、作品集やイラスト集とか漫画とか、とにかくたくさん漁っていました。

洋服や音楽と同じように、アートもその時代を写す鏡。ただ、アートはアーティストが直接つくっている一点物がほとんどだったり、値段や大きさに関係なく、作品に驚くような付加価値がついたりするところも、他にはない魅力だと思うんです。一つの作品は、一人しか持つことができない。そんな特徴のひとつだけを取り上げてみても、いろんな知識を得られるし、いろんな楽しみ方ができるのは、アートの良さのひとつなんじゃないかと思います。

わたしのアートの楽しみ方

わたしのアートの楽しみ方

講師:伊勢春日(VOILLDキュレーター)

9月講座の講師は、中目黒でアートを軸とした個性豊かな企画展を展開しているギャラリー「VOILLD」のキュレーターの伊勢春日さんです。企画展以外にも、「TOKYO ART BOOKAKE FAIR」や「TOKYO ART BAZAAR」といったイベントを多数開催し、次世代のアーティストたちの作品を親しみやすい形で紹介している伊勢さんに『わたしのアートの楽しみ方』と題し、アートの魅力についてお話いただきます。また今回は、ご参加いただいた皆様に、伊勢さんから特別にVOILLDのオリジナルノベルティのプレゼントもご準備しています!

日時
2018年9月26日(水)19:30~21:30
会場
カフェパーク(恵比寿)
参加費
無料
定員
60名
※応募者多数の場合は抽選となります。
受付期間
2018年9月7日(金)~9月19日(水)

伊勢春日(VOILLDキュレーター)

東京都出身。2014年中目黒にVOILLDを設立。展覧会の企画・ディレクションを中心に、TOKYO ART BAZAARなどのアートイベントの開催やラフォーレ原宿の広告制作、アーティストのマネージメントや商品制作、ポップアップ企画のプロデュースなど、多岐にわたるプロジェクトを行う。