埼玉県小川町にある「風の丘ファーム」は、有機肥料の無農薬野菜をつくっています。10月のCLASS ROOMで講師をする田下隆一さんが、三枝子さんと続けてきた農場です。田下さんは自分で食べる野菜をつくりながら、それをお客さんにも食べてもらえるように、暮らしと野菜をつくってきました。そんな田下さんが、美食の文化が残る日本にぴったりな、旬の野菜の見分け方を教えてくれました。

甘みはゆっくりとじっくりと土で育つ

10月講座が開催する頃は、枝豆の旬なんですね。枝豆の旬は、夏だと思っていると思うんですけれど、実は中秋の名月が旬なんです。「豆名月」と呼ばれていて、お月見をしながら食べていたんですね。大豆は11月に採れるんですよ。その若い頃が枝豆だったんです。夏に食べられるように改良したのが、今の枝豆になったんですね。

これから冬に入ると、ホウレン草が旬を迎えます。ホウレン草は、根っこに近い赤いところが甘いんだけれど、化学肥料を使ってぐーんと伸ばしちゃうと、甘みがのってこなくて、あまりおいしくありません。ゆっくりゆっくり寒さに当たっていると、甘くなってくるんですね。やっぱり冬場の野菜ですと、生育期間が長いんです。

ホウレン草だとかっていうと、一生懸命つくった土に、種を蒔いて、2ヶ月とか3ヶ月って、ゆっくりとじっくりと土からいろんなものを吸収していくんで、おいしいんですね。ですから冬場のニンジンだとか、ネギっていうのも、甘さだとかおいしさの違いが、すごい表われてくるんですよ。

「おいしかったなぁ」がちょっとでもあればいい

LUMINE AGRI MARCHEで販売する時は、やっぱり、「今いちばんこれがおいしいんですよ」と伝えることを心がけています。青果店さんだと、お客さんのほしい品物を間に合わせるんですけれど、私の場合は、冬にサラダをつくるなら、キュウリやトマトは扱っていなくて、旬のカブをスライスしたり、大根の温野菜が混じるとすごく体が暖まるとかね、旬のもので提案するんですよ。

いつもレタスとトマトとキュウリがなきゃ、サラダにならないっていうふうではないんですね。大学生とかが、うちにインターンシップで来たりすると、そんなに海のものだとか肉だとかはそろえていないんで、3キロぐらい先のコンビニまで、夜歩いて、お菓子だったりを買うっていうこともあったりするけれども、そりゃしょうがないなぁと思うんですね。

食べて、おいしかったなぁというのが、ちょっとでも残れば、それはそれでいいと思うんですよ。私は冬にトマトを食べたくなるときが、あんまりないんですね。おいしいものを知っていると、旬ではないものを食べても、おいしいとは思わなくなるんですよ。うちで野菜を買ってくれた方が、マルシェにきてくれて、おいしかったと言ってもらえるっていうのは、出店をする、いい特典かなと思いますね。

野菜の旬を見つけるポイント

これだけ流通が整っていて、海外からも入ってくると、都会にいて何が旬だかわからないって実感はあると思うんですよね。ジャガイモはいつなのかとか、タマネギはいつなのかとかって、わからないと思うんですけれど、やっぱり、旬のものっていうのは、いちばんおいしいんだと思います。だから、旬に気づくと、おいしく暮らせるし、やっぱり、いちばん健康にもつながるし、環境にもいいのかな。

この時期にスーパーマーケットに行くと、だだちゃ豆だとか、丹波の黒豆だとか、さまざまな枝豆が出てきますよね。そういう特殊な野菜っていうのは、多分、旬の合図になると思いますよ。うちは3月にジャガイモを植えるんですけれど、その頃にスーパーマーケットの広告には、新じゃがって載ったりするんですね。わからないと、それが旬だと思ってしまうんですけれど、九州の特に暖かい地域の特別な栽培方法でつくったジャガイモを、季節外れの新じゃがとPRしたものなんです。

あとは、近くで採れたものを食べるというのがいいんですね。野菜は生きていますから、土で生きているのと同じく、収穫されてからも生きていて、呼吸しているんですよ。冷蔵庫に入れて、冷やすのは、呼吸数を減らしながら、長く保つようにしているんですね。収穫してから食べるまでが早いと、もともと野菜が持っていたおいしさや栄養も失われずに食べられますよ。

食べることから暮らしのことを考えてみる

食べることから暮らしのことを考えてみる

講師:田下隆一(風の丘ファーム)

10月講座は、食を通じて都市での豊かな暮らしを育む「ルミネアグリプロジェクト」との連動企画です。講師は埼玉県の小川町で、少量多品種の有機農業に取り組んでいる、風の丘ファームの田下隆一さんです。野菜をつくっている背景にある思いなどをお話いただくだけでなく、田下さんがつくった野菜を食べながら、季節を感じたり、暮らしのことについて考えてみませんか。

日時
2018年10月24日(水)19:30~21:30
会場
カフェパーク(恵比寿)
参加費
無料
定員
60名
※応募者多数の場合は抽選となります。
受付期間
2018年9月28日(金)〜10月14日(日)

田下隆一(風の丘ファーム)

1960年生まれ。埼玉県地域指導農家理事、株式会社風の丘ファーム 代表取締役。東京での生活で農業に憧れ、高校卒業後、北海道の牧場で研修の後、東京でサラリーマンをするが農業をあきらめきれずに、小川町の霜里農場で研修。翌年小川町で就農、2008年には法人化し株式会社風の丘ファームを設立。露地野菜年間100品目、米、麦、大豆を栽培、飲食店、一般家庭に農産物、加工品を直接出荷している。