東京パフェ案内
講師:斧屋(パフェ評論家)
7月講座の講師は、日本で唯一の“パフェ評論家”である斧屋さんです。著書である『東京パフェ学』(文化出版局)、『パフェ本』(小学館)をベースとした最新の東京のパフェ店の案内はもちろん、パフェはエンターテイメントという視点から、パフェ文化やパフェの食べ方の楽しみ方などをお話いただきます。
CLASS ROOM 7月講座は、「東京パフェ案内」というテーマで、『東京パフェ学』『パフェ本』の著者 斧屋さんをゲストに迎えます。とある本をきっかけに、パフェの魅力に気づいた斧屋さんは、全国各地のパフェを味わってきました。今では写真を見ただけで、いいパフェかどうか判断できるという斧屋さんに、ご自身のパフェ体験を教えてもらいました。
8年前ぐらいはパフェの本自体がほとんど出版されていなかったんですよ。そんななか、『男のパフェ』という非常にニッチな本と出会ったことで、パフェにハマりました。本屋さんで面陳されているのを見かけて、その本を読んで、資生堂パーラーやタカノフルーツパーラーのような、老舗のパフェからいろいろと食べるようになったんです。
パフェって、日頃食べていない人でも、どんな食べ物かというイメージははっきりしていますよね? でも、ぼくは本を読んだりパフェを食べていったりして、そのイメージとはちがう、現代的なパフェを知ることができました。ホイップクリームと缶詰の果物、底のほうに派手なシロップが入っているものというレトロなイメージが強かったのですが、その認識が一新されたんですよ。
あとは、語り口がたくさんあることも、ハマったポイントです。「パフェって、評論し得るんだ」そう気づいて、深みにハマっていきました。他のスイーツと比べて、パフェには3つの魅力があります。それは、「五感」「ライブ感」「物語性」です。
とにかく、他のスイーツと差別化できるのは、五感で楽しめること。例えば、ケーキの場合ならお持ち帰りすると香りが飛んでしまいますし、温度も均一化しています。コーンフレークやフイヤンティーヌのような素材も、1度、濡れてしまったらサクサク感が失われてしまいます。でもパフェはその場で食べるものだから、香りや舌触り、食感を損なわずに五感全体で楽しむことができるんです。
それは、目の前に提供された、その瞬間が賞味期限のような世界だから。10分放置しても、かなり劣化してしまう。その場のみで楽しむ、ライブ感もあるんです。あとは物語性ですが、これも非常に特徴的なところ。パフェには、構造があるんです。層状になっていて、「順番」が発生していることは、とてもおもしろい。
パフェって、上を食べたら次を食べていってというように、通常全部を混ぜ合わせて食べるものではありません。食べる順番に意味付けがされていくから、つくり手の表現になっていく。作家性が出てくる。つくり手の意図を読み取っていくことができる。入れる素材の順番が変わるだけで違うパフェになっていく。おもしろいですよね。
これって、音楽と似ていると思うんですよ。メロディーラインをどういう風に配置するのかということと同じだと思うんです。パフェは、音楽であったり、映画であったり、時間芸術的なものとの親和性がとても高いと思うんですね。
どういう順番なら食べやすいか、楽しく食べていけるパフェにはデザインを感じます。パフェのつくり手はデザイナーです。グラスの形状にも合理性があって、たとえばフルーツパーラーゴトーさんのグラスの上部が膨らんでいるのは、フルーツを美しく盛るためですよね。食べたパフェの構造をすべて覚えていられるわけではないので、取材など必要なときは簡単にスケッチして記録しておくことはあります。
7月講座の講師は、日本で唯一の“パフェ評論家”である斧屋さんです。著書である『東京パフェ学』(文化出版局)、『パフェ本』(小学館)をベースとした最新の東京のパフェ店の案内はもちろん、パフェはエンターテイメントという視点から、パフェ文化やパフェの食べ方の楽しみ方などをお話いただきます。
パフェ評論家、ライター。「パフェはエンターテインメント」という視点からブログで独自のパフェレポートを執筆。パフェの魅力を多くの人に伝えるために、雑誌やラジオ、トークイベントなどで活動。2015年に『東京パフェ学』(文化出版局)、2018年に『パフェ本』(小学館)を単著で出版。