ファッションが好きだからこそ、ショックだった
もともとファッションが好きで、高校1年生のときからアパレルの販売員やファッション誌のモデルをしていました。でもある日、クローゼットにはすごくたくさんの服があるのに、満足しないし、常に新しい服がほしいと思ってしまうことに不思議さを感じたんです。
仕事で扱うたくさんの服がどこからきているのかとか、背景が全然見えないことも不思議で。それでいろいろ調べたら、世界では服が過剰に生産されたり、捨てられたりしている問題があることを知りました。作るときに大量の水やエネルギーを使うことも、生産工場の労働環境がよくない場合もあることもわかって……服が好きだからこそ、ショックだったんです。
一方で、生産背景にこだわっているブランドにも出合って、そういう人たちの話がすごく面白かった。素材はこうでとか、働いている人たちがよい環境で働けるようにこんな仕組みにしていてとか。それを聞いて、私もこういう観点で服と関わりたかったなと思ったんですよね。
それは2008〜2010年頃だったのですが、日本ではまだエシカルファッションの考え方があまり知られておらず、生産背景を明らかにするという姿勢も一般的ではありませんでした。日本でももっとそういう情報を得られるようになったらいいなと発信し始めたのが、今の活動のきっかけです。
言葉だけではなく、体験してもらうことが大事
現在はエシカルファッションプランナーとして、お洋服の生産から消費、使用、廃棄に至る過程で、自然環境や、そこに関わっている人にどういう影響があるのか、そうことも含めてファッションを楽しむ考え方を、イベントや企画を通して提案しています。
たとえば「服のたね」は、みんなで素材から服をつくるプロジェクトです。参加者にコットンの種をお送りして自宅で育ててもらい、収穫したワタを集めて紡績工場で糸を紡ぎ、生地工場で生地にする。さらに全員でデザインを考え、服をつくる。今年が3年目で、毎年50人くらい参加してくれていますね。
一連のプロセスを体験すると、それぞれに疑問を持ったり、面白いなと思うポイントが出てきます。一度に採れる綿の少なさを目の当たりにして、「売ってる服、安すぎない?」と感じた人もいれば、殺虫剤を使わずに育てる体験をしたことで、「オーガニックで量産するのって大変。そりゃあ値段も高いはずですね」と言っていた人も。言葉だけで“エシカル”と言われても自分ごととして捉えづらいと思うので、こんなふうに体験してもらうことで、自分なりに考える機会になったらと考えています。なによりみんなで育てる体験をシェアするのは楽しいです。
モノを見極める多様な視点を
服にまつわる活動を続けていたら、食べ物とかアクセサリーとか、いろんなモノに対して、どうやって作られているんだろうと気になってきて。暮らしのなかで使うモノの生産背景とか、選ぶときの視点について情報交換ができる場所があったら面白いなと思い、2019年の1月にLittle Life Labを始めました。今は、約100名のメンバーで活動しています。
毎日使うモノには使っていて気持ちいい製品を選びたいという思いから、みんなで歯ブラシや洗剤を使い比べたりしています。それから、体験するイベントも。たとえば化粧品って、なにでできているかわからないじゃないですか。成分表を見てもカタカナだらけだし。それを知るために、講師の方をお招きして、自然由来の材料だけでリップを手作りするワークショップを開いたり。海苔漁師さんの元を訪ねたり、味噌を仕込んだりもしました。
私たちは生活者だから、日々いろんなモノを選んで、買いますよね。そのとき、選ぶ基準が多様だと楽しいなと思うんです。見た目や使い心地、値段はもちろん大切ですが、環境負荷が低いとか、生産者さんに配慮されているとか、修理ができるかとか、そういうモノを見極める知恵を求めて参加しているメンバーが多いのかなと感じます。