思いがけず出会った花の魅力
実は、花に興味を持つようになったことに大きなきっかけはないんです。もともとは美容師だったのですが、10年ほど前、本当にやりたいことを探すために退職してフリーターになったんですね。掛け持ちでアルバイトを始めて、そのなかのひとつが花屋でした。
花を飾る習慣のない家庭でしたし、特に花が好きだったわけではなく、たまたま求人を見つけて入ったバイト先という感じで。でも続けていくうちに、仕事がすごく楽しくて、自分は花が好きなんだと気づきました。
「お花って生きてるんだなあ」と感じる瞬間があったり、それから、花の色彩の面白さにも惹かれました。美容師の仕事もそうでしたが、鮮やかな色を感じられる仕事ってけっこう少ないんじゃないかと思って。お花を仕入れるときは10本単位が基本なんですけど、同じ品種でもその10本が全部違う表情を持っているんです。人間と同じですね。
こんなに楽しいんだったら仕事としてずっと続けられそうだなと思い、ほかのアルバイトは辞めて花屋だけに絞ることに。そのあといくつかの店を経験して、2016年5月、duftをオープンしました。
飾るよろこびを知ってもらうために
duftを開いてから約4年半、変わらないのは「お花を日常的に飾る人が増えたらいいな」という思いです。花を飾ったことのない方でも興味を持ってもらえるように、ちょっと変わった見た目のものも揃えています。
それから、持ちがいいこともセレクトの視点のひとつ。というのも、初めて飾ったお花が1日や2日でだめになってしまったら、果たしてもう一度花を飾りたいと思ってくれるのかなって。そう考えたときに、ある程度持ちがいいもののほうが、花を飾る楽しさを知ってもらえると思ったんです。
ただ、お花の魅力は日持ちだけでは絶対にないので、たとえ日持ちがしなくても魅力がある花も、もちろん仕入れています。なにより、市場で見たときに素敵だなと感じる気持ちが最優先。お客さまにおすすめするものだから、自分が「いいな」思えることを大事にしています。
飾りたいと思った花を選んでほしい
お店にいらしたお客さまには、普段お花をよく飾るか、どんな花瓶を持っているかなどを聞き、なるべく深くコミュニケーションをとるようにしています。でも、自分の意見を押しすぎるのは違うと思っていて。私はアーティストではないので、まずお客さんの想いや要望があり、それをベースにしたうえで、私なりのイメージを織り交ぜながら提案する。だから、花束やブーケであってもゼロからつくることはないですし、個展を開きたいとかも全然思わないんですよね。
特に初心者の方は「なにを選んだらいいかわからない」とか「素敵にできない」と考えすぎてしまうケースが多いのですが、自分が飾りたいと感じたお花が一番いいと思います。
どうしても決めきれない場合は、一輪挿しや、口が狭い花瓶に1本だけ飾ってみるのがおすすめ。1本あるだけで、部屋の空気ががらりと変わりますよ。難しく考えずに試していただけたらと思います。